エロパロ板 ひぐらしのなく頃に 保管庫
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エロパロ板 ひぐらしのなく頃に 保管庫
ja
2023-11-21T23:00:46+09:00
1700575246
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風邪は天下の贈り物 完
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体調不良によって魅音は知恵に付き添われ保健室のベッドで横になっていた。
「入江先生を呼んで起きましたのでこのまま安静にして待っていて下さいね、決して無茶してはいけませんよ?」
そう言い残し先生はグラウンドに戻って行った。
せっかく親切にして貰ったのに私は頭痛のせいで先生の言葉が殆ど頭に入っていなくて咳とクシャミを繰り返していた。更に頭がボーっとして意識もハッキリと定まっておらず壁に掛けてある時計がダブって見えるくらい重傷であった。更に再度熱を計ってみたら38度を超えておりそれだけで気持ちが沈んで行くのがわかった。
「監督早く来てくれないかなあ…」と誰に言うでもなく呟いて何気なくグラウンドではしゃぐクラスメートを見つめており、楽しみにしていた体育に参加できなくなった自分の風邪を恨めしく思った。
自分が悪いんだけどやっぱり残念だなあと落ち込んでいたら廊下から足音が響いてこの保健室に近づいて来るのに気付き、まだ授業中だからクラスメイトでは無いことくらい直ぐにわかった。
やっと監督が来てくれたんだと思って診察してもらって少しは楽になるだろうなあと期待を込めて入口を見つめていたら足音は案の定保健室の入口で止まりガラガラと戸を開ける音と共に野太い男性の声で
「失礼します。」
と言う声が聞こえその声の主の姿を見て私は疑問に思った。
あれ監督じゃない…?その人は大柄でガッチリとした体格をしており一応白衣を着ていかにも医者とい感じだったけど初めて見る人に思わず「あの…入江診療所関係の方でしょうか…今日は入江先生が来てくださると聞いたのですが…」と話すのもしんどいけど掠れた声できいたらその先生は
「本日入江先生は急患が入ってしまい代わりに私が診察する事になった大熊と言います、大丈夫ですよいつもと違う医師でもしっかり診ますので安心して下さい。」と笑顔で言ったけど私は少し違和感を感じながらも早く診て欲しかったので「そうなんですね、私は園崎魅音と言います、今風邪が酷くて辛いので早速ですが宜しくお願いします。
」と先生に簡単な自己紹介をして診察をお願いした。
先生は聴診器を取り出して「まずは心音を聴くから体操服をめくって下さい。」
と言ったので私は男性の前で身体を見せるのは凄い恥ずかしいけど早く治して欲しい思いから体操服の裾を思いっきりめくり上半身を先生の前に曝け出した。
(…あっそういえば今朝急いでいて下着を外して来ちゃったんだっけ///)
先生の目の前に私の乳房が晒されてしまい顔を赤くしながら診察を待った。
本当は違うのに先生は「あらかじめブラジャー外しておくなんて用意がいいですね」と手際よく乳房に強く聴診器を押し当ててきた。
「あっ」
聴診器の冷たさと刺激で、思わず声が漏れてしまう。
さらに乳首が反応してしまった恥ずかしさに耐えながら、両方の乳首に交互にコリコリと聴診器を当てられる刺激を唇を噛んで我慢する。
…さっきからずっと乳首ばかりで疑問に思った私は「…あの先生なんでそこばかり?」と聞いてみたけど
「ああここは変な感じはしなかったですか?」と返され「いいえ、特に何も無いですけど」と返す事しかできなかった。
続いて先生は「じゃあそのまま横になってください」と上半身裸のまま私に指示を出し、何かおかしいと思いながらも熱でフラフラしながら従った。
すると先生は私の胸を人差し指と親指で私の乳首をつまんで弄り始めた。
「あ、あの…ちょっと…」
「触診ですから大丈夫ですよ〜」
さっき聴診器をあてられて固くなり始めていた乳首に人肌の温もりが加えられたことにより、一気に自己主張してぴんと勃ってしまう。
更に先生は
乳房を回す、寄せる、潰すと言った多様な手つきの揉み方。
乳首を擦る、摘む、押すと言ったこれまた多様な指での弄り方。
二つの愛撫にも似た触診をされ、私は不安と恐怖…そしてそんな中でも脳をすこしずつ犯してくる快感に息を荒くし、乳首を硬くしてしまう。
「はぁ…はぁ…やっ…!」
「大丈夫ですよー検査ですからねー」
だんだんに声を我慢できなくなっていく私に対し、先生は淡々として冷静である。
股間がだんだん熱くなり始めた頃、ようやく先生は胸を触るのを辞め、再び私の前に座った。
「じゃあ、次の検査しますけどそのままでいてください。」
「あ、あの、もう体操着は下げてもいいですか?」
「もうちょっとそのままでお願いしますねー」
「そ、そんな…」
「お願いしますねー」
「うう、はい…」
私は上半身裸で、乳房と勃った乳首を先生の前に晒したまま、仰向けで次の診察を待った。
すると間髪入れず、先生はブルマに手を伸ばし、赤い生地の上から指で私の股間を弄り始めた。
「えっ!?」
さっきの触診で熱くなり始めていた股間をいきなり触られた為に思わずびくりと震えてしまい、声が漏れてしまう。
「生理はちゃんと来てますか?」
「だ、大丈夫です…んぅ…!
先生は再び淡々と私の股間を弄り、指の動きがだんだん大きくなっていく。
熱くなった股間は既にじわりと湿り気を帯び、さらなる刺激に熱を上げていく。
「(やだ…イくっ…!)」
私は目を固く瞑り、静かに絶頂してしまった。
ブルマが濡れる感覚が、羞恥心をさらに煽り立てる。
「(そんな…検査でイっちゃうなんて…恥ずかしいっ…!)」
「それじゃあ次の診察をしますよ、足を大きく広げてくださいねー」
私は俗に言う、M字開脚の状態で、先生に股間を見せつけるような体勢になった。
ブルマに隠れているとはいえ、絶頂したばかりの股間を男性の前に晒すさらなる羞恥に、私は戸惑いと赤面を隠せない。
さらに先生は、何か先端が丸い機械…わかりやすくいえば電マのような物を取り出し、そのスイッチを入れた。
機械は凄まじい振動をしながら、私の股間に当てられる。
「ひうぅ!?」
敏感な状態の股間にいきなり機械での凄まじい振動を当てられ、さらに反応を大きくしてしまう。
再び絶頂に耐えながら、私は先生に尋ねる。
「あの…やんっ!…こ、これは…んっ…何を調べて…?」
「ん?感度。」
「か、感度…?あうぅっ!?」
「いい声出てるねーさすが委員長。」
「だめ…イっちゃう!!」
我慢も虚しく、私の2回目の絶頂は瞬時に訪れた。
さらにブルマが濡れ、腰から力が抜けてぐったりと背後の壁に寄りかかった。
「はぁ…はぁ…!」
「おや、ずいぶん汗をかいてるね、風邪が悪化するといけないから拭いてあげよう」
と先生は言うけど嫌な予感しかしなかったので「あの〜良いです自分でやりますから」と断ったけど「医者の言う事は聞くもんだよ」と言いくるめられ結局お願いする事になった。
先生は桶にお湯を張り布巾を絞って私の背中を拭き始めた。
散々前を見られたけど恥ずかしいので腕で胸を隠してたけど直ぐに「腕を上げて」と言われバンザイの状態で前が無防備になり先生は直ぐに私の胸を拭き始めた。
おかしいのは布巾を手にしている右手はともかくなぜ何にも持っていない左手が私の胸を揉んでいるのかおかしいと思ったけど私の意識が朦朧としてもはやされるがままであった。更に先生は「ここもしっかり拭こうね。」とブルマの中に手を突っ込もうとしてきた。
私はさっき2度イカされてしまい股間が蜜で濡れた状態を絶対に見られたくなかったので「あっそこはイヤ、そこだけは自分で拭くので大丈夫です」とブルマに侵入しようとする先生の手を両手で掴み必死に止めていた。
しかし「ここが一番汚れるんだよ」といい手の力を強め左手でさっきより私の胸を揉みしだき乳首をギュッとつねった!
「ひゃああん!?」
怯んだ私の隙を見逃さずに先生の右手は遂に私のブルマの中に侵入した。
グチュグチュグチュグチュといやらしい水音を立てながら先生は私の股間を拭き始めた。
私は元々風邪気味で体力も無く更に触診でイカされて力が抜けた状態で大人の男性に敵うはずも無く無力の状態であった。
しかも先生は私の体勢を横向きに変え足を開き左足を自分の肩に乗せ私のお尻をグニュグニュと揉んで股間を拭く手を止めてくれなかった。
「うーんやっぱりここは凄い汗をかいてるねぇ」と手に力を増していった。
しかも拭くと言うよりは布巾の上から刺激を与えているように感じ、私は顔を真っ赤にしながら涙目で「あん、あのお願いします、もう良いですからやめてください」と懇願したけど先生は私のそんな意見を聞かずそれどころか
「これ邪魔だから脱がすね」と
私の汗と愛液で濡れたブルマをズリ下げて裸同然の身に剥いた。
「嫌ぁ…!」
「あれえ?ブラジャー同様パンツも着けてなかったんですね、本当に用意が良いですね魅音さん」
本当は違うけどそれどころじゃ無く私は泣きながら体操服の裾を伸ばして股間の部分を隠して「お願い返してぇ」と、もう片方の手で先生に取られたブルマを取り返そうとしたけど先生はそんな私をよそに人差し指でクルクルとブルマを回転させて
「ダメダメこんな濡れたブルマなんか履いたって気持ち悪いだけでしょ?」と言い私を押し倒して胸を揉みながら同時に股間を素手で弄り始めた。
もう何が何だか分からなくなって先生のされるがままだった。
「おや?ようやく抵抗をやめましたね、それじゃあラストスパート行くからね」
と言い私の両胸をこれまで以上に激しく揉み乳首を強く抓って口をつけてチューチューと力強く吸い始めた!
まるで私の身体に電流が走ったかのようで身を捩り更にイカされて濡れている股間にも口を当てて吸い始め快感が全身に周り脱力感と共に私の意識は途切れた。
2023-11-21T23:00:46+09:00
1700575246
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賽殺し編 梨花×沙都子
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<p>古手さんのことは、はっきり言って好きじゃなかった。それどころか、嫌いの部類に入るぐらい、私は古手さんとは仲良くなかった。<br />
いつもお姫様みたいにちやほやされて、憎たらしくなるほど愛らしい笑顔を浮かべながら、富田さんや岡村さんをまるで家来のように扱って。<br />
ずるい子。いやな子。私はそう思っていた。<br />
だから彼女をちやほやもてはやしていた男子どもが雛見沢の学校から転校していったときは、胸がすっとした。ざまあみろと思った。<br />
だから私は、彼女に意地悪をするようになった。<br />
お昼ご飯を一緒に食べる相手がいなくなってしまった彼女を、私とにーにー、それから他の友だちがいるグループに誘うようなことはもちろんしなかったし、今まで古手さんのことを良く思っていなかった子たちと一緒になって、友だちがいなくなった古手さんをからかってはやしたてた。<br />
体育でのペアでやる準備体操は古手さんだけが余るように。ドッジボールのときはもちろん集中攻撃。古手さんの教科書やノートを取り上げて、返してあげなかったりもした。<br />
にーにーや竜宮さんは、皆の先頭を切って彼女に意地悪する私を止めようとしていたが、そんなのは大したことじゃない。<br />
だから私は彼女に意地悪し続けていた。</p>
<br />
<p>違和感があったのは、ぼんやりとひとりぼっちで校庭の脇を歩いている古手さんに、ボールをぶつけたときだ。<br />
そんなに強く投げたつもりじゃない。ただ、彼女の、歪んだ表情が見たくて投げただけだ。いつも私に意地悪をされると、彼女は怒りと軽蔑の眼差しで私を睨んだ。<br />
だから彼女が、まるで糸の切れた操り人形のように、ぱたん、と倒れたとき、私はぎょっとした。本当に、そんな強い球ではなかったのだ。<br />
事を大袈裟にするために、わざと倒れたのかと疑ったほどだ。<br />
だから、彼女が目覚めたとき、私に向けた視線に、私はさらに驚いた。<br />
ボールをわざとぶつけた私を先生に訴えるどころか、彼女はきょとんと、私を見つめたのだ。<br />
その私を見る目には、いつもの怒りとか、憎しみとか、そういうものが一切なかった。<br />
何だか、気味が悪かった。</p>
<br />
<p>そしてその気味の悪さは、次の日の昼休みにも起こった。<br />
お昼を私とにーにーたちが一緒に食べているとき、彼女は私をじっと見つめていた。<br />
それは怒りや憎しみからではない、まるで自分を誘ってくることを待つかのような、まっさらな期待と親しみ、そして悲しみがあった。<br />
妙な気分だった。頭の中が、変にスースーして、身体中の血液が、まるでそのまっさらな視線を求めて逆流するかのような、自分じゃない自分が叫び出す、そんな違和感。<br />
私はそれから逃れるかのように、彼女に言い放った。<br />
「ジロジロ見ないでよ」<br />
すると彼女はひどく傷ついたかのように瞳を揺らがせて、謝罪の言葉を口にした。<br />
私はもう二、三言、きつい言葉を投げ付けた。けれどその違和感は、膨らむばかりで、落ち着く気配などまるでなかった。</p>
<br />
<p>その日から、その妙な感覚は、私の中に住み着いた。<br />
古手さんの寂しげな姿が目に入る度に、自分じゃない自分が、身体の内側で叫びだす、今まで味わったことのない感覚。<br />
ある日、古手さんが本を読んでいた。まるで縋りつくかのように、本のページをめくっている。それは見ていて気味が悪かった。<br />
彼女を見つけるたびに反射的に湧き出すようになったあの感覚を振り払うべく、私は彼女の本を取り上げた。<br />
「ネクラな顔して何読んでんの」<br />
そして、その本を汚い、やだー、と叫んで他の子にパスする。その子もまた私と同じようにきゃあきゃあと声を上げて、それを別の子にパスする。<br />
古手さんは返して、返して、と叫びながら、皆の手の上で好き勝手にパスされている本に向かって手を伸ばす。届くはずもないのに。<br />
きゃはははは。あはははは。<br />
皆が笑う。みじめでかわいそうな古手さんは、手が届かないことを悟ったのか、呆然と立ち尽くす。<br />
竜宮さんがやめなよ、と言っている。かまうもんか。<br />
私は愉快な気分で、他の子たちの手の上を一周してきた本を受け取る。<br />
古手さんが、私の方へ向かってくる。私はもちろん、古手さんが来る前に他の子にパスする。そして笑う。<br />
あれ、様子がおかしい。もう本は私の手にないのだから、こちらに来る必要は無いはずなのに。<br />
なのに古手さんは、私の方に向けて歩く足を止めない。あれ…?<br />
古手さんの、白く細い華奢な腕が、軽やかな動きで私に向かって伸びて、古手さんのきれいな顔が、息がかかるぐらいに近く、あれ?<br />
一瞬、何が起こったのか分からなかった。<br />
顔の前で、とても痛いものが、ぱあん、とはじけて。殴られた、と気付く頃には、すでに彼女は私の髪の毛を掴んでいて。<br />
いたいいたい、ちぎれる、髪が抜ける、痛い。そう叫ぼうとしたら、そのままひきずって、倒されて。<br />
