ジンジャーエール、リキュール、モミザ、スプリッツア。
アニスティー、ボバティー、シェルパティー、レモンティー。
エスプレッソ、カプチーノ、カフェオレ、カフェラテ。
先刻から私は、浴びるようにそれらの飲み物を飲んでいた。
私はもしかしたら、美味しくて上品な飲み物が有れば、それだけで生きていける人種なのかもしれない、
と、
寒い冬の日、毛布にくるまりながら考える。
白ワインをソーダで割ったのがスプリッツアで、
ビールをレモネードで割ったのがシャンディー。
アニスティーは、紅茶にエスニックな星型のスパイスを浮かべたもの。
ボバティーは、タピオカ入りのミルクティー。
英国の人が、一日にどれぐらいお茶を飲むのか知らないけれど、私も決して負けてはいないと想う。
言うなれば、不思議の国のアリスの、三月ウサギと帽子屋の永遠のティーパーティー。
私の体内時計は、もう、長い事、お茶の時間で止まりっぱなしのようだ。
ココアクッキーも、
ブルベリーパイも、
キャラメルブラウニーも
たぷたぷにカスタードが入ったシュークリームだって、私は作る事が出来る。
カフェ「テラス」のホールスッタフのバイトをしているおかげだ。
この仕事は、私にとって天職だと思っている。
ちっちゃなログハウス仕立ての店内には、いつでも焼き菓子と紅茶の匂いが立ち込めていて、
マスターのビビは、たくさんの料理と、美味しい紅茶の入れ方を伝授してくれる。
夕方になると、ごく軽いアルコールのサービスも始まる。
テラスで出すお酒は、どれもしゅわしゅわと光っていて、光のお城みたいなものばかりで、すごく綺麗。
猫もいる。
りぉという名前の、ミルクティー色の美しい猫だ。
りぉはいつも、店内の端っこにある一番座り後こちの良い椅子に丸くなって座っている。
マスターはりぉを、象牙色の仔猫ちゃんと呼び、
もう一人の従業員は、アイボリー色なんていうが、
私は、あれは絶対に、完璧なミルクティー色だと思っている。
薄くて、暖かそうで、ふわふわしている。
りぉは、時々うちに泊りに来る。
マスターは、嬉々として、いってらっしゃい、という。
りぉは酷い胡椒アレルギーで、胡椒を台所で一振りしただけで、永遠くしゃみをしつづけるから、
スパイス好きなマスターは、
私が
「りぉちゃんを借りても良いですか?」
とたずねると、嬉々として、
じゃぁ、今日は思いっきり胡椒が使えるわ、と張り切る。
そんな訳で、平均して一ヶ月に一度くらい、私はりぉを独占することができる。
そして、それが今日だった。
毛布を引きずったまま台所に立ち、珈琲やら、トーストやらを準備する私の足元で、
りぉは、のんびりとあくびをしては、自分のキャットフードが出てくるのを大人しく待っている。
to be continued
☆りぉはくれぁのお母さん。
最終更新:2006年08月30日 22:14