―プロローグ―

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暗い、暗い、闇の中、その身を事象と化した一人の吸血鬼は、ある物に出会った。 禍々しく黒く濁ったそれを、吸血鬼は迷わず取り込んだ。 自らに漲る魔力を感じ、吸血鬼は甲高い笑い声をあげる。 そして吸血鬼は、自らを更に強力な物にするために、次の餌場を目指した。 餌場の名は麻帆良、吸血鬼はこれから起こるであろう惨劇に歓喜する。 かくして、宴の幕は開き、役者の登場を待つ ―ネギま!VS.TYPE-MOON― プロローグ1 「よぉ、マスター」 聞きなれた、しかしもう聞く事は無い筈の声に、バゼット・フラガ・マクレミッツは振り返る。 「よっ、もう会う事は無いと思ってたんだがな」 振り向いた先には、相変わらずのどこか野卑な笑顔を浮かべた、繰り返される四日間を共に歩んだ元パートナーの姿があった。 「アヴェンジャー…あなた、どうして?どうやって?」 「いやー、あんたが俺を左腕にしてくれたおかげでどうにか交信できたな。まったく、世の中何が役に立つかなんてわかんねぇな」 聞こえていないのか、聞いてないのか、バゼットの質問をスルーし、アヴェンジャーと呼ばれた少年はうんうん、と頷いている。 「っと、いけねぇ、時間がねぇんだった」 「時間が無いって…、…!?アヴェンジャー!その足は!」 バゼットの目に映った物、それは徐々に闇に飲まれていくアヴェンジャーの足だった。 自分を飲み込む闇を忌々しく一瞥し、アヴェンジャーは続ける。 「生憎、詳しい説明はできないが、変なのに聖杯の残光ごと取り込まれちまってな、まぁ、あんなのにいいようにされるのは癪だから救援を頼みたい」 聖杯の残光ごとアヴェンジャーが取り込まれた。それはつまり強大な魔力を持った物が現れたという事である。その事実に、バゼットの頬を冷や汗が流れる。 「そいつはどうやら、俺と聖杯の力を使ってあんたらの聖杯戦争で死んだ奴らを何人か蘇らせてるみたいだ。つーわけで対抗手段としてどさくさ紛れにそっちに残ってるサーヴァントを全部、あっちに移した」 「はぁ!?」 現在深山町にいるサーヴァント、セイバー・ライダー・バーサーカー・アーチャー・ランサー・ギルガメッシュを全て敵地へと送り込んだ。その行為にバゼットは素っ頓狂な声を上げる。 「まぁ移したっつっても、ばらばらで、どこにいるかわからないんだけどな。つーわけで、マスター全員に事情を話してこっちに来てくれや」 そうこうしている内に、アヴェンジャーの体のほとんどは闇に飲まれてしまっていた。 「ま、待ってください!一体どこに行けば…」 バゼットの問いに闇に覆われかけた口が答える 「麻…帆…良」 それだけを告げると、アヴェンジャーは完全に闇に飲まれた。 「アヴェンジャー!」 自分の叫び声でバゼットは目を覚ました。そこはいつもの衛宮邸、いつもの自分の部屋。 「夢…?いや、夢じゃない」 外から家主と住人の声が聞こえる、それぞれが自分のサーヴァントを呼んでいるようだった。 「…麻帆良、そこで一体何が」 戦いの中に身を置いていた彼女の本能はこれから起こる嵐の如き戦いを感じていた プロローグ2 「…ヅェピア、まだ終わってはいないのか」 シオン・エルトナム・アトラシア。三年前に発生したタタリに敗北し、血を吸われ吸血鬼と人間の狭間で苦しむ錬金術師。 彼女は三咲町にて、直死の魔眼の持ち主、遠野志貴とともに、三咲町で発生したタタリを消滅させ、現在は遠野邸にて、吸血鬼化の治療法を研究している。 その日も彼女は吸血鬼化の治療法の研究を終え、就寝しようとしていた。 ―キキキキ…― 「!」 甲高い耳障りな笑い声、それは忘れたくても忘れられない男、タタリを作り、タタリと化した先祖、ヅェピア・エルトナム・オベローンの物だった。 (今のは空耳なんかではない) タタリに血を吸われ、互いの血を共有しているといってもいいシオンは、タタリがまた現世に、しかも今度はより強大な力で現れる事を直感した。 「ですが、貴方の好きにはさせませんよヅェピア。貴方はエルトナムの名にかけて私が滅ぼしてくれます」 「随分と物騒な話ですね」 「!」 その声に振り返ると、そこには現遠野家当主にしてシオンの良き友でもある、遠野秋葉が立っていた。 「何か嫌な予感がしてきてみれば…、あれが復活したみたいですね」 そう言った秋葉の顔は不機嫌そうな顔をしていた。三咲町でタタリが発現した時、遠野家では、使用人の琥珀と翡翠がタタリの影響を受け、琥珀が暴走、更に琥珀が紅茶に一服盛り、秋葉が巨大化し、大暴走するという惨事になっていたのだ。 「ええ、ですので今から、タタリが発現すると思わしき場所、麻帆良へ向かおうと思います」 「麻帆良ですか、確かあそこは…」 「はい、関東魔法協会の総本山です。