ばしっ、ばしっ、と何度も叩かれて、何かを投げられて、いた、いたいよ、やだやめてよ!<br />
いつの間にか椅子が私の上にある。そして、古手さんが、見たことのない、無機質な、それはまるで冷え切った怒り、ううん憎しみ?とにかく訳の分からない、けどとても恐ろしい表情を浮かべている。こいつ、こんな奴だったっけ?<br />
お人形さんのような大きな瞳が、じいっと私を見つめる。何か呟く。親友?顔を借りてる?なにそれ…<br />
やだ、いたい!痛いってば!冷たい、凍るような恐怖が脳みそを支配する。身体が反抗するのを忘れる。声も出ない。<br />
古手さんは容赦無く、私に暴行を加え続ける。<br />
ううん、違う。こいつは古手さんじゃない。<br />
じゃあ、誰。この恐い顔をしたこいつは、一体誰。こんな奴知らない。こんな恐くて強い奴、私は知らない!</p>
<br />
<p>やがて、竜宮さんが間に入って、本を古手さんに返させた。<br />
古手さんは本を取り戻すと、ようやく私を解放した。<br />
恐怖に硬直して、されるがままだった身体の緊張が、徐々に解けていく。<br />
次の瞬間、私は爆発したかのように大声で泣き出した。<br />
顔や、腕や、脚、身体のあちこちが、じんじんと痛んでいる。それは私のみじめさをいっそう引き立てた。<br />
悔しくて、悲しくて、恐くて、古手さんに当てつけるように、私はにーにーの名を呼んでわんわんと泣いた。<br />
にーにーがすぐに来て、私を保健室に運んでくれた。教室を出る前に、一瞬ちらっと古手さんが見えた。<br />
彼女は席に座って、既に本の続きを読み出していた。それは私の神経をさらに逆撫でした。</p>
<br />
<p>保健室で手当てをされていると、途中で古手さんがやって来た。そして、先生が私たちふたりに謝れと言う。<br />
私は納得がいかなかった。確かにちょっかいを出したのは私だが、散々傷だらけにされたのも私の方だ。<br />
ちょっとからかっただけでこんなことされるなんて、割に合わない。<br />
もちろん先に謝る気など無く、私は敵意を発しながら、黙って古手さんを睨んだ。<br />
すると彼女は、まるで謝ることを渋る私を馬鹿にするかのように、さらりと謝罪の言葉を口にしてみせた。<br />
もちろん心など込められていない、棒読みの言葉だ。私も同じように返した。それだけだ。<br />
保健室の、消毒液に浸した脱脂綿が、私の血が滲んだ傷を、ちょいちょい、と刺激する。<br />
傷はその度に痛み、私にあの殴られたときの感覚を思い出させた。<br />
あんなふうに、容赦なく、叩き潰されたのは初めてだった。にーにーも、お父さんもお母さんも、私を大切にしてくれたからだ。<br />
そりゃあ小突かれたことぐらいならあるけど、まるで配慮の感じられない、純粋な暴力はあれが初めてだ。<br />
痛かった。恐かった。思い出すたびに、ぞっと背筋が寒くなる。悔しさや苛立ちよりも、恐怖の方が強いのだ。<br />
あの子は、古手さんじゃない。古手さんはあんなに恐くもないし、強くもない。だから今まで意地悪してきたんだ。<br />
じゃあ、あの子は誰。</p>
<br />
<p>その日の夕方、予想外のことが起こった。<br />
家に帰ってきたにーにーが、部活を作るかもしれないと言ったのだ。<br />
何でも、クラスで浮いてる古手さんをクラスに馴染ませたいらしく、園崎さんの妹さんが持ってる色んなゲームを使って遊ぶ部活を作りたいらしい。<br />
そしてその部活には沙都子も入って欲しい、と言うのだ。<br />
私はもちろんそっぽを向いた。<br />
「そんなの、古手さんが嫌だって言うでしょ。それに私はあの子の顔見るよりも、他の子と校庭で遊ぶ方がいいもん」<br />
すると、にーにーが内緒の話を打ち明けるかのように、にこにこ笑いながら言った。<br />
「あのね、実はこれ、秘密なんだけど……梨花ちゃんね、山本先生に、元の世界に戻りたいって言ってたんだよ」<br />
「元の世界?」<br />
私が怪訝そうに聞き返すと、にーにーは頷いた。<br />
「そう。ほら、富田くんと岡村くんっていたろ?引っ越していっちゃった子たち。あの子たちがいる前の世界、ってことらしいんだけど」<br />
「ああ、あいつらのこと」<br />
私は苦い表情でそれを聞いた。<br />
本当は昔、古手さんよりも、あいつらは私と仲が良かったのだ。<br />
というより、もっと小さい頃、富田さんと岡村さんは私を好きだった。<br />
皆のリーダー的存在だった私を崇拝して、私の言うことをよく聞いた。まるで私の家来みたいに。<br />
私たちは、よく外で一緒に遊んでいた。それがある日、ぱったりと、遊びに来なくなった。<br />
どういうことかと聞くと、あいつらはおどおどして答えた。<br />
古手神社の梨花ちゃんと遊ぶようになったんだ。ぼくたち、あの子が好きなんだ。<br />
次の日、私はこっそりと古手神社の梨花ちゃんとやらを見に行った。神社の境内に、その子はいた。<br />
お人形さんのように可愛らしい子だった。長い黒髪がとてもきれいで、肌がミルクみたいに白くて、華奢な身体をしていて。<br />
笑うとまるで、花がぱっと開くみたいで、私と同じくらい、もしくは私よりも、可愛かった。<br />
そしてそこには富田さんと岡村さんもいて、今まで私に向けていた、うっとりしたような表情を、その子に向けて、まるで家来のようにその子をちやほやしていた。<br />
その子は当然のように、お姫様みたいに、ゆったりと構えていた。<br />
腹が立った。屈辱だった。本当はあそこにいるのは私のはずなのに、と、私は古手梨花を憎んだ。<br />
だから私は古手梨花が嫌いなのだ。昔からずっと。</p>
<br />
<p>私はそのことを考えていて、にーにーの話を聞き流していた。だから、その言葉を耳にしたとき、私は驚いた。<br />
「沙都子は梨花ちゃんにとって、親友なんだって」<br />
「……はあ?」<br />
私は目を見開いてにーにーを見た。にーにーはくすくすと笑って、繰り返す。<br />
「その元の世界ではね、沙都子は梨花ちゃんにとって、大切な親友なんだって。<br />
そう梨花ちゃんが言ったんだよ」<br />
そんなこと、ありえない。私はうわずった声で言う。<br />
「嘘でしょ?だって私、あんなに意地悪して……」<br />
「本当だよ。つまり梨花ちゃんは、沙都子と友だちになりたいんだよ」<br />
胸の中で、ふわ、と温かいものが広がる。<br />
だって私、いつもあの子に意地悪した。無視したし、仲間外れにした。だからあの子も私を嫌いなはず。<br />
でも、にーにーは嘘をつかない。だから、本当なのだ。<br />
私は頭の中で、今までの彼女の行動を思い返す。<br />
ボールをぶつけられて、気絶して、そして起きたときのあの表情。<br />
古手さんを除け者にして、ご飯を食べたときの、あの視線。<br />
それに、朝。そうだ、いつだったか、彼女は私に「おはよう」と言っていた。聞こえないフリをしたけど、確かに聞いた。<br />
そうだ、古手さんはずっと、ずっと前から、私を見ていたじゃないか。<br />
悲しそうな、それでいて温かい、優しい眼差しで。<br />
とたんに、あの感覚が蘇る。身体中の血液が逆流する、自分じゃない自分が騒ぎ出す、そんな感覚。<br />
それは私を不快にさせるものではない。むしろ、私はその感覚と仲良くできる気さえしていた。<br />
「私と、古手さんが友だち……」<br />
そっと口に出してみると、それは驚くほど甘い響きを持った言葉だった。</p>
<br />
<p>次の日、私はぎくしゃくしながら学校に行った。<br />
もちろん古手さんも教室にいた。席に座っている。いつも読んでいる本は無い。<br />
古手さんは、私を見ると、微かに瞳を揺らがせて、言った。<br />
「おはよう」<br />
一瞬、身体が緊張した。その挨拶が聞こえなかったフリをするか、それとも挨拶に応えるか、迷う。<br />
けれど私は口を開いていた。そしてその言葉を、声にしようとした瞬間、<br />
「おっはよー沙都子!」<br />
「沙都子ちゃん、おはよう」<br />
ばしん、と背中を叩かれる。振り返るとそこには園崎さんと竜宮さんがいた。<br />
「お、おはよう」<br />
「悟史もおはよ。今日もいい天気だねー」<br />
「おはよう、魅音、それから礼奈」<br />
「おはよ」<br />
ふたりは明るい笑い声を上げながら、通り過ぎていく。<br />
もう一度古手さんの方を見たとき、すでに古手さんは黒板の方を見つめて、じっと座っていた。<br />
「しょうがないよ、沙都子。挨拶はいつでもできる」<br />
にーにーが私の頭を撫でる。どうやら私の失敗を分かってくれたようだった。<br />
だから私もそのにーにーの優しさを受け取って、また挨拶をする機会を待つことにした。</p>
<br />
<p>その日の昼休み、ご飯を皆で広げていると、古手さんがお弁当箱を持ってやって来た。そして言った。<br />
「ボクも仲間に入れてほしいのです」<br />
それは、一生懸命さに溢れた、とても健気な申し出だった。顔が少し赤い。<br />
他の子たちは嫌そうな顔をした。けれど私は言った。<br />
「別にいいよ。椅子持ってきて座れば?」<br />
我ながら、素直じゃない、意地っ張りな言葉だ。<br />
けれど古手さんはとても嬉しそうに、ぱっと笑顔になった。<br />
「ありがとうなのです。椅子持ってくるのです」<br />
こうして、初めて私は古手さんと一緒にご飯を食べた。<br />
普段なら昼休みは饒舌になるはずだったけれど、やはり私は緊張して上手く話せなかった。<br />
しょうがない。まだ最初だから。隣でご飯を食べるにーにーが、そう言うかのように微笑んだ。<br />
落ち込みかけたそのとき、古手さんが言った。<br />
「沙都子のクリームコロッケ、美味しそうなのです」<br />
それはお母さんが作った、こんがりと揚がったきつね色のクリームコロッケだった。<br />
思わず私は、食べる?と聞いていた。<br />
古手さんは驚いたように目を見開いて、そして笑顔で頷いた。<br />
私はそれが大好物だったのだけれど、でもそのときばかりは、惜しいとは思わなかった。<br />
だって、クリームコロッケを食べる古手さんの笑顔は、本当に幸せそうだったから。<br />
だから、何だか私まで嬉しくなってしまったのだ。それはどこか懐かしい感覚だった。<br />
そして古手さんは言った。<br />
「沙都子のお母さんのご飯を食べるのは、初めてなのです」<br />
妙な言い方だった。</p>
<br />
<p>その日の帰り、古手さんがにーにーと園崎さんと竜宮さんに、何か言っていた。<br />
三人は少し残念そうな表情をしてから、頷いていた。そしてその後、にーにーが私の方にやって来て言った。<br />
「今日は梨花ちゃんとふたりで帰ってくれるかな。話したいことがあるんだって」<br />
私は頷いた。</p>
<br />
<p>そしてその数分後、私は他の子たちとの遊びの約束を断り、古手さんと帰路を共にしていた。<br />
のどかな田んぼに囲まれた道を、てくてくとふたりで歩く。いつも一緒に歩くにーにーとは違う、古手さんの軽い足音が、耳に心地よい。<br />
あの感覚がますます強くなる。こういうの、何て言うんだっけ。そうだ、デジャヴ。<br />
「沙都子、わざわざごめんなさいなのです」<br />
気付くと、古手さんに声をかけられていた。<br />
「別にいいよ。話したいことって何?」<br />
古手さんは首を振った。長い髪が、さらさらと揺れる。それは陽の光を受けてきらめいていた。<br />
「ただ、沙都子とこうやって、一緒にいたかっただけなのです。いけませんか?」<br />
「そんなことないけど」<br />
私はぶっきらぼうに答えた。セミの声が遠くで聞こえる。<br />
古手さんはそのセミの声に、思いを馳せるかのように目を細めた。そして、彼女の唇が、震えるように動く。<br />
「昨日は、暴力をふるってごめんなさい」<br />
「……うん」<br />
私も、ずっと意地悪してごめん。そう言おうと口を開く。<br />
けれどそれは、古手さんの言葉によって遮られた。<br />
「部活の話、悟史から聞きましたか?」<br />
「え、あ、うん」<br />
「多分その話は、なかったことになると思います」<br />
思いがけない言葉に私は驚く。てっきり、彼女は部活の創設を喜んでいるかと思っていた。<br />
「もっとも、私がやり遂げることができたら、の話ですけど」<br />
「何言ってるの?全然分かんない」<br />
彼女の言葉の意味がよく理解できない。私は強い口調で彼女の言葉を遮る。</p>
<br />
<p>彼女は足を止めた。私も足を止めた。私たちは丁度、分かれ道に差し掛かっていた。片方の道は古手神社の方向に通じ、もう片方は私の家の方向に通じている。<br />
ああ、お別れだ。彼女がふっと呟いた。その瞬間、強い風がざあっと吹いて、セミの声が止まった。<br />
古手さんの長い髪と、黒いスカートが、ふわりと風に舞い上がり、彼女の姿を大きく見せた。<br />
古手さんは、無表情だった。<br />
「でも、こうやって最後に、この世界でも沙都子と一緒に帰ることができてよかった。<br />
この世界はあまりにも、不思議なことが多すぎたから」<br />
「え……」<br />
最後?この世界?何を言ってるんだろう。<br />
訳が分からず、私は彼女を見つめた。すると彼女はゆっくりと、手を伸ばした。<br />
白い華奢な手。かつてこの手は私を殴った。けれど不思議と、私は怯えなかった。<br />
当然のように私は、その手が私の頬に触れるのを受け入れた。<br />
「殴っちゃって、本当にごめんね、沙都子」<br />
それは、今にも泣き出しそうな、細い声だった。<br />
古手さんのきれいな顔が、息がかかるぐらいに近くなる。自然と私は目を閉じる。<br />
柔らかい感触が、唇に降りる。キスと呼んでもいいのか戸惑う、それは本当にささやかな温もりだった。<br />
それはとても心地よい感覚。自分じゃない自分が、自分に重なる。<br />
久々に自分がひとつになったかのような、優しい感覚を、そのとき私は感じた。</p>
<br />
<p>次に目を開けたときには、すでに古手さんは顔を離していた。<br />
そしてふわりと、風のように微笑んで、彼女はぱっと駆け出した。古手神社の方に向かって、一目散に。<br />
私は思わず叫んだ。<br />
「ねえ、明日も学校来るんでしょ!?」<br />
あの感覚が強くなる。彼女を求めて、身体中の血液が騒ぎ出す。<br />
そうだ、古手さんは学校に来る。おはよう、って言い合って、お昼は一緒にご飯を食べて、放課後は部活をして。<br />
いっぱい話して、いっぱい笑って、いっぱい遊んで、そしてその後は、バイバイ、また明日って言い合って。<br />
まだまだしたことのないことを、いっぱいするんだ。だって私たち、友だちになるんでしょ?親友になるんでしょ?<br />
