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ウサギ2」(2006/10/15 (日) 20:01:00) の最新版変更点

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―2 昇降口から外に踏み出すと、雨上がりの湿った空気がさっと私たちをつつんだ。 濡れたような月が空にかかって光る。 「ヘンな夜だね。うっかり、違う世界に落っこちそう」 傘の先で水溜りをつついて言う。 瞬間、金木犀が強く香った。 『・・・鈴木さんのほうが、ヘンだよ』 ウサギは半歩先を行く。 「ウサギはさぁ、ぜんぜん変じゃないよね。ザ、スタンダードって感じ」 言ったらウサギが眉をひそめて急いで振り返った、 『ウサギって、何』 「あぁ、あだ名。」 『誰の』 人差し指でウサギの鼻をトンっと指差す。 『俺!?』 こくり。 うなづく。 「あたし、名前覚えるのめちゃくちゃ苦手なんだよね」 『・・・・・・・』 「ねぇ、ウサギの本名って、何」 『森島 司・・・・』 「ツカサ。ふぅん」 『ヒドイな。夏に帰国してから、もう3ヶ月も同じクラスなのに』 「なんかダメなんだよね。よっぽど仲がいいこじゃないと覚えてない。クラスでは4人、くらいかなぁ」 『名前覚えないと不便じゃないの』 「不便不便。だから、あだ名。ほら、ウサギと仲がよくてうるさいあの子はオウムでしょ。  委員長はエリマキトカゲ。」 ウサギがくっと吹き出す。 『似合ってるなぁ・・・』 『でも、俺がウサギってのは納得いかない』 「いくよ」 『いかない』 「ほらウサギって、寂しいと死んじゃうじゃない。」 『ナニソレ』 「しかも可愛いし」 『可愛いって・・・・』 「嬉しくない?」 『あんまり・・・』 「不細工よりはいいじゃない。ちなみにうちの担任なんて、あんこよ、あんこ。崩れたあんこ。」 『担任の名前も覚えてないの・・・』 「今まで必要なかったんだもん。先生って呼べば、ちゃんと振り返ってくれる。」 『しかもあんこって、動物じゃないし。』 「食べ物の時もあるの~」 アタシは空に向かって伸びをする。 「気持ちい夜だね」 『そうかな』 「よし。」 私は立ち止まって鞄から携帯を引っ張り出す。 「ツカサ・・・・森島 司。 この漢字で合ってる?」 ピコピコピコ。 アドレス帳にウサギの名前が並んだ。 『え?うん』 「覚えるね」 笑う。 「ウサギは、あたしの下の名前知ってるの?」 『ハル、でしょ。』 「うん。」 「春~よ来いの春。」 「ねー、赤外線通信ってどこだっけ」 「あ、あった。はい。じゅしーん。」 「あれ、ウサギ、携帯持ってないの?」 『持ってるけど』 「赤外線通信しようよ。」 『メアド交換しようって、こと?』 「そぅ。記念に」 『ナニ、名前覚えた記念?』 「わかってるじゃん」 『鈴木さんは、なんか、よくわからないよ』 「ハルでいいよ」 『突然だよね。いつも』 「そうかなー」 『じゃぁハル。』 「ナニ?」 『ウサギって呼ぶの、止めて』 「・・・・気に入ってたのになぁ。・・・わかったよ。ツ・カ・サ・くん」 私の携帯が、ツカサのアドレスを受信して青く光った。
―2 昇降口から外に踏み出すと、雨上がりの湿った空気がさっと私たちをつつんだ。 濡れたような月が空にかかって光る。 「ヘンな夜だね。うっかり、違う世界に落っこちそう」 傘の先で水溜りをつついて言う。 瞬間、金木犀が強く香った。 『・・・鈴木さんのほうが、ヘンだよ』 ウサギは半歩先を行く。 「ウサギはさぁ、ぜんぜん変じゃないよね。ザ、スタンダードって感じ」 言ったらウサギが眉をひそめて急いで振り返った、 『ウサギって、何』 「あぁ、あだ名。」 『誰の』 人差し指でウサギの鼻をトンっと指差す。 『俺!?』 こくり。 うなづく。 「あたし、名前覚えるのめちゃくちゃ苦手なんだよね」 『・・・・・・・』 「ねぇ、ウサギの本名って、何」 『森島 司・・・・』 「ツカサ。ふぅん」 『ヒドイな。夏に帰国してから、もう3ヶ月も同じクラスなのに』 「なんかダメなんだよね。よっぽど仲がいいこじゃないと覚えてない。クラスでは4人、くらいかなぁ」 『名前覚えないと不便じゃないの』 「不便不便。だから、あだ名。ほら、ウサギと仲がよくてうるさいあの子はオウムでしょ。  委員長はエリマキトカゲ。」 ウサギがくっと吹き出す。 『似合ってるなぁ・・・』 『でも、俺がウサギってのは納得いかない』 「いくよ」 『いかない』 「ほらウサギって、寂しいと死んじゃうじゃない。」 『ナニソレ』 「しかも可愛いし」 『可愛いって・・・・』 「嬉しくない?」 『あんまり・・・』 「不細工よりはいいじゃない。ちなみにうちの担任なんて、あんこよ、あんこ。崩れたあんこ。」 『担任の名前も覚えてないの・・・』 「今まで必要なかったんだもん。先生って呼べば、ちゃんと振り返ってくれる。」 『しかもあんこって、動物じゃないし。』 「食べ物の時もあるの~」 アタシは空に向かって伸びをする。 「気持ちい夜だね」 『そうかな』 「よし。」 私は立ち止まって鞄から携帯を引っ張り出す。 「ツカサ・・・・森島 司。 この漢字で合ってる?」 ピコピコピコ。 アドレス帳にウサギの名前が並んだ。 『え?うん』 「覚えるね」 笑う。 「ウサギは、あたしの下の名前知ってるの?」 『ハル、でしょ。』 「うん。」 「春~よ来いの春。」 「ねー、赤外線通信ってどこだっけ」 「あ、あった。はい。じゅしーん。」 「あれ、ウサギ、携帯持ってないの?」 『持ってるけど』 「赤外線通信しようよ。」 『メアド交換しようって、こと?』 「そぅ。記念に」 『ナニ、名前覚えた記念?』 「わかってるじゃん」 『や、鈴木さんは、なんか・・・よくわからないよ。』 「ハルでいいよ」 『突然だよね。いつも』 「そうかなー」 『じゃぁハル。』 「ナニ?」 『ウサギって呼ぶの、止めて』 「・・・・気に入ってたのになぁ。・・・わかったよ。ツ・カ・サ・くん」 私の携帯が、ツカサのアドレスを受信して青く光った。

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