抜けたとはいえ、本来アトラスの錬金術師がそのような場所に行けば警戒されるかもしれませんが」 「その事なら心配いりません。あそこの長である、学園長とは面識があります。私の方から口ぞえしましょう」 「本当ですか!?感謝します。秋葉」 思いもよらぬ提案にシオンは驚き、そして感謝の念を伝えた。 「ただし、一つ条件があります。私も連れて行って頂きます」 更に思いもよらぬ提案に、今度は、一瞬、シオンの思考が停止した。 「え、いや、確かに秋葉が来てくれるのであれば心強いですが、何故?」 「もちろん、あの時の屈辱を晴らす為です。琥珀が暴走した原因はあれなのですから、こちらが受けた損害のお返しをしなければいけませんから」 当然と、言わんばかりの態度に、しばし、唖然としていたシオンは苦笑しながら答える。 「やれやれ、実に秋葉らしい理由です」 「まったくだ」 不意に聞こえた第三者の声に二人が部屋の入り口を見る。そこには秋葉の兄にして、三咲町で発現したタタリを殺した男、遠野志貴が立っていた。 「志貴!?」 「兄さん!?」 「まったく、水を飲みに降りてきたら、二人して何やら物騒な話をして」 やれやれ、と志貴は首を竦めながら言った。 「タタリを倒すなら、俺の力も必要だろ?手を貸すよ」 「何を言ってるんですか!私達だけで充分です!兄さんは家で帰りを待っていてください!」 「そうは言ってもあいつとは一回やりあって倒したんだ。経験者がいた方がいいだろ?」 「はい、そのほうが私も心強いのですが…」 志貴の意見を肯定するシオン。2対1の不利な状況の中、更に二人の珍入者が乱入する。 「はぁ~、本当に志貴さんは鈍いですね~」 「秋葉様は志貴様の事を本気で心配していらっしゃるが故にあえて苦言を呈しているのだと思いますが」 「琥珀に翡翠、貴方達まで…」 こめかみをを押さえ、溜息をついた後、秋葉は二人の使用人を見やる。 「申し訳ありません。盗み聞きをするつもりはなかったのですが…」 申し訳なさそうに翡翠がおじぎをする。 「そうか、秋葉は俺の事心配してくれてたのか」 「と、当然です!兄さんに何かあったら、その、困りますから」 柔和な笑みを浮かべる志貴に、照れ臭さから顔を真っ赤にした秋葉がどこか拗ねているような態度で答える。 「だったら俺だって、秋葉達に何かあったら困るから行って欲しくない。でもそれでも二人は行くんだろう?」 「それは、そうですけど」 「当然です」 志貴の問いにきっぱりと言い放つシオンと、やや歯切れ悪くも肯定する秋葉。 「俺も同じだ。二人に反対されようと、俺は行く。二人に何かあったら困るしな」 「…!!、はぁ、わかりました。では兄さんもついてきてください。でも、くれぐれも無茶はしないように。琥珀、外出の準備を、それと先方へ連絡を入れておいてください」 「かしこまりました」 志貴の発現に呆れつつも顔を赤く染めた後、秋葉は琥珀へと指示を出した。 同刻、とあるマンションの屋上に一人の女性が立っていた。月夜に映えるその姿は白く美しく、その緋色の両目は遥か遠く、麻帆良がある方角へと向かっていた。 「厄介な事になりそうね…」 その女性、アルクェイド・ブリュンスタッドは一言呟いた。 「あそこには確か福音がいた筈だけど、流石に彼女一人じゃ荷が重そうだし…」 そんなことを言いながら、んー、と伸びをする 「まぁ、死徒を狩るのは私の仕事だしね。きっとシエルや志貴も行くだろうし」 そして純白の吸血姫もまた舞台へと歩を進める。 プロローグ3 「幹也君、ちょっとおつかい頼めるかしら?」 早朝の事務所、所長の声に、呼ばれた男、黒桐幹也が返事をする 「何ですか?橙子さん」 「ちょっと届け物をね」 橙子さんと呼ばれた眼鏡をかけた女性が幹也に一つの匣を渡す。 「宅急便で送ればいいじゃないですか」 「宅急便じゃあ何かの拍子で大変な事になるかもしれないのよ。だから幹也君にお願いしてるの」 何かの拍子で大変な事になる、それだけで幹也は、匣の中身が魔術に関連する、何か曰くありげな物だと直感した。 「えーと、特に注意する事は?」 「手荒に扱わなければ大丈夫。先方には蒼崎橙子の使いの者って言えば大丈夫だから」 穏やかな微笑で橙子が答える。 「で、どこまで持っていけばいいんですか?」 「麻帆良市の麻帆良学園よ。あそこには結構お世話になっているから」 「わかりました。…交通費は経費ででるんでしょうね?」 その言葉を聴くと同時に橙子はバツが悪そうに目線をそらす。 「それが、その匣を買うのに全額使っちゃって」 「はぁ、じゃあ、行ってきます」 予想通りの言葉に肩を落とし、幹也は事務所を出た。彼もまた、この宴を彩る役者の一人であった。

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