けれど彼女は答えない。黙って走り続ける。私から遠のく。黒い髪が揺れているのが微かに分かる。<br />
やがて彼女の背中は、道の向こうに消えた。私はそれをずっと見ていた。<br />
いつの間にか、セミに代わって、ひぐらしが合唱を始めている。<br />
カナカナカナ、と、それはひどく懐かしく、心地よく、そして寂しい旋律だった。</p>
<br />
<p>私は信じていた。必ず彼女は学校に来ると。そう信じることで、不安を打ち消そうとしていた。<br />
次の日私は学校にいつもより早く行った。<br />
私に付き合って早く来たにーにーは、不思議そうにしていたが、私が「ちゃんと挨拶したいから」と言うと、どうやら納得してくれたようだった。<br />
私はじっと教室のドアをうかがっていた。古手さんが来たら、真っ先におはようと言うと決めたからだ。<br />
今か今かと待ち焦がれる。けれど、古手さんはなかなか来ない。いつもなら来ているはずの時間を時計の針が回っても、まだ来ない。<br />
これじゃあ、遅刻しちゃうじゃない。私ははらはらしながら、時計と教室のドアを交互に見つめた。<br />
来ない。来ない。まだ来ない。<br />
不安が胸の中で広がる。何でよりによって、今日、遅いのか。昨日の「最後」という言葉が頭の中に残っている。<br />
まさか。ありえない。私は不安を打ち消す。そして古手さんが来ることを信じる。というより、もはや私は願っていた。<br />
時計の針がどんどん進む。もうクラスメイトは古手さん以外全員来た。<br />
めったに遅刻なんかしないのにね、と竜宮さんが園崎さんに言っている。<br />
園崎さんは、どこか固い表情で頷く。まるで、何か知っているかのような表情だ。不安が増す。まさか本当に、古手さんに何かあったのだろうか。<br />
そのとき、ガラッとドアが開く音がした。ああ、よかった、やっと来た、と思ってドアの方を見る。けれどそれは違った。入ってきたのは、知恵先生だった。<br />
落胆して、知恵先生を見つめる。けれど、私は気付いた。知恵先生の顔が青ざめている。ただならない様子だ。<br />
先生が教壇に立つ。園崎さんが号令をかける。皆が挨拶をして、座るのを確認すると、先生は俯きながら口を開いた。<br />
「もう、知っている人も何人かいるかもしれないけど……昨日の夜、古手さんと、古手さんのお母さんが亡くなりました」<br />
……え?<br />
耳を疑った。何?古手さんが、どうしたって?<br />
誰かが囁いているのが聞こえた。<br />
「古手さんが、お母さんを包丁で刺して殺したんだって。部屋が血だらけだったらしいよ」<br />
「やだ、こわい……」<br />
「前からちょっと変だったもんね、古手さん。誰ともあんまり話さないしさ…」<br />
何?何それ?知らない、知らないよ。<br />
だって、私まだ、何もしてないよ。古手さんと、何も話してないよ。<br />
「沙都子、沙都子、大丈夫?」<br />
にーにーが私の肩を揺さぶる。心配そうな、焦った声が耳を素通りする。<br />
そしてその代わりに、古手さんの、私を呼ぶ声が蘇る。<br />
『沙都子のお母さんのご飯を食べるのは、初めてなのです』<br />
『沙都子、わざわざごめんなさいなのです』<br />
『沙都子と一緒に帰ることができてよかった』<br />
『殴っちゃって、本当にごめんね、沙都子』<br />
私は悲鳴を上げていた。<br />
身体中の細胞が泣き叫ぶ。ぐるぐると頭の中が回りだす。<br />
私はまだ何もしていない。おはようも言ってないし、さよならも言ってない。ああ、ごめんねも言っていなかった。<br />
後悔が悲しみに変わって、胸の中に溢れ出す。止めることができない。涙がぼたぼたと零れる。<br />
ああ、どうして。どうして忘れてたんだろう。<br />
あの感覚が、今まで以上に、はっきりと私に訴える。<br />
私と梨花は友だちだった。親友だった。お互いが大切な存在だった。確かに私たちが助け合って生きていた、その世界は存在していたのに。<br />
梨花は覚えていたんだ。けれど私は忘れていた。大好きだったのに忘れていた。けれど梨花は、大好きのままでいてくれていた。<br />
私は梨花に何をしたの。最後の瞬間、一体何を言ったの。梨花は私にごめんねと言った。けれど私は、分からないと言ったのだ。<br />
「いやああああああああああああああああ」<br />
梨花、梨花。私は絶叫する。喉が張り裂けそうなほどに。いっそ張り裂けろと思う。<br />
周りの子たちが、驚いた目で私を見つめる。にーにーが何か言いながら私を抱き締める。<br />
私はにーにーのシャツを握り締めながら、叫び続ける。もう二度と会うことのできない大好きな親友を思って、叫び続ける。<br />
忘れてしまってごめんなさいと、何もかも手遅れの謝罪を繰り返すように、ただ叫び続ける。<br />
かつて、私が梨花に意地悪したとき、梨花は取り上げられた本に向かって、届くはずもないのに手を伸ばした。<br />
今度は私が手を伸ばす。ごめんなさい、ごめんなさい。<br />
久々に知る我が身の罪を泣き叫んで詫びながら、私の手は空を掻き毟る。<br />
そこには手は届かないと知っていても、それでも。</p>
<br />
<p>完</p>
<br />
<br />
2023-10-29T19:48:07+09:00
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j 宙空Ⅱ(悟史×魅音)
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/386.html
j
「おはよう、悟史!」
学校に登校した私は机に着いていた悟史に声を掛けた。
「おはよう魅音、今日も元気だね……」
「ふっふっふ……おじさんは元気だけが取り柄だからね」
私に変わらないその優しい笑顔を携えて悟史は言った。柔らかい微笑を見ているとこっちのほうが元気を貰ってしまう。屈託の無い瞳に見つめられてしまうとなんだか胸がどきどきして仕方ない。
「あのさ、悟史。ちょっと宿題見せて……くんない?」
「えっ、またかい……魅音……」
私と悟史はこの雛見沢に生まれ育った、俗に言う幼馴染というやつだ。幼い頃からの友達であり、一緒に雛見沢を駆け回っていた日々を思い返す。分校にも同級生として通い共に学んでいる。
悟史はとても仲間思いの優しい男子でどちらかというとおっとりとした性格をしている。
むうっと言うのが口癖で、何か困った事が起きるといつも眉をひそめている。その表情を見ると、こっちから何か手助けしてあげないという気持ちを起こさせてしまう。悟史は私の親友の一人だ。いや、それ以上の感情がもう芽生え始めていたのかもしれない。心の中に悟史の居場所が、ぼんやりとした心地よさを含むその場所が私の中にあったのだから。
でもそんな優しい悟史の顔が曇り始めてきたのは、いつの頃からだっただろう。ただ蝉の鳴き声が険しく聞こえ始めていた事だけが私の頭の中で反芻されていった。
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悟史の妹の沙都子の体調が優れない日々が続いた。同調するように悟史も徐々に不調が襲っていった。
「……ごめん魅音、ちょっと一人にさせてくれないか……」
そんな言葉が毎日のように繰り返された。優しい笑顔が段々と蝕まれていくような感覚が私を支配した。
北条の、悟史の叔母から虐待を受けている。そんな話を聞いたのはそれから少したった頃だ。妹の沙都子とのそりが合わないらしく、沙都子と悟史に強く当たっているらしい。
それを聞いたときには、居ても立ってもいられずに、悟史の叔母の行為を止めさせようと考えた。
しかし、頭に浮かぶだけでそれはできなかった。家柄の都合上、園崎と北条には確執があったから。
ダム戦争の澱だった。北条家の人間は裏切り者として村の除け者にされていた。私は園崎の頭首代行を務めている。だから無闇に動こうとすると園崎の信頼を失墜させてしまう。
裏切り者を村の総意の権化が救うことは村の誰も望んでいない。私が悟史の友人であった事に村の人はいい顔をしなかったほどだ。悟史への想いと家柄に挟まれ、私は無力な存在だった。
そんな悟史と沙都子の心痛を少しでも和らげようと私は部活を開いた。感じているストレスを少しでも発散できればいい。当時の私にできた未来の見えない二人への最低限の罪滅ぼしだった。
そんな二人への施しも実を結び、悟史と沙都子に笑顔を見ることができた。あの優しい顔をうかがい知ることができただけで私の心に光が燈った。
「ありがとう魅音。沙都子もとても楽しがっていたよ」
「あはは、いいんだって。このぐらい。喜んでもらえて部長名利に尽きるねぇ」
突然ふわりとした優しい感触が頭の上にあった。
「ふぁ……」
「本当にありがとう、魅音」
暖かった。心の底から包まれるような温もりを感じる。胸の高鳴りが止まらずに鼓動が直接聞こえてきた。悟史への想いが一層強くなった瞬間だった。
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「ねぇ……お姉。お姉の同級生に男の子がいますよね。名前はなんて言うんですか?」
突然、詩音の口から悟史のことが出て来て、少し困惑した。
「そう……悟史、君って言うんですね……」
昭和57年、興宮に住んでいた私の妹の詩音はこれもまた園崎家の都合上、私と離れて暮らしていた。拘束される生活に嫌気が差したという妹のために私は双子の特性を活かして詩音と時々入れ替わりを行っていた。
私が詩音と入れ替わっている時に詩音は悟史と出会ったのだろう。それからというもの詩音は悟史の事を私に頻繁に尋ねてきた。詩音の様子から見て、悟史に恋を抱いたのだろうと私は感じ取ってしまった。双子の妹の事だったから薄々思ってはいたのだが。
詩音は頻繁に入れ替わりを求めるようになり、悟史と会う機会が増えていた。代わりに私が悟史に会う機会は少なくなっていた。悟史を焦がれる気持ちが溢れ出始めたのも、この頃からだった。
「魅音、この間は差し入れありがとう。とっても美味しかったよ。どうやって作ったんだい?」
私にはまったく記憶に無い事を悟史から聞くことが多くなった。魅音として過ごしている詩音との思い出を聞かされることが多くなったのだ。それを聞くたびに悟史を詩音に取られてるような感じがして悲しくなった。でも詩音に対して私が悟史に好意を持っているなんて口が裂けても言えない。妹を興宮に追いやってしまったのには私にも責任があったから。
悟史への想いと詩音への思いに挟まれた私は身動きが取れなかった。ただ二人の仲を見つめるだけの孤独な時間が増えていくだけだった。
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「お姉、ごめんなさい。私ちょっと、悟史君にひどい事を……」
悟史が相当精神的にまいっていた頃だと思う。詩音の言葉に心が痛んだ。詩音は悟史を思うあまりに沙都子に手を出してしまったという。悟史にも相当咎めを食らったことを詩音は涙ながらに訴えてきた。
「……大丈夫、詩音。私が明日悟史に会って謝って来るから……ねっ、もう泣かないで……」
詩音のためなのか私の悟史への想いのためなのか、複雑に入り混じった気持ちを持ちつつ私は泣いていた詩音をなだめていた。迷惑なことをしてくれたという詩音への気持ちが無かったと言う訳ではない。その一方で悟史に嫌われてしまったのではないかという気持ちが私を取り巻いていた。
翌日私は悟史の家に向かった。息を大きく吸い、気持ちを落ち着かせた後に言葉を発した。
「……ごめんください」
「はい……。……魅音……」
私の顔を見て複雑そうな顔をした悟史が私を出迎えた。
「それで……何の用」
悟史の言葉に少し棘が含まれていた。心に刺さってくるそれを堪えながら私は言った。
「昨日の事なんだけど、その……謝りたくて……さ」
身に覚えの無い事を、しかも悟史に謝らなくてはならなかった。詩音のためだったのか、私のこれ以上嫌われたくないという気持ちがあったからなのだろうか。押し潰されそうな心を震わせて私は謝罪の言葉を述べた。
「ごめんなさい、悟史。私あの時、気が動転しちゃってて……悟史と沙都子に迷惑を……本当にごめんなさい」
しばしの逡巡の後に悟史が答えた。
「正直、魅音がどうしてあんなことをしたのか……理解ができない。もしかして僕らの事をもっと深くに陥れようとしてやったんじゃないのかと……思ったよ」
「そんな……事、微塵も思っていないよ、悟史。そう思ってしまったんなら、本当にごめん。謝って済む問題じゃないかもしれないけど……」
悟史の心痛がくっきりと私に刻み込まれた。私は謝罪を繰り返すしかなかった。
「ねぇ、魅音。もう沙都子も精神的にまずい所まで追い込まれてるんだ……誰も助けてはくれない、ただみんな見ているだけで……」
つらつらと悟史は凝り固まった心の内を吐露していった。こんなにも悟史は追い詰められていたなんて思いもしなかった。いたたまれなかった。
「悟史……あの、こんなこと言われるのは心外かもしれないけど……私は悟史の味方だから。もう悟史を追い詰めることなんて絶対しない。できることがあるなら私、何でも手伝う」
気が付いたら私の想いを悟史に吐いていた。悟史とこうやって向かい合う機会はもう無いだろうと感じていたからなのかもしれない。
「……」
悟史は押し黙ったままうつむいていた。
「私が言いたかったのは……それだけなの……ごめん、邪魔したね。私帰るね……」
席を立ち、悟史に背中を向けたときだった。
「待ってよ!」
私の体をぎゅっと悟史が後ろから抱きとめていた。初めて感じる悟史の体温とにおいが私の体を包んだ。すっと頬が熱くなっていくのが分かった。
「……助けてくれよ……魅音。僕を見捨てないでくれ……」
「悟史……」
悟史の手をやさしくとって私は悟史と向き合った。悟史の顔がこんなにも近くにあったのは初めての事だった。
「大丈夫、悟史……私は……」
高鳴る鼓動を必死に抑えつつ、私は想いを初めて打ち明けた。
「私は悟史の事が……好きだから」
涙に濡れていた悟史の瞳を見詰める。永遠に思える時間が過ぎた後にどちらからともなく唇を重ねた。その柔らかな感触は今でも憶えている。忘れることなんてできない。
「魅音……」
唇を離した後に私は言葉を紡いだ。
「来て……悟史……」
悟史の少し硬い指が私の乳房に触れた。アルバイトをしていると聞いたからその苦労をうかがい知る事ができた。心身ともに疲弊している悟史がたまらなくいとおしかった。
「すごく……柔らかいんだね……女の子の……」
「ん……」
悟史のその言葉を聞いたとき、私は悟史の初めてになるんだろうと思った。
───詩音とはまだ関係を持っていないんだ……
そんな考えを持ったときに私の体に電気が走る。
悟史が私の乳房にむしゃぶりついていたからだった。悟史の舌から感じられる生ぬるい感触に私は包み込まれる。敏感になった突起からくすぐったさに似た心地よさが襲ってきた。
悟史の濡れた光沢のある舌の、その艶めかしい動きを見て思わず吐息が漏れる。
「んん! さ……とし、そんなに……強く……」
「あ、ああ……ごめんよ、魅音」
はっと悟史が顔を上げ私から口を離す。私の片側の乳房だけが悟史の唾で濡れて、その中心で突起が恥ずかしいぐらいに起立していた。
「……今度は悟史のを……」
体勢を変えて私は悟史のものに目をやった。初めて見る男性の、天を衝くかのごとく隆起しているそれを見て私は驚きを隠せなかった。
「これが……悟史の……」
「むうっ……あまり……見ないでくれよ……」
悟史の困惑を聞きながら私は恐る恐るそれに両手で触れた。触れる瞬間に悟史から小さな声が漏れる。
───大きい……そしてかたい。これが私の中に……
そう思うと若干の恐さが湧き出てきたが悟史のものだと思うと、いとおしさが溢れてきた。
脈打つそれの熱さを感じながら、私は悟史に伝えた。
「悟史……来て……悟史のが欲しいの」
「……魅音」
悟史のものが私の入り口にあてがわれた。
「いくよ……魅音」
悟史が前屈みになってぐっと力を入れた。同時に裂かれるような痛みが込みあがってくる。
「……あっ……く……はぁ……いっ!」
「うう……く、大丈夫……かい……魅音?」
「はぁ……はぁ、だ、大丈夫……だよ、悟史」
痛みはあったのだが虚勢を張り悟史に伝えた。
「動くよ……魅音」
「う、うん……うぁ」
悟史がそのまま腰を突き動かしてきた。大きな痛みに体が支配されていくが、悟史の熱さが感じられて私の心が満ちていった。詩音には手に入れることの無い悟史の初めての熱さを感じた。
妹に対して最低の優越感を覚えてしまった私がいた。
───ごめんね、詩音。でも……
悟史と繋がって少しの間が経ち悟史から声が漏れた。
「はぁ…うくっ…魅音、もう僕は……!!」
感じていた悟史の熱さが離れる。同時に別の水気をはらんだ熱い塊を私のふとももに感じた。
「……はぁ……はぁ……悟史……」
悟史の出した汗と精液のにおいが私の鼻腔を突き抜けて行った。
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昭和57年の綿流しの祭りの日が徐々に近づいていった。相変わらず詩音は悟史と会うために私と入れ替わりを求めてきた。詩音は悟史と過ごした事について引っ切り無しに私に報告してきた。
楽しそうな詩音の声を聞かされる度に私の心は複雑に揺らいだ。悟史との関係を深めていく詩音に対して私はあの日、悟史に抱かれた日以来、向かい合って話をする機会が無くなっていったのだ。
悟史から聞かされるのも私に化けた詩音との思い出だけだった。さらに綿流しの祭りの会合によって、私の時間も割かれてしまった事もそれに拍車を掛けていた。
悟史と詩音の関係の間に決して立ち入ることのできない、透明の壁を感じる日々を私は過ごしていた。
そんな憂いを感じていた私に悟史から電話が掛かってくる。久々に悟史と二人で話せる機会ができて、嬉々として受話器を握った。
「魅音、この間はありがとう。また魅音に色々と助けてもらったね」
また詩音との思い出だった。
「……ううん、いいの」
先ほどまで感じていた嬉々とした気持ちが冷めていくのを感じた。
「……最近さ魅音に助けてもらうばかりでとても感謝してるよ。色んな所に行って、二人で遊んだよね……近頃、なんか今までの事が全部思い返されてくるよ……」
「そうなんだ……」
悟史は私の記憶に無い思い出をたくさん伝えてきた。そこに私との思い出は一切無い。私はもう感じ取ってしまった。もう悟史の中に自分はいない。詩音しかいないのだと。それぐらいこの悟史との会話は決定的な物だった。
「……魅音? 聞いてる?」
「…………聞こえてるよ。悟史の話した私との思い出……全部……」
こみ上げる悲しみを忍び、声を震わせないように言った。
「それでさ、魅音。また一つだけお願いがあるんだ」
「……待って悟史」
私は悟史の言葉を止めた。
「……私の事……好き?」
「……うん、……好きだよ。どうしたんだい魅音? このまえ興宮で何度も聞いてきたのに……」
そんなことを聞いて私はどうするつもりだったのだろうか。悟史から聞くことのできた好きという言葉。好きという言葉を、悟史の声を私は聞きたかったのかもしれない。それが私ではなく詩音に向けられていた物だったとしても。
「あのさ……今ちょっと、急用あってさ、後で掛け直させてくんない? 5分後ぐらいには、またこっちから掛けるからさ」
「5分だね……できるだけ急いでくれないかな。物を頼みながらこんな事言って申し訳ないけど」
----
「もしもし、詩音?」
私は詩音に電話を掛けた。悟史のことを話すと声色を変えて飛び付いてきた。
「悟史君がどうかしたんですか? もしもし、お姉?」
「……うん。悟史から電話があって私に話したいことがあるって。多分詩音に向けての頼み事だと思ったから掛け直すって悟史に伝えた」
詩音に悟史の家の電話番号を言い掛け直すように伝える。
「わかりました、今から電話します」
「待って……あのさ……詩音……」
私の瞳に涙が溜まっていくのがわかる。唇をくっと噛み締め、震える声と体を必死に抑えながら私は言葉を紡いだ。
「もう、私の言葉は……もう」
───嫌だ……言いたくない。これを伝えたらもう……悟史とは……
悟史の笑顔が姿を結ぶ。幼い頃から過ごしてきた悟史の思い出が頭の中で浮かんでは消えていった。
「私の……言葉はもう悟史には……通じないから……さ……詩音の言葉ならきっと通じると思う……だから悟史の話を聞いてあげて……」
電話を終え受話器を置いた。同時に瞳からこらえていた涙が溢れるように流れてきた。そのまま地面に崩れ落ち嗚咽を漏らした。悟史への想いを自ら絶ってしまった私は、ただむせび泣く事しかできなかった。
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突然だった。綿流しの祭りが終わって数日も経たずに悟史が消えた。
急な失踪に私はただ困惑するしかなかった。もちろん家族や組の者に行方を聞いたが誰も悟史の失踪について関わりを持つ者はいなかった。必死になって私も調べたのだが行方は今でも知れない。オヤシロ様の崇りに遭ったからと村の人間は言っていた。
そんな中で詩音の荒れ様は凄まじかった。自棄になって何度も私に当たってきた。
「あんたたち園崎家が悟史君を疎ましく思って消したんでしょう!! 何とか答えなさいよ、悟史君を返しなさいよ。ねえ、お姉!!」
私の気持ちなど微塵も考えない詩音に対して私は気付くと声を荒げていた。初めて妹に憎しみを抱いた瞬間だった。
「詩音のバカ!! 私だって悟史を……悟史のことを……」
涙を隠すためその場から逃げるように私は疾走した。
───悟史……どうして……いなくなったの……?
いなくなった悟史を追い求めるように涙を流しながら私は懸命に地面を駆けていた。私の心の中にあった悟史の居場所には、ただ空っぽの宙空が広がっているだけだった。
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「よう! 魅音。今日も元気か?」
教室にいた私に向かって元気な声が響く。
「おはよう! 圭ちゃん。今日も朝から元気だねえ」
圭ちゃんの活発な姿を見るとこっちまで元気付けられてしまう。
前原圭一こと圭ちゃんは雛見沢に最近引っ越してきた男子で快活で明るい性格の持ち主で悟史とは違ったベクトルで場を和ませる面白いやつだ。
「ねえ圭ちゃん、今日の宿題ってこれであってるかな」
圭ちゃんに今日の宿題の答え合わせをしてもらう。
「おお、全部合ってるぜ、魅音。よくがんばったな」
圭ちゃんが私の頭を撫でた。悟史とは違って髪形が崩れてしまうぐらいに強く撫でてくれる。
荒々しさの中に長い間感じていなかった温もりがあった。
「……圭ちゃん……」
私は圭ちゃんに好意を抱いているのではないかと思う。
でも違う。それは違う。多分私は、悟史の代わりを圭ちゃんに見出しているのだ。
消えることの無い悟史の気持ちを圭ちゃんにダブらせて求めようとしていた。
悟史の代わりを求めるために好意を抱いたことを口に出せば、最悪の人間だと誰もが私を罵っていくだろう。そんなことは無いと、必死に自分に言い聞かせて圭ちゃんに振舞うことを何度も試みた。でも駄目だった。悟史の代わりとしか考えることができないのだ。
悟史から抱かれたときに感じた熱さと痛みを、圭ちゃんに追い求めようとしている自分がいる。
空っぽになった心の中の宙空。かつて悟史のいたその場所に圭ちゃんを重ね合わせようとしている。屈託のない圭ちゃんの笑顔を私は見つめた。
「圭ちゃん……ごめんね」
やっぱり悟史への思いが忘れられそうにないんだ
fin
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2023-10-18T13:07:52+09:00
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ブルマ魅音
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/570.html
ひぐらしがリメイク?されたことにより魅音へのエロい思いが再燃したため作品を投稿します。
オリキャラ等も登場しますが温かい目で見守って下さい。
「さあ体育の時間だね、おじさん張り切っちゃうぞ!」
次は私は一番大好きな体育ということもあり大きな声を出し着替えようと鞄を開けた時に違和感に気がついた。
……無い、私の体操着が鞄に入っていないのだ!
おそらく家に忘れてきてしまったのだろう…
自分の一番好きな体育を見学するのは嫌だね…どうしようと考えていた時に閃いた!
優子ちゃんが昨日の早退して今日も欠席してるから優子ちゃんのロッカーに体操着が有るかも知れない。
私は悪いなと思いながらも体操着を拝借しようとロッカーを漁った!
あった!勿論洗濯して返すからね!
早く着替えないと体育の時間が始まっちゃうから私は優子ちゃんの体操服に着替えようとしたが今更問題がある事に気づいてしまった。
そもそも最年長の私と最年少の優子ちゃんとでは体格の差が大きく当然体操着のサイズの差も大きく開いている。確認して見るとサイズの表記は上下共にxsとなっていた。
当然私に着るのは無理がある…しかも自慢じゃないけど私は同年代の子達より発育とスタイルが良い方で出ているところはしっかり出ており引っ込んでいる所は引っ込んでいる所謂ボンキュッボンなのだ。
そんな私にこの極小サイズの体操着を着ることはできない…でも私は好きな体育を見学で終わることは絶対にしたくないので覚悟を決めて優子ちゃんの体操着を強引に着ることに決めたのだ。
しかしこの体操着に着替えるには少々手間がかかりそうなので私はコッソリと2階の空き教室で着替える事にして足早に教室を後にしたのであった。
そんな魅音の行動を一部始終見ていて男子が2人いた。
冨田と岡村だった、2人は魅音のいつもと違う行動に目が行っていたのだ。
「魅音さんが持っていった体操服って優子のだよね?」と冨田が岡村に聞いていた。岡村も「見るとこによると自分の体操着を忘れちゃったから仕方なく優子の借りる事にしたんだろうね」「ドジな委員長だね」「ホントだね」
2人はハハハハと笑いあっていた。
…しかし少しすると岡村が「魅音さんにあのサイズ着れるのかな?」と冨田に疑問を投げかけ「どう考えても無理だよね?」と会話していた。
「…」「…」
少しの沈黙の後に冨田が大それたことを言い出した。
「魅音さんがちゃんと着替えられるかコッソリ見に行こうか?」
「エエ!?それはまずいでしょ?いやでもそうかもね!学年は違えど同じクラスメイトなんだから応援してあげなきゃね!」と意味不明なことを下心丸出しで意気揚々と話しており魅音の着替えを見届けるべく2人もこっそりと2階へ向かうのであった。
2人は極力足音を立てない様に2階の教室前まで来て窓ガラスからコッソリ中の様子を伺った。
そこには制服を脱いで下着姿の魅音が優子の体操着を着るために悪戦苦闘している所であった。
「ンンッ!やっぱりなかなか上手く着れないねぇ!」
と身体をクネクネさせている魅音の下着姿に2人は釘付けになった。
初めてみる歳上の女性の下着姿に目を奪われ思春期真っ只中の二人の下半身はこれでもかという位に膨れあがっていたのだ。
しかも2人の興奮状態をさらにヒートアップさせることが2人の目の前で起きていた!
魅音は着替える際にブラジャーのフックが引っかかって上手く着替えられないため「これじゃあダメだね…よしっ!」とブラジャーのフックに手を掛けロックを解除したのであった!
ブルンと魅音の溢れんばかりの巨大な果実が姿を現したのである、
「良かった…これで何とか着れそうだね、ヨイショっと次はこっちだね」
何とか上着を着る事ができた魅音はそんな事を呟き次にxsサイズの極小ブルマに手を伸ばした。
魅音は「これを履くのも大変だけどここまで来たらもう後には引けないね!」と意気込み何とブルマを履きやすくするため今履いている自分のパンツまでも脱ぎだしたのだった!先程ブラジャーも外しているのでかなり大胆な行動に麻痺してしまっているのかも知れない。
ブルマに足を通し両手で一気に上に引き上げたのであった!!
……が上着同様このブルマもサイズが全く異なっている為太もものあたりで行き詰まって来たが魅音は強引に腰を振り巨尻を揺らしながらながら何とか定位置まで着用することに成功した。
しかしここまでサイズの違う体操着を着ていると誰の目から見ても明らかにシュールであった。
体操着はへそのあたりまでしか隠せておらずノーブラの為よく見れば乳首も透けており下半身も尻を隠しきれずブルマから思いっきりハミ出している状態となっている。
「…スースーして落ち着かないしかなり恥ずかしいけど今日だけは我慢するしかないね」
魅音はそんな事を言い残しグラウンドに向かう為教室を後にした。
そして魅音の生着替えを一部始終みていた冨田と岡村の2人は下半身をガチガチにしたまま放心状態となっていた。
そして正気に戻った頃自分達も慌ててグラウンドに向かったのだがかなり遅れて知恵先生に怒られたのは言うまでもなかった。
2023-10-18T00:20:42+09:00
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風邪は天下の贈り物
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/574.html
「ハ、ハックション!ハックションッ!」
私、園崎魅音は朝から盛大に女の子らしくないクシャミを連発していた。
うう…昨日お風呂上がりにタオルだけ巻いて髪も乾かさずTVに夢中になってそのまま寝ちゃったのが祟ったみたいだねぇ。
軽い頭痛に加え少しボーッとする…どうやら風邪をひいてしまったようだ。
体温を計ってみたら37.0°と表記された。微熱ではあるけどダルさも有るから今日は学校休もうかなと思っていたけどもうすぐ運動会が開催される関係で1時間目から昼まで体育というスケジュールで皆んな昨日から凄い楽しみにしていたんだっけ…
それに私は委員長だから挨拶に号令、体育の前準備もしなければならないし私もこの日を楽しみにしていた1人でもあるのだ。
うん、少し大変だけどやっぱり学校に行こうと思ってふと時計を見たらいつもの出発時間を大幅に過ぎていた!
いけないっ、委員長が遅刻なんてしたら体育の準備も遅れて迷惑かけちゃうし下級生に示しがつかないっ。急いで着替えて出発しようと思った時にふと閃いた!
1時間目から体育なら今ここで着替えてそのまま授業に向かえば時間短縮できるかもしれないと思いバスタオルを派手にベッド放り体操着に手を取った。
しかし私は風邪で判断力が鈍っていた事と時間的に焦っていた為にブラとパンツを着けずそのまま体操着とブルマを身につけてしまったのである!
急いでいたとはいえなんて失態を犯してしまったのであろうか、しかしもう着替え直す時間も惜しいのでこの格好の上に制服を着て家を飛び出した。
キーンコーンカーンコーン
HRが始まる予鈴とほぼ同時に教室のドアを開けて皆んなに挨拶をした。どうやらギリギリセーフのようだ。
「どうした魅音?珍しく遅いじゃねーか」と圭ちゃんに揶揄われてしまい少し照れながら「いやぁおじさんとした事が寝坊しちゃってねぇ、マッハで飛んで来たんだよ。この勢いを体育でも見せてあげるから楽しみにしてな」と意気揚々に返した。
後ろで梨花ちゃんが「魅ぃは遅刻ギリギリになりそうな事を上手く流したのです。」とボソッと呟いていて少し図星をつかれたけどそのままスルーした。
そしてHRが終わり待ちに待った体育の授業が始まろうとした時皆んなが楽しく騒いでる中私は自分の体調が今朝より悪化していることを感じていた。
もともと風邪気味なのに遅刻を避ける為に全力疾走していたのがいけなかったんだろう。しかも汗を拭いていなかったのが追い討ちをかけたようだ。
だけど体育の授業が始まったばかりで自分の為に中断するのも皆んなに申し訳ないと思い不調を隠して授業に臨むべく委員長らしく号令をかけたのである。
玉転がしに、バトンリレー、障害物競走とそれぞれが元気にはしゃいで練習しており私も無理を通して楽しんでいたけどついに2時間目の途中でついに限界が来たようだった。
身体のダルさと頭痛が最大に達してその場で座り込んでしまったのである。ウゥ…もう最悪。
「はう!魅ぃちゃん大丈夫!?」「しっかりしろよ魅音!」「無理はいけませんわ」とレナ達が心配して駆け寄って来て私の身を案じてくれたけどほとんど頭に入ってこなかった。
知恵先生も授業を中断して私に駆け寄り「園崎さん大丈夫ですか!?まあ凄い熱っ、早く保健室に行きましょう!」と身体を支えてくれて2人で保健室に向かう事となった。
「皆さん園崎さんの事が心配と思いますがここは私に任せて授業を続けていて下さい!」
私は皆んなに弱々しく「ウゥ…ごめんねせっかくの体育なのにこんなになっちゃって…」と謝罪したけど、「気にするなよ」「そうですよ早く安静にして下さい。」「魅音さんがいないとつまらないですけどワタクシが盛り上げて見せますわッ」と励ましを受けてクスッと笑い知恵先生と保健室に向かう事になり、グラウンドに残った生徒達は直ぐに授業を再開せず心配そうに2人の後ろ姿を見守っていた。
2023-10-18T00:19:13+09:00
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無題(梨花×魅音)
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/488.html
ピンポーン―
呼び鈴が鳴った。尋ねに来たのはきっと魅音だろう。
私は、はーいです。といつもみたいに返事をして玄関に向かった。
「あ、梨花ちゃん。遅くなってごめんね。」
魅音の照れ笑いがなんだか可愛くてこっちまで照れてしまう。
「大丈夫なのです。上がってくださいです。」
私がスリッパを差し出すと魅音は、ありがと!といいながらまた照れ臭そうに笑った。
しばらくの間、魅音と私はお茶をしながら、いろいろな話をした。部活のこととか、罰ゲームのこととか。
「ねぇ梨花ちゃん、どうしておじさんなんか誘ったの?」
ふと、魅音が聞いてきた。
「沙都子が詩ぃとデートなので、お暇だったのです。」
意地悪な回答だっただろうか。魅音は見ていて分かるくらいにしょんぼりした。
「魅ぃ、詩ぃがいなくて寂しいですか?」
私が質問をすると魅音は赤面した。
「そ、そそそんなことないよ!詩音がいなくて楽チンだもん。」
寂しいの丸だしで可愛い。
だからまた少し意地悪をしてやる。
「魅ぃ、今度沙都子は詩ぃのお家にお泊りするらしいのです。」
「え?あ、そ、そうなんだ…。きっと楽しくなるね。」
私の嘘に引っ掛かってくれる魅音は可愛い。だけど表情は痛々しかった。
その表情を見ていると可哀相なことをしたと罪悪感が沸いて来る。
「魅ぃ、ボクなら魅ぃに寂しい思いはさせないのです。」
魅音は耐え切れなくなったのか涙を流した。
「ははっ…ご、ごめんね。泣いたりして…。」
魅音は涙を拭いながら笑った。
本当に魅音は甘えん坊だ。
私は後ろから魅音を抱きしめて、大丈夫なのです。と呟いた。
魅音は小さな声で、ありがとうと言ってくれた。
「魅ぃはここが一番寂しいのですか?」
魅音の可愛いさに負けた。
自分でも驚いている。こんなことを口走るなんて。
私は魅音のスカートの中にゆっくりと手を入れた。
「ちょ、ちょっと待って。梨花ちゃん、な…何しようとしてるの?」
魅音も薄々分かってるくせに、耳まで赤くしながら聞いてくる。
「少し黙っててくださいです。」
私は魅音の唇に手を当て、それから優しくキスをしてあげる。
魅音は目を閉じながら私のキスを受け入れてくれた。
「魅ぃ、とってもかわいいのです」
私は魅音の太ももを撫でる。
魅音はくすぐったそうな、気持ちよさそうな可愛い顔をした。
それが何だか嬉しくて、もう一度魅音を抱きしめる。
「や、やっぱりダメだよ…こんなこと。」
魅音が恥ずかしそうに言ってくる。
本当はヤってほしいのというのがバレバレで、とても可愛い。
「ボクは魅ぃを悲しませるような事はしませんですよ。」
魅音の頭を撫でてそういうと魅音は、今日だけだよと言って私に見を委ねた。
太ももを撫でていた手を魅音のパンツの中へと移動させる。
「梨花ちゃん…そこはダメだよぅ」
そういいながらも、やめないでという表情をしている。面白い。
「今やめたら魅ぃが悲しむのです。」
私が笑ってそう言うと魅音は、そんなことないもん。とやっと聞き取れるくらいの小さな声でそう言った。
魅音のパンツの中は蒸れていて、ぬめぬめしたものが魅音のパンツに染みをつくっていた。
「魅ぃ、これは何ですか?」
「そ、それは…」
これ以上聞くと魅音が可哀相なのでやめにしとく。
そして、私は魅音のパンツをそっと脱がすと魅音のまんこを指でなぞった。
「…んぅ」
魅音が声を漏らすと、魅音のまんこからは新たな汁が出てきた。
「魅ぃのまんこ。いっぱい溜まってますです。綺麗にしなきゃいけないのですよ。」
そう言って、魅音のまんこを下で這う。
「ぁ、んぅ……ひゃぁ!」
魅音が喘ぎ声をあげる度に魅音の体がビクっと反応する。
そんな魅音を見ているともっと快感を味わわせたいと思った。
「魅ぃ、もっと気持ち良くなる方法がありますですよ。」
私はそういうと魅音にキスをした。そして、少し強引に舌を入れる。魅音は舌が入ってくるとは思わなかったらしく、目が泳いでる。
魅音の舌と自分の舌を絡める。
そして、シャツのボタンを一つずつ外していく。
ブラジャーの下に手を入れて、胸を揉んでみる。
私と舌を絡ませている魅音の鼻息はどんどん荒くなる。
そして、胸にあるピンク色の部分をぎゅぅっとつまむ。
また魅音の体がビクっと反応する。
そろそろ下の方もほしいだろうな、なんて思っていたら、
魅音が口を開いた。
「あ…の、梨花…ちゃん?」
私は魅音が何を言おうとしてるのか分かっていたけど、あえて何ですか?と分からないふりをした。
「だから…ね、その…えっと、」
赤面しながらモジモジしている魅音を見ていたら私の方が我慢できなくなってしまう。
「言わなくてもいいのです。」
そう言って、魅音のまんこから出ている汁を舐めとってあげる。
「んぁ…あぁん!」
魅音はいい声で喘いだ。
「魅ぃ、ボクの指なら何本入りますですか?」
「…んぁ、いいから、いいから早くぅ!」
普段の意地っ張りな魅音からは想像できないくらい要求してきたので少し驚いた。でもやっぱり可愛いから、魅ぃは甘えん坊なのです。とか言っておいて魅音の秘まんこの一番気持ちいいところを指でいじる。
「ぁ、んぅ、梨花ちゃん。」
「詩ぃとボク、どちらの方が気持ちいいですか?」
なんて、聞きながら指でいじるスピードを速くする。
「ぁ、り…梨花ちゃん、いぃよぅ。…んぅあ!」
よく言ってくれた。魅音にはご褒美をあげなければ。
私はトロトロの汁でいっぱいになった魅音のまんこをなめ回す。
「ぁ、ぅぁんん!…ぁあ!」
魅音は気持ち良すぎるのか、自分で胸を揉んでいる。
窓を見るともう夕日が沈みかけていて、ひぐらしの声が聞こえている。
もうすぐ沙都子も帰ってくるだろうし、今日はこれくらいでイかせてあげよう。
「魅ぃ、今日は遊びに来てくれてありがとうなのです。これはボクからのお礼なのですよ。」
そういってまた魅音のまんこに指を三本ほど入れる。
そして手早く動かす。
魅音のまんこからはくちゅくちゅといやらしい音と共にトロトロな液体が湧き出てくる。
「ぁ、梨花ちゃん!…んぁ、あぁぅ!!…いぃょぅ、あぁん!いいよお!!」
魅音はこれ以上ないくらい喘ぐと果てた。
私は寝ている魅音にパンツとブラジャーをして、そっと布団をかけてあげた。
しばらくすると魅音はガバッと起き上がった。
しかし自分が全裸だと気付くと赤面しながら布団で首辺りまで隠している。
「魅ぃ、帰り支度は出来てますか?」
私の突然の質問に驚いたのか、魅音は小さく頷いた。
「魅ぃ、今日は変なことをしてごめんなさいです。」
魅音の顔がどんどん赤くなる。
「あ、ああ!うん!ぜ、全然大丈夫!」
魅音の精一杯の受け答えが嬉しかった。
さて、本当のことを話さなければ。
「魅ぃ、詩ぃのこと好きですか?」
魅音は本当のことをいっていいのか少し躊躇っているようだった。
「大丈夫なのです。ボクは何も期待してませんですから、本当のことを言ってくれていいですよ。」
少し寂しい気もするけれど魅音は本当は詩音が大好きなのだから。
「…好き、だよ。でも詩音には沙都子がいる。私がいつまでも甘えてちゃいけないんだよ。」
やっぱり詩音の本当の気持ちは分かってないのだろうか。
一瞬、分かってないならそのままにしておこうなんて考えが浮かんだ。
でもそれじゃあ魅音がかわいそすぎる。
やっぱり、私は魅音が好きなんだと自覚した。
「違うのです。」
「……え?」
「違うのですよ、魅ぃ。」
「…………………」
魅音はなんのことだか分からないようで眉を寄せている。
「詩ぃは魅ぃが大好きなのです。本当の本当に大好きなのですよ。」
私が真剣な表情だったからか、魅音は茶化さないで聞いてくれた。
「詩ぃは沙都子と遊んでいる時、魅ぃのお話ばかりしているそうなのです。」
「私の、話?」
「はい。詩ぃは魅ぃのことを本当に大切にしているって沙都子がよく言いますです。この間は一緒にケーキを食べたとか、本家に一緒に泊まったとか、たくさんたくさん魅ぃのことを話すそうなのです。」
「…………………」
魅音は疑わないできちんと聞いてくれている。
「そしてこないだ詩ぃがボクのお家に来たとき、沙都子にこう言いましたです。―魅音は大事なたった一人の姉。沙都子は私の妹だけど、魅音を越すことは出来ないって。そう言ったのです。」
「……………………」
魅音は何も言わずに泣いていた。きっと嬉し泣きだろう。
「だから、魅ぃは詩ぃにたくさんたくさん甘えるといいのですよ。」
魅音は布団に顔をうずめながら泣いていた。
「さぁ、魅ぃ。お着替えして早く帰らないとお魎に怒られますよ。」
魅音は泣き笑いしながら布団から出てきた。
「梨花ちゃん、今日はありがとね。」
帰り支度を済ませた魅音は私にぺこりと頭を下げた。
「魅ぃも今日はありがとうなのです。」
「梨花ちゃんのおかげで元気が出たよ!」
そう言うと魅音は私の頭を撫でた。
魅音に撫でられるなんて思わなかったから、少し恥ずかしくなって
「詩ぃが意地悪したらボクのところでにゃーにゃーしましょうです。にぱー☆」
なんていつものように茶化してしまった。
素直に受け入れられない自分がなんだかかわいかった。
「あはは。それじゃ!明日学校でね!」
魅音はウィンクして手を振ると走って帰ってしまった。
魅音はどうか分からないけど今日の日は多分一番の思い出になるに違いない。
魅音が詩音を好きなことは分かっている。ずっと片思いだってことも知っている。
でもいいんだ。魅音が幸せになるのなら私はこれ以上何も望まない。
明日は学校で魅音とたくさん話そう。部活も楽しむ。
明日からは友達として魅音と一緒にいよう。
お し ま い。
2023-08-23T13:29:03+09:00
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飴渡し編
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/102.html
それは、存在しない世界。
或いは、存在しても書き留められる事のなかった世界。
それは穏やかで、ルールは閉じ込めれていて、だから何も起こらなくて、誰も涙を流さない世界。
「悟史君、ホワイトデーって知ってますか?」
「何だいそれ」
「何年か前から出来たらしいですよ、バレンタインデーの対になる日」
「対…?」
「バレンタインデーに女の子がチョコをあげるでしょう?そのお返しを一ヵ月後の3月14日に男の子があげるんです」
「へぇ、じゃあ僕が詩音に何かあげるんだね」
「そうなんです。期待してますよー?」
「ええっ! そ、そうだなあ…むぅ…」
本気にして眉を顰める悟史君が愛おしい。
「うそうそ、あんまり気負わないでください。一緒にいられるだけで嬉しいんですから」
「むぅ…」
先月のバレンタインデーに私は悟史君に輸入物のチョコレートをあげた。
私のお小遣いはそんなに多くはないから、6粒入りのそれでも大奮発だった。
「あのチョコ、美味しかったですか?」
「美味しかったよ!中がとろーっとしてた…」
幾つかは沙都子の口に入ったのかなと苦々しい邪推をしたが、その無邪気に細められた目を見ていると
悟史君が私のプレゼントに喜んでくれた事を純粋に喜ぶ余裕が生まれてきた。
悟史君の唇が好きだ。ピンク色で女の子みたいにぷるんとしていて、笑うとぴんと張る。
「詩音は何がほしい?」
一瞬思いを巡らす。
可愛い人形? ふわふわのぬいぐるみ? ちらちら光るアクセサリー? 抱えきれない程の花束?
「だーから、何にもいらないんです。悟史君と一緒にいられれば良いんです。」
私には予感があった。いや、記憶と言った方が正しいかも知れない。
悟史君が私に笑いかけてくれなくなる記憶。私の頭を撫でてくれなくなる記憶。
だからその言葉は真実だった。
悟史君は、むぅ、と呟いてまた喫茶店の大きな窓の外に目をやる。
-------------------------
「お姉だけですって、そんなのお願いするの」
『そっかなー? 普通なんじゃないの、若い二人だったら…」』
電話の向こうのお姉はうひゃひゃひゃと少し下品に笑った。わざと。
『でもさ、何かくれっつったって欲しいモノってそれ以外ないんだよねー』
溜息を吐きながら圭ちゃんを少しだけ不憫に思う。
「お姉はガンガン押せるタイプじゃないと思ってましたが」
『そりゃ園崎家次期頭首、此処一番には押さなきゃねえ』
この年頃の女の子のお喋りは取り留めなく続く。殊それが恋人の事ともなれば尚更だ。
『ま、とにかく詩音も私みたいに押してみるこったねー!」』
「はいはい、参考にさせていただきます」
いつものように挨拶して受話器を置く。
葛西が用意してくれた食事をつつきながらも悟史君にどう言おうか悩んでいた。
気のない様子で切ったハンバーグを転がす私を葛西が心配そうに覗き込んでいる。
私の不安を消す方法。叔母の所に厄介になっている悟史君の負担にならない私へのプレゼント。
「一緒にいるだけ」と呟いてみる。限りなく正答に近い回答だと確信する。
ご飯をよそっていた葛西が怪訝そうに私の方を振り返るので、私はにっこり笑って、
このハンバーグ美味しい! と言ってあげる。
--------------------
「私ね、悟史君がいいです」
「…ふぇ?」
「だから、ホワイトデー。悟史君がいい」
悟史君の目はよくわからないと言っている。これ以上直接的に言いたくない。
「あと一週間しかないでしょう? 私からのリクエストです。」
「う…うん…」
悟史君のシャツの袖を軽くつまんで、少しだけ手を触れさせる。
色とりどりのショーウィンドウを眺めるふりをして、私は鏡越しの悟史君の顔を見る。
ぽんやりと視線の定まらない顔。半歩後ろを歩く私から見える悟史君の耳は赤かった。
その赤さがたまらなく愛おしくて、指先を悟史君の手の平に回してみる。
包んでくれた悟史君の手はとても温かかった。
「じゃあ、また」
「はい」
悟史君の自転車のブレーキが軋んだ。
「次はいつかな」
「一週間後に」
「…むぅ、遠いなあ」
「私も早く会いたいです」
「……むぅ。僕も。」
「きっと一週間なんてすぐですよ。じゃあ」
「詩音、またね。」
自転車に腰を入れてこぎ始める悟史君を見送る。
夕日が照って悟史君のシャツを染めていた。
悟史君が毎日雛見沢に帰らなくて済むようになればいいのに。
そうしたら夕暮れが大好きになるのに。
2023-08-16T11:49:17+09:00
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永遠の、恋人
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/279.html
目が覚めて、告げられた事実は信じがたいものであった。
「赤坂さん、落ち着いて、聞いて下さい。奥さんが、赤坂雪絵さんがお亡くなりになりました・・・」
大石が告げた一言を理解するのに、赤坂衛は数秒を要した。
「タイルが剥離していたらしく、階段から落ちたそうです」
雪絵が、死んだ。
何かの悪い冗談だ。
知り合ったばかりだがこの大石という老獪な刑事には、時折真剣な眼差しで冗談を飛ばし、相手の反応を楽しむという悪い癖がある。
「すぐに手術が施されたそうですが、手遅れだったそうです」
本当に、人が悪い。
だが、もう少しだろう。あの『んっふっふ~。』という、余裕たっぷりの表情を見せて、自分の愕然とした表情を笑うその瞬間は・・・。
「母子共に、お亡くなりになられたと。お義父様からのお電話でした・・・!」
残念の呻きを上げて、大石は沈黙した。
それは、自分に真実を告げる残酷な沈黙だった。
「嘘だあああああぁぁぁぁぁぁっ!」
赤坂は叫んだ。叫んで大石の肩をむんずと掴み、何度も揺すった。
「大石さん、冗談はよして下さいよ!確かに私はこの出張で、電話をすることを忘れていましたよ。雪絵に寂しい思いをさせているんじゃないかって思っていましたよ・・・」
苦悶の表情で、大石は目を閉じる。かける言葉が、見つからなかった。
「少しくらい、罰が当たってもいいと思っていました。雪絵にしばらく冷たくされてもいいと」
最後には大石にすがりつくような格好になって、赤坂はその場に膝をついた。
「それでも、こんな、こんな・・・。うわあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
犬養少年の救出作戦が終わった直後の入江診療所の病室で、赤坂は泣いた。
その姿を、大石は黙って見守ることしかできなかった。
異変が起こったのは、赤坂の泣き声が止んでからしばらくのことだった。
赤坂の表情が一変し、しきりに喉を掻き毟り始めたのである。
「あ、赤坂さん・・・?」
この時、赤坂は自分の体に、突如蛆虫か何かの生き物が、現れたような感触を覚えた。
首が、痒くて痒くて仕方がない。
まるで、血管の中を蠢いて、自分の体を侵食しているようだ!
「うお、うおおおぉぉぉぉっっ!!」
突然、大石は物凄い力で跳ね飛ばされた。病室の壁にぶつかり、激しい音が起こる。
「赤坂さん!どうしたのですか!?」
見ると、赤坂は凄まじい形相をしていた。自分を見る瞳には敵意しか宿っていない。
激しく肩で息をして、何事かを呟いている。
雪絵、雪絵、ユキエ、ユキエ、ユキエユキエ雪絵ゆきえゆきえゆきえゆっゆええうえhyd
「赤坂さん、しっかりして下さい!お気持ちはわかりますが・・・!」
「うるさい!貴様らが雪絵を殺したんだろう!!私が公安のスパイだと知って、見せしめのために!」
傍目からも、赤坂は正気を失っていた。
血走った目は焦点が定まらず、異様なまでの発汗が服を水浸しにしている。
「ぐげっ、げげっ・・・!」
赤坂が苦しそうに喉を押さえた。
「貴様らぁ、私にまで毒を・・・。治療と称して寄生虫でも入れたかぁ!!」
どうしたというのだ、この変貌は?
目の前の出来事を、大石は理解できないでいた。切れ者の赤坂が、こんな世迷いごとを本気で口走っている。
形容するならば、豹変。別の人間が乗り移ったような気がしてならない。
「痒い、痒い痒い痒い痒いカユイかゆい!!」
爪をたてて、赤坂は自分の首筋を掻き毟り始めた。一気に、赤坂の喉が朱に染まる。
「っ!赤坂さん!!」
飛び掛ろうとした大石だったが、先ほど跳ね飛ばされた記憶が脳裏をよぎり、一瞬の躊躇があった。
「あああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
その刹那に首筋から鮮血が迸った。
時代劇で時折みる首筋からの出血。いわゆる頚動脈が切り裂かれたのだ。
「しまった!」
赤坂の体が崩れ落ちる。大石は駆け寄りその体を抱きかかえたが、急速に瞳からは輝きが失われつつあった。
「畜生っ!誰か、誰かきてくれ!」
病院内の誰かに聞こえるよう、鮮血の中で大石は叫んだ。
上着を使って必死に首筋を押さえるが、出血は止まらない。刑事としての直感は、間に合わないと告げていた。
「これも、これも『オヤシロさまの祟り』だというのか!畜生、畜生おぉーっ!」
もう一度赤坂を見る。間近に迫った死の床で、口だけがか細く、同じ言葉を繰り返していた。
「ごめん、雪絵。ごめん、雪絵。ごめん、雪絵・・・」
最後はもはや聞き取れなくなっていたが、それでも赤坂は最愛の妻を呼び続けていた。
遠くから足音が聞こえる。入江診療所のスタッフのものであろう。
夢ならば、覚めてくれ。
悪夢ではない、現実なのだと知っているからこそ、大石は思わずにはいられなかった。
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「ごめん、雪絵っ!!」
不意に目が覚めた。とても嫌な夢だった。
「どうしたんです?衛さん」
心配そうな顔をして雪絵が自分の顔を覗き込む。赤坂は呼吸を落ち着けて、周りを見てみた。
見慣れた台所とリビング、自分が寝転がっているのは、結納の時に購入したソファーだった。
「うなされていましたよ。そんなところで休むから・・・」
思い出した。夕食の後、子供たちと風呂に入り、一緒にアニメを見ていたら、いつの間にか眠っていたのだ。
「ごめん。気づかなかった。」
「最近は遅かったから、疲れが溜まっていたのでしょうね」
雛見沢での戦いから三ヶ月。赤坂は別件の捜査を担当していた。
「東京」の調査に勝るとも劣らない厄介な事件であり、帰宅が遅れる日々が続いている。
今日は久しぶりの休日であったため、知らず知らず体が休みを欲していたようだった。
「ご自愛、して下さいね。衛さんは無理をするから」
「うん」
答えて、自分の体に毛布が掛けられていることに気づく。
「ありがとう」
学生時代から変わらぬさりげない心遣い。雪絵に惚れた一番の理由だった。
雪絵は微笑んで台所に戻っていった。風呂上りなのか、桃色のパジャマに白のカーディガンを羽織って、スリッパを履いている。
「子供たちは?」
時計を見ると、夜の十時を少し回っている。もう2階の寝室で眠っているころだろうか。
「二人とも『お父さんと一緒にねる』って言っていたけれど、先に寝せました。今日は遊んだから、すぐに二人とも眠りましたよ」
食器を洗う音と共に、雪絵が答える。
今日は子供たちにせがまれて、今年の4月、千葉の浦安に開園したテーマパークに行ったのだった。
娘は人気のキャラクターのぬいぐるみを買ってもらい喜んでいたが、息子の方はマスコットキャラの気ぐるみに抱っこしてもらったものの、泣き出してしまい、なだめるのに大変だった。
さすがに、逃げ出してしまうとは思わなかったが・・・。
しかし、朝食の時以外は寝顔しか見ることのできない子供たちの様々な顔を見ることができて、本当に有意義な休日だった。
「はい、どうぞ」
気がつくと、お盆に湯飲みを載せて、雪絵が傍らに座っていた。
「うん。ありがとう」
ソファーから身を起こし、雪絵の隣に座る。
湯飲みを受け取り、ちゃぶ台のようなテーブルに置くと、雪絵もお盆を置き、湯飲みを取った。
「君は、疲れなかったかい?」
「ちょっとだけ。でも、前に比べたらあまり疲れなくなりました」
雪絵は生まれつき体が弱い。正直、一昔であれば出産には耐えられない体だったらしい。
それが二人も子宝に恵まれているのだから、近代医学の進歩には驚かされる。
「前に言ってた雛見沢の先生から送られてくる薬のおかげでしょうか、最近ではすごく調子がいいんですよ」
あの事件以来、赤坂家には入江診療所から雪絵のためにアンプルが送られてくる。
自分を救ってくれた恩返しをしたいという入江が雪絵の体質を聞き、症候群に対する試薬の過程で開発した新薬を送ってくれているのだ。
無論、赤坂は恐縮したのだが、『あのままでは、私は消されていました。命の恩人に対するお礼としては、物足りないくらいです』という入江によって、毎週律儀に送られてくるのである。
「本当に、雛見沢の人たちには救われてばかりですね」
湯飲みをおいて、雪絵が呟く。
「うん。本当に感謝してもしきれないよ」
赤坂も雪絵の言葉に頷いた。
「梨花ちゃんからの忠告がなかったら、君を永遠に失っていたのだからね」
五年前の誘拐事件。出張先の雛見沢で出会った少女古手梨花。
愛らしい少女としての姿と、オヤシロさまの巫女としての超然とした姿をもつその少女から、赤坂は「・・・東京へ帰れ」との警告を受けた。
ただならぬ雰囲気に感じるもののあった赤坂は、出産のため入院をしていた雪絵に用心するよう電話を架けたのである。
その直後、タイルの剥離によって作業員が病院の階段で重症を負ったという事故が起こった。
件の場所は、赤坂の出張時に毎日病院の屋上へ登っていた、雪絵の通り道になっていたのである。
帰京した赤坂は梨花の予言に驚くと共に感謝し、そして思い出した。
繰り返される世界で起こった雪絵の死、そして梨花と雛見沢の死。
数え切れない世界で手遅れになり、後悔することしかできなかった哀れな自分のことを。
正に、奇跡。
本来ありえない並行世界での記憶を継承した赤坂は自らを鍛え、運命の時に備えた。
そして梨花たちと共に、運命に打ち勝った。
「・・・どうしたんですか」
気がつくと、赤坂は雪絵に口付けていた。
驚いたものの、雪絵は咎めることなく、優しい瞳で赤坂を見つめている。
「ごめん。君が、愛しいんだ」
もう一度、唇を重ねる。
雪絵のいない風景を、赤坂は何度も体験した。
絶望によりL5を発症して自らの喉を掻き毟って息絶えたことも、残された娘と思い出を胸に生きていくこともあった。
百年の魔女である梨花は何度も同じ時を繰り返してきたが、自分は梨花が繰り返した世界分、その後の時間を生きていたのだ。
ある時は元号が2つ変わるまで生きた。ある時は雪絵の死に絶望して自ら命を絶った。
警察を辞めて、雛見沢の近くに移り住んだ人生もあった。
反対に、雪絵が生きてそばにいる世界もあったが、それはごく少数なものだったはずである。
「君がいない世界を知っているから、君のいる素晴らしさがわかるんだ。それは本当に素晴らしくて、言葉にできないくらいに大切なんだ」
赤坂の口付けは顔中に及んだ。頬にも、閉じられた瞼にも、お下げに結ばれた長い髪にも。
その一つ一つを雪絵は愛しそうな顔で受けていた。
「衛さん・・・」
それは百年を超える果てしなく長い恋心。
その言葉には後悔と苦渋を知るものしか出せない重みがあった。
「雪絵。君を、愛している・・・」
ソファーの上に寝転んだ雪絵に、赤坂は再び口付けの雨を降らせた。
目を閉じてされるがままにされている雪絵は、消して自分から求めようとしない。貞淑という言葉が嫌味でなく当てはまる女性だった。
結婚して少なくない年月がたっているが、雪絵のこの性格は新婚時代から全く変わらない。だから、赤坂も雪絵を抱く時は常に初夜を迎える気分だった。
ああ、自分は今この瞬間にも、雪絵に恋しているのだな。
今更ながら赤坂は思った。
羽織っていたカーディガンを脱がして、パジャマのボタンに手をかける。
一つ、一つゆっくりと外して上着を脱がせると、白い無地のブラジャーに包まれた胸元が露になった。
その胸元に口付けて左手で背中のホックを外しにかかる。同時に左手でパジャマのズボンをずり下げると、同じく白色のショーツが視界に入る。
「衛さん、恥ずかしい・・・」
レースの下着だけになった雪絵が顔を真っ赤にして呟く。何度同じことをされても、この反応は初々しい。
「脱ごうか」
一度体を起こして自分もパジャマを脱ぐ。
空手で鍛えた筋肉質の肉体が照明の光で照らされると、雪絵の顔がますます赤くなる。
下着まで脱ぐと、同じく一糸纏わぬ姿になった雪絵が、目を伏せて胸元と股を隠していた。
自身が言っていたことだが、虚弱体質ということもあり、雪絵の体は平均な女性のそれと比べると、見劣りするらしい。
しかし、赤坂にはその小ぶりの胸も、小さめの臀部も、十分に魅力的だった。
第一、赤坂は雪絵以外の女性は知らないし、知るつもりもない。
「綺麗だよ。とても」
おとがいを持ち上げて口付けをする。
長く、やや強めに唇を吸い。雪絵の体を抱きしめた。
「衛さん、嬉しいです・・・」
白い肌に唇を滑らせ、雪絵の甘い香りと、味を楽しむ。
右手で乳房を揉み、左手で太腿を撫で擦る。だんだんと頭を下げていき、胸の谷間からお腹、へその辺りまで下を伸ばす。
くすぐったいのか、雪絵が艶のある息を吐いて、身を捩じらせる。
「あ、そ、そこは、きたな・・・。ああっ!」
舌が恥毛をまさぐり、雪絵の女性の部分を転がす。急激な快感に戸惑い、雪絵が体を振るわせた。
両手で足の付け根を支え、秘裂に口付ける。子供を二人も産んでいるとはとても思えない、綺麗な桜色だった。
「くああっ、ふぅ、はあああぁぁっ!」
指で開き、舌を深くまで差し込む。脳髄が溶けてしまうかのような女性の匂いと、ぬめりを帯びた液が、赤坂の鼻腔をくすぐる。
「ああ、衛さん!んんっ、んっ、んんんんっ!」
かき回すように舌を動かすと、雪絵の声の艶が増した。いやいやをするように顔を振り、両手で顔を隠しているが、こみ上げる快感に抗がうことができないようだった。
「っ!そこは、嫌、きたない・・・!」
赤坂の指が、今度は菊座に伸びた。軽く入口を擦り、徐々に進入していく。
「ああっ、衛さん、衛さんっ!んんっ、はあっ!」
羞恥と快楽の狭間で、雪絵は達しつつあった。その様子を察知した赤坂が、一番敏感な部分を甘噛みする。
「んんっ、ん。んんんんんんっっっっー!!」
最後まで唇を閉じたまま、雪絵は達した。緊張していた体から力が抜け、瞳が焦点を失う。
白い、白磁のような肌は桜色に染まり、胸が空気を求めて激しく動いていた。
「大丈夫・・・かい?」
赤坂が上体を起こして雪絵を気遣う。
しばらく惚けていたものの、雪絵は息を落ち着かせ
「はい。今度は、衛さんが・・・」
と、微笑んだ。
「いくよ。雪絵」
十分に潤った雪絵の秘裂に、赤坂は猛った自分の分身を当てた。
雪絵が無言で頷いたのを確認すると、赤坂はゆっくりと雪絵の中に体を進めた。
「ああ、衛さんが、中に・・・」
挿入の感触に、雪絵は女性としての悦びを感じていた。
愛しい人の全てを受け入れ、自らの体で包み込む・・・。これほどの悦びが他にあるのだろうか。
「雪絵、雪絵・・・」
最初は優しく、そして徐々に律動が強さを増していく。
交わる部分がぬめりを帯びて、粘着質な音が室内を包んだ。
「衛さん、衛さんっ・・・!」
二人は絶頂を求めて手を握り合った。
お互いを見つめる、熱を帯びた視線が絡み合い、愛しさがこみ上げる。
どちらからともなく、唇を合わせる。握り締めあう手が不規則に、いかに相手を悦ばせるのかを求めて動く。
赤坂の律動は、強く、深いものになっていた。雪絵の肉体全てを味わうかのように奥底まで貫き、求める。
雪絵もいつの間にか自分の腰を激しく動かしていた。肉欲に対する罪悪感と、愛するものの全てを欲する、女性としての原初の欲望。
「雪絵、雪絵、雪絵!!」
「衛さん、衛さん、まもるさんっ!」
「凄い・・・。雪絵が、絡みついて。このまま、ずっと・・・」
「私も、私もぉ・・・。衛さんと一緒に、一緒にぃ・・・」
二人を隔てるものはむしろ肉体ではないのかと思うくらい、二人は一つになることを欲した。
繋がっているこの時こそが、自分たち本来の姿ではないのかとも夢想する。
終わらせるためではなく、より深みを求めるための律動。それが永遠に続けられるというのならば、二人はそれを求めただろう。
「雪絵っ、もう、もうっ!」
「はい、このまま、私もおおぉっ!」
絶頂が近づき、赤坂が限界まで腰を叩き付けた。雪絵のお下げが上下に揺れ、胸元に落ちる。
「おお、おおおおおぉおおぉぉおおぉおぉぉぉ!!!」
「まもるさああああぁぁあぁぁぁぁん!!!」
白濁の液体が雪絵の奥底を目掛けて迸った。
凄まじい勢いで雪絵の肉体を満たし、残滓が結合の部分から噴き出す。
「まもる・・・さぁん・・・」
名残を惜しむかのような赤坂の口付け。雪絵は愛しい人の名を呟き、それに答えた。
-------------------------
・・・数年後。
正月の初詣が一段落した古手神社の社務所にて、二人の少女が会話をしていた。
二人とも体にしては少々大きめな巫女服に身を包み、やってきた年賀状に目を通している。
「梨花ぁ。何を読んでらっしゃいますのぉ?」
元気そうな八重歯の少女が、長い髪をした少女に声をかけた。
「みぃ、赤坂からの年賀状なのです。三日も送れてきやがったのです。」
「赤坂のおじさまからですの?今度はいつこちらに来ると?」
言葉は不満そうだが、長い髪の少女の顔は笑っていた。
「返上した正月休みが取れ次第来るらしいのです。にぱ~☆」
「??何か意味深な笑顔ですわね」
「奥さんが妊娠中なのだそうです。とても仲が良いのです。にぱ~☆」
(よかったわね、赤坂、でも・・・)
長い髪の少女は同じ差出人の名前の年賀状を取り出した。
そこには、ほとんど同じ文面が、毎年一人多い家族とともに書かれていた。
(やり過ぎって言葉を覚えたほうが良いわね・・・)
終わり
2023-08-16T11:39:53+09:00
1692153593
-
酒のつまみは沙都子
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/84.html
暑くて眠れない夜はワインが一番である。梨花はそっと寝床から起き上がって
秘蔵のワインを楽しむ。寝巻きは黒いワンピースのパジャマ。下はショーツ一枚。
後は何も着けていない。今日はうるさい羽入がどこかへ出かけていて居ない。
だから、たっぷりと楽しめる。
いつものようにオレンジジュースを入れる。けど、少なめ。代わりに醤油を
一滴たらり。隠し味だ。ワインの芳香を楽しみつつ杯を傾ける。のど越しととも
に頭の奥がクラリとする。胸も熱い。酔う感覚は嫌いではない。むしろ好き。
かつては忘れるために飲んだ。永遠に続く袋小路。永久に等しい時間をかけて
抜け出した。もはや惨劇は永劫の果てだ。今は全てを楽しむ。
もう一杯。今日はいつもより飲んでいる。明日、羽入に文句を言われるだろう。
だけど、気にしない。この高揚とした気分は悪くはない。 さらに一杯。少し
飲みすぎたか。頭の中がくらくらする。笑みがこぼれる。ふふふっ。どうせ明日は
休みだ。少しぐらい羽目を外してもいいだろう。
けど、こうなるとツマミが欲しいわね。
缶詰とかならいくつかある。でも、風情がない。かといって、何か作ると
なると沙都子が起きてしまう。どうしたものか。
そうだわ。沙都子をツマミにすればいいのよ。
いい考えだ。ああ、梨花は酔っている。顔はもう真っ赤だ。酒精をたっぷり混入
した息を吐くとふらりと沙都子の元に向かう。
沙都子は寝てる。半袖の若草色のパジャマ。だけど、暑いのかボタンを二つ
ほど外して胸元がきわどく見える。起伏はレナや魅音に比べれば平坦だが
梨花のように真っ平らではない。
「キスしましょ♪」
梨花は寝ている沙都子に屈んでキスをした。柔らかかった。
「んにゃ」
だけど、沙都子はうっとうしいといわんばかりに顔を振る。少し悲しい。
見ると寝汗がびっしょり。だからかな?
「みー。拭かないと風邪を引いてしまうのです」
にぱーと梨花は微笑むと自分の舌でぺろぺろと沙都子の顔についている汗を
舐めてあげた。はじめは額。次はりんごのようなほっぺ。鼻の頭やあごも忘れない。
「ううーん、ううーん」
だけど、沙都子顔をしかめている。ひたいにしわを作って梨花のぺろから
逃げようとする。
「みー、悲しいのです。沙都子はボクが嫌いなのですか」
と、なみだ目で梨花は見つめる。けど、本音は
──うふふ、嫌がる沙都子。可愛いわー。もっと、いじめてもいいよね。
ぞくぞくしていた。
そっと、タオルケットを取る。沙都子の首筋、耳たぶを舐める。ついでに
噛んでみる。
「ひゃうっ」
素っ頓狂な声を上げて、沙都子は起きた。
「なっ、ななななんですの、梨花? ひゃう」
すぐに覆いかぶさる梨花に気付き慌てふためく。梨花は何も気にせずに沙都子の
耳たぶを唇で愛撫する。
「みー、沙都子はボクのお酒のつまみなのです。おとなしく食べられるのです」
そう言って、首筋にキスをする。軽くかむ。
「ひゃわっ。ちょっと、梨花。寝ぼけるのもいい加減にしてくださいませ」
じたばたと沙都子が暴れ始める。手足を振り回して落ち着いてキスも出来ない。
「うるさい人ね。これでも飲んでおとなしくしなさい」
梨花はワインのビンをラッパのみすると直接、沙都子にキスをする。無理やり
唇をこじ開けてワインを流し込む。コクコクと沙都子は飲み干していく。のどから
ワインが通り過ぎるごとに沙都子の手足から力が抜け、目がとろんとなる。
「なっ、なんなんですの、これ?」
クラクラして思考が定まらない。
「みー、ワインなのです。ぼくのお気に入りなのです」
にぱーと笑う。
「わっ、ワイン? 私たちはまだ──子供でしてよ。お酒を飲むのは
……早すぎましてよ」
初めての酔いに何とか抵抗しようとするが、どうしてもグニャリとする。
「むー、沙都子は固いのです。もっと、柔軟になるのです。それに冒頭に
書いてあるのです。『このゲームには十八歳以下の登場人物は出てきて
おりません』だから、問題ないのです。ボク達の年齢はぼかしてあって誰にも
分からないようになっているのです」
なにやら、とんでもないことを言ってきた。
「そんなのどこにも書いてありませんでしてよー」
正論である。そんな煽り文句はこれっぽちもない。
「うるさい人ね。グダグダ言わずに溺れなさい」
梨花はキスをしながらワインを沙都子のパジャマに垂らす。ちょうど胸の
辺りだ。
「あう、冷たい!」
身をよじる。だが、鎖骨が出てますます扇情的に。梨花は舌なめずりして
「美味しそう、頂くわね」
といって、沙都子の胸に吸い付いた。
「あっ、ひゃう、ダメ、ダメですわ、梨花」
ワインを吸ったパジャマを胸ごとすする。ちょうど胸の先端部に吸い付く。
沙都子は身を捩じらせてビクンをうねる。でも、気にしない。そのままワイン
をすする。片方は吸い付き、もう片方は搾るために揉む。ドンドン息が荒く
なる。
「……だから、ダメ──ですわ」
酔う。沙都子は酒に酔う。溺れる。沙都子は梨花の愛撫に溺れる。息が乱れ、
胸の奥に何かが生まれる。
「乳首が立っているのです。沙都子はとっても感じやすいのです」
ニコニコと笑いながら梨花は言う。
「……どういう意味ですの?」
意味は分からない。ねんねの沙都子にはさっぱりだ。
「感度良好という事よ」
ふふっ、と笑って、梨花は沙都子の乳首を弾いた。甲高く鳴いて沙都子は
背を突っ張る。翻弄される。いつもの梨花に。見たこともない大人びた梨花に。
わけも分からず流される。
「むー、沙都子は大きくなったら胸がバインバインになると思うのです。
うらやましいのです」
ぷちぷちと沙都子のパジャマのボタンを外しながら梨花はぶつくさ言った。
パジャマの下は何も着ておらず、沙都子は上半身裸になる。
「さあ、もっと、味あわせて」
梨花はワインを沙都子の胸にかけると乳首に吸い付き、塗りこむように
胸を揉む。
「ひゃ、だっ、あはぁっ」
もはや、言葉にならない言葉で沙都子は反応する。そそり立つ乳首をちゅー
ちゅー吸われ、胸をグネグネもまれる。酒の酔いも手伝い、もはや体は言う事が
聞かない。
「沙都子だけ気持ちよくなってずるいのです。ぼくも気持ちよくして欲しいのです」
ショーツを脱ぎ、寝巻きのワンピースのすそを持ち上げて咥え、沙都子の頭に上で屈む。
「……えっ?」
もちろん、沙都子は意味が分からない。戸惑いながら見上げる。一緒に生活しているとはいえ、
梨花の秘所をまじまじと見たことはない。ひと筋の線が見える。毛も何もない。ただ……濡れている。
汗とは違う匂いを放ちながら濡れていた。一体、何をすればいいのだろうか。
「舐めなさい」
また、梨花の冷たい声だ。
「さっさと舐めてご奉仕しなさい」
恐る恐る口につけた。
「ひゃう」
ビクンッ、と梨花は跳ねた。慌てて、沙都子は口を離す。
「だ、大丈夫ですの、梨花?」
気遣う言葉に、梨花は声を震わせて、
「大丈夫なのです。もっと、もっと舐めて欲しいのです」
お尻を振って懇願した。沙都子はぴちゃりぴゃりと舐め始めた。
行儀悪く、犬が水を舐めるように一心不乱に。
「あぅ、はぅ、ひゃう。いいっ、そこがいいのです。あっあっあっ」
ひと舐めごとに反応する。沙都子の舌は決して上手いとはいえない。
ただ、目の前のものを舐めているだけだ。だか、そこがもどかしく、
予期せぬ快楽に翻弄される。
「……ドンドン濡れてきますわよ」
沙都子の驚いた声にも梨花は反応しない。ワンピースを掻き抱き、薄い胸を
無理やり掴んで揉む。ふくらみはないが乳首は自己主張してる。沙都子の舐めに
合わせて捻る。大きく呻く。
沙都子は呆然として見ている。梨花の乱れに息を呑む。
「沙都子にご褒美です」
うっすらと梨花は笑うと沙都子のパジャマのズボンに手をかけた。
「あっ、梨花?!」
するりと下着ごと抜く。わざわざクマさんパンツを広げて、
「濡れてるわよ。汗でもションベンでもないわね」
と、あの部分を口に咥えて言った
「ああっ、いや」
恥ずかしがる沙都子の腰を持ち上げて梨花は、
「さあ、味わわせてもらうわよ」
熱く濡れる沙都子の幼い秘裂に口をつけた。
「ひゃ、だめっ、だから──やめて……ふぅぅ、ひゃっ」
さらに翻弄される。どこで憶えたのか見事な舌戯で攻め立てる。
小さく隠れる芽もほじくりだして摘み、弾く。指と舌は絶え間なく
動いて攻め立てる。
「あぁ、もう、ダメ、ですわ、だから、ひゅうっ」
いじればいじるほど沙都子の幼い秘裂から蜜があふれ出る。梨花はワインの
ビンを掴むと傾けてワインをしたたり垂らす。
「つっ、冷たい!」
幼い秘裂に滴り落ちるワインと蜜をたっぷり指で混ぜてすする。
「ふふっ、極上のカクテルね」
ぺろりと舌を舐めて、梨花は笑った。
「さあ、もっと味あわせてもらうわよ」
淫らな酒宴はまだまだ続きそうだ。
---------------------------------
次の日、沙都子は頭が痛いと呻いていた。梨花もだ。
「あぅあぅ、だから、飲みすぎは良くないのです」
羽入の言葉に梨花は頭を抱えて、
「うるさいわね、反省してるわよ」
と、力なく抗議するだけだ。
幸いな事に沙都子にあの夜の記憶はさっぱりと無いようだ。これには
ほっと胸をなでおろす。
「酒に酔ったとはいえ、とんでもないことをしてしまったわ」
大切な沙都子にあんなことしてしまうなんて本当にどうかしている。
「まあ、とりあえず、今度、沙都子に好きなお菓子とか買ってあげないと
いけないかしらね」
しかし、梨花は気付いてなかった。沙都子の笑みに──
------------------------------
ふと、夜に梨花は目が覚めた。愕然とする。
「……体が動かない。手足が縛られている?」
一体誰が? すでに惨劇の日々は去った。誰も自分を※す者は居ないはず
なのに。
「をほほほほっ、どうやらお目覚めのようですわね」
沙都子が高笑いを上げている。手に何を持っている。
「──あの、沙都子?」
さすがの梨花も展開についていけない。
「うふふっ、昨夜は本当にありがとうございましたわ」
おっ、憶えてたー。
「ですから、今夜は私がたっぷりと梨花にお礼をする番ですわ」
ブゥーンと何か鈍い振動音が聞こえる。沙都子の手には電気あんま、
ピンクローター、バイブがうねうね動いていた。
「そ、それは一体何ー?!」
梨花の驚きに、
「をほほっ、これは羽入さんから借りたのですよ」
羽入?! こんの裏切りものー!
「さあ、きれいな声で鳴いてくださいませ」
そう言って、沙都子は梨花に覆い被った。
その日の夜の淫らな饗宴はいつまでも続いた。
2023-08-16T11:27:03+09:00
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夢月祭夜 レナルート
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/64.html
SIDE:圭一
明朝4:00に48時間作戦が開始される。
梨花ちゃんの命を狙う……いや、そうじゃない、雛見沢の命を狙っている鷹野さん達との戦いが始まる。
俺達は戦いに備えて、魅音の家に寝泊まりすることにした。
朝は早い。それまでに少しでも睡眠を取っておくというのが魅音の指示だった。
それは分かっている。……しかし、俺はなかなか寝付けないでいた。
時計の針は夜の11:00をまわったところ。
いつもならまだ起きている時間なのだから当然だといえば当然なのだろうが……。
畜生。最高のコンディションを整えなくちゃいけないってのに、こんなんじゃ明日になってみんなの足を引っ張りかねない。
寝返りを打って、目を開ける。
あれ? 障子の向こうに誰かいないか?
月明かりに照らされて、人影が映っている。
誰だろう……こんな時間にやってくるっていったら、それは――
1,レナかもしれない
2,魅音かもしれない
3,沙都子かもしれない
4,梨花ちゃんかもしれない
5,羽入かもしれない
==========================================
rァ レナかもしれない
俺以外にまだ眠れない奴がいるのかと思い。そっと布団から抜け出し、障子へと移動する。
「レナ? ……どうしたんだよ? こんな時間に」
戸を開けると、そこにはレナが立っていた。
「あ…………その。ゴメンね圭一君。起こしちゃった?」
「いや……別に構わないぜ? 俺は寝付けなかったから、まだ起きてた」
「そうだったの? 圭一君も眠れなかったんだ……」
そう言うとレナは照れくさそうに笑った。
「っていうことはレナもか? じゃあ、ひょっとしてみんなも……?」
「ううん。みんなはもう寝ちゃったよ。布団に入ってすぐだった。魅ぃちゃんと沙都子ちゃんなんて凄いいびきなんだよ?」
俺は苦笑した。なんとなく容易にその様子が想像できたからだ。
同時に、彼女らの強さを少し羨ましくも思った。
「……そりゃ確かに眠れないよな。それでレナは部屋を抜け出してきたっていう訳か」
レナは頷いた。
「出来たら圭一君とお話し出来ないかなってここまできたけど、よく考えたら圭一君だって休んでるんだから邪魔しちゃ悪いよねって……」
「仕方ないから部屋の外に突っ立ってたっていうわけか? なら、取り敢えず部屋に入れよ? いくら夏だからって、いつまでも夜風に当たっていると風邪引いちまうぞ? 魅音の言葉を忘れたのかよ?」
そう言うと、レナはくすくすと笑った。
「そうだね。……それじゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらうね」
レナが部屋に入って、俺は障子を閉めた。
二人して布団の上に座る。
でも話す切っ掛けが見付け出せなくて、俺達は互いに無言だった。
庭園に流れる水の音しか聞こえない静寂。
月明かりしかない暗がりで、レナがどんな顔をしているのかよく見えない。
でも、俺の隣にレナがいる。それだけで、なんだか少しほっとする。
「レナ。……話ってなんだよ?」
「ん? ……何だっけ。もう忘れちゃった」
「おいおい。なんだよそれは。……別にいいけどさ」
わしわしとレナの頭を撫でてやる。
「でも俺は、レナが来てくれてよかったと思う」
「え……?」
「……あっ」
慌てて口を押さえたがもう遅い。頭の中だけで言うつもりだった……かなり恥ずかしい台詞を、俺は既に口にしてしまっていた。畜生、俺の馬鹿、俺の馬鹿……。
きっと、この暗闇の中でも俺が顔を真っ赤にしているのはレナに丸見えだったと思う。
でも……そうだよな。ここまで言ってしまったんだから、もう隠す必要も無い。
「ホント言うとさ……俺、ずっと考え事してしまってて……それで眠れなかったんだ」
「…………うん」
「みんなと一緒なら絶対に勝てるって分かっているし信じてる。さっきみんなの前で言ったように燃えていて、興奮しているから寝付けないっていうのもある。
……けど、みんなと別れて一人っきりになると……不安も湧いてきてしまって……。男のくせに情けないって思うけどさ」
「……圭一君…………」
「怖いんだよ。レナも魅音も沙都子も梨花ちゃんも羽入も、みんな俺の大切な、かけがえのない仲間なんだ。誰一人だって欠けるのはイヤだ。……俺達部活メンバーがそんなことになるはずがないことは分かってる。……けれど…………」
そんな考えたくもないイメージが次から次へと湧いてきてしまう。
レナがいない世界。魅音がいない世界。沙都子が、梨花ちゃんがいない世界。羽入がいない世界。そんな世界は……駄目だ、想像しただけで涙が出てくる。何故だか分からないけど……どうしようもなくリアルにイメージ出来てしまう。
「…………レナ?」
いつの間にか、俺は俯いていて……レナが俺の両肩に手を置いていた。
「大丈夫だよ。……レナは死なない」
俺は顔を上げて、右手をレナの頬に添えた。
「ああ、分かってる。……レナは死なない」
何故なら、俺が絶対に守ってみせるからだ……。
「私もね。……圭一君と同じこと考えてた」
「レナ……?」
「私の大切な仲間達が……私の大好きな圭一君がもしもいなくなっちゃったらって……そしたら、胸が痛くて……」
そっ とレナは俺の右手を掴み……自分の胸に押し当てた。
「レナっ?」
「ほら……分かるでしょ? 私の胸もドキドキしてる。……そして私も、そんな風に悩んでいたのが私だけじゃないって知って、少しほっとしたの」
俺は静かに目をつむって、レナの鼓動に集中した。
レナの温かみ。レナが生きているという確かな証拠。
「どうしても眠れなくって……そうしたらどうしても圭一君と会いたくなって……」
俺は閉じていた目を開けた。
そして……何も考えないうちに、いつの間にかレナの顔へと自分の顔を寄せていた。
レナも……目を閉じていた。
俺は再び目を閉じて……レナと唇を重ねた。
互いに互いの唇を押し付け合い、存在を確認する。
どれくらい……ひょっとして一分ぐらいか? 長いキスをして、唇を離す。
右手の中のレナの鼓動は、より強く激しいものとなっていた。
俺の息も激しいものとなっていた。
プツリと上着のボタンを外す。ゆっくりと右手をずらし、レナのパジャマの中へと差し込んでいく。
レナは……抵抗しなかった。
レナの胸に直接触れる。そこは柔らかく、そして温かかった。優しく揉みしだくと、その分優しく手を押し返してきた。……そして、その乳首は固く尖っていた。
「んんっ はぁっ」
レナの甘い吐息。
レナは目を閉じたまま、俺の愛撫を黙って受けていて……ときおりそのまぶたがぴくぴくと震えていた。
ごくりっ
生唾を飲む。
俺の頭の中は、既に沸騰していた。
右手をレナの胸から離し、余った左手をレナへと伸ばすと、気配を感じたのかレナが目を開けた。
「……圭一君? …………きゃっ」
俺はレナの両肩を掴んで、力いっぱい引き寄せ……そして、布団へと押し倒した。
俺はレナの上で四つんばいになっていた。
はあ~っ はあ~っ はあ~っ はあ~っ
俺の息が荒い。レナの息も荒い。
二人の呼吸が、月明かりに照らされた部屋に響く。
そして、ただそうして見つめ合っていて……。
「…………いいよ。圭一君となら……」
その言葉を聞いた瞬間、俺はレナに覆い被さっていた。
夢中でレナの唇を貪る。レナもまた俺の首に腕をまわして、舌を絡めてくる。
左手をレナの胸の上に置いて、中指と人差し指の間で乳首を軽く押さえる。
右手をレナの下着の中に突っ込んで、柔らかい恥毛とその中にある秘部を撫で回す。そこは既に熱を帯びていて、仄かに潤っていた。
レナは軽く喘いで、俺の首から右腕を離し……俺のズボンの中へと手を入れた。俺の胸を撫でて……、その手は徐々に下半身へと移動していく。そして、するすると俺の下着の中にその手を入れて……俺のものに添えた。
互いに互いの性器を刺激し合う。
それは決して激しいものじゃないけれど、それでも俺のものはこれ以上ないほどに固くなっていった。
レナもまた同じらしい。レナの秘部の潤いもまた、俺の手の動きに応じて増していった。
俺はレナから唇を離し、上半身を起こした。
「…………圭一君?」
とろんとしたレナの瞳。
「レナ……脱がすぞ?」
そう言いつつも、レナの返事を聞く前に脱がしていく。
レナの秘部を覆うものが無くなると、そこから濃密に淫蕩な……俺の雄としての本能を刺激する匂いが立ちこめてくる。どこかすえたような、それでいて甘いようなレナの匂い。
俺は無言のまま、下着から自分のものを取り出した。
「レナ……もう、いいか?」
レナが俺を見つめ返す。その時間が、途方もなく長く感じる。
「うん。……来て、圭一君」
俺は頷くと、レナの秘部に俺のものをあてがった。亀頭にレナの愛液をまとわりつかせながら、膣道を探す。
「……はうっ」
レナが軽く身悶えする。この刺激で感じたらしい。俺も、正直言ってこれだけでイってしまいそうだった。
やがて亀頭の先が手で触っていたときと同じようにくぼんだ位置にくる。ほっそりとしたレナの入り口。
「レナ…………いくぞ?」
レナは何も言わず、ただ頷いた。
俺はレナの腰を掴んで、一気に自分のものをレナの中へと挿入した。
「んっ …………んんん~っ」
レナの処女膜を破り、その奥まで突き入れる。
結合部に愛液とは違う温かいものが流れた。
俺のものを押し出すように、レナの中は固くきつく締め上げてくる。
と、俺の下でレナが目を閉じて小刻みに震えている。
「レナ。大丈夫か?」
しかしレナは答えない。パジャマの袖を噛んで、黙って痛みに耐えている。
「レナ。……ごめん。無理ならすぐに抜くから」
畜生。何やっているんだ俺は……いくら頭に血が上っていたからって、これはないだろ。
「…………えっ?」
レナは俺の腰に両脚をまわして、首を横に振った。
「私は……大丈夫だから。痛いけど……もっと、圭一君を感じていたいの」
その上……ゆっくりと、レナは腰を上下した。
「レナ……」
「お願い。……圭一君が気持ちよくなってくれないと、私はヤダよ?」
レナは泣いていた。痛みよりも、俺との繋がりが無くなることを恐れて泣いていた。
俺の目からも、一筋の涙が流れた。レナのその想いが胸にいたいほど伝わったから。
「じゃあレナ。……俺、ゆっくり動くからな」
「うん」
俺がそう言うと、レナは嬉しそうに微笑んだ。
くちゅ くちゅ くちゅ
宣言通りに、ゆっくりとピストン運動を開始する。レナもまた、俺の腰に脚をまわしたまま、俺の腰の動きに応じて腰を振る。
くちゅ くちゅ くちゅ
その動きはとても遅いけれど、それでも互いの想いが伝わる、優しい営みだった。
互いが互いの温もりを伝え合い、互いを包み込みそして包まれる幸福感を味わう。
俺は文字通り身も心もレナと一つになっているということを実感していた。
「…………圭一君」
「なんだよ? レナ」
「あのね。……レナ、ちょっとだけ気持ちよくなってきた☆」
レナは幸せそうに呟いた。
「レナ……」
「何? 圭一君」
「俺も……レナの中、温かくて気持ちいいぜ」
そう言うとレナは、満面の笑顔を浮かべた。
「じゃあ、……もっと気持ちよくなろ?」
「ああ、そうだなっ」
もう少しだけ腰の動きを速くする。
レナの中を入り口からその奥まで満遍なく出し入れして、その奥を小突く。
俺が出し入れするたびに、レナは軽く呻いた。
「レナ?」
レナは再び袖を噛んでいた。
「……ゴメン。こうしてないと声が……出ちゃうの。……はうっ」
それは俺も同じだった。
レナの中にあるひだが締め付けて、俺の男性器にある性感帯のすべてをあますところなく、しかも休み無く刺激し続けているのだ。
何度となく俺も呻き声を漏らしていた。
でも、お互いに腰の動きを止めることが出来ない。快楽を貪ることを止められない。
あともう少し……あともう少しと、限界まで登り詰めていく。
「ごめん。レナ、俺……もうイク」
だめだ……もう腰が言うことを聞いてくれない。
レナもいつまでもしがみついて離れてくれない。
「私も……私ももうイっちゃうからっ……」
がくがくと腰が震える。ダメだ……もう、限界だ……。
「あっ ああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」
「うああああああああああああっ!!!!」
レナがイクのとほとんど同時に、俺はレナの中に精液を流し込んでいた。
どろどろの精液がレナの中を満たしていく。
レナは力無く大の字になったまま、それを受け止めていた。
俺はその様子を見ながら……いつのまにか自分から不安が消えていることを自覚した。
翌日。
「おっ持ち帰り~っ☆」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオンンッ!!
レナの萌える拳によって山狗が吹き飛ばされてくる。
そして、その落下地点には俺が一本足打法で待ち構えていた。
「うおおおおおっ! バスターホームランッ!!!」
カキイイイイイイイイイィィィィィィィンンッ!!!
寸分のタイミングのズレもなくジャストミートした山狗は再びレナの方向へと飛んでいき、挙げ句レナの頭上を飛び越えて落下していった。
「よっしゃあっ! 次行くぞレナあっ!」
「うん。ガンガン行くよ圭一君っ!」
威勢よくハイタッチを交わす俺とレナ。
結局あの後、後先考えずに汚してしまったシーツやパジャマやらを誤魔化すために色々と大変ではあったけれど……別れ際にレナともう一度キスをして、それぞれの部屋に戻ってからは、短い時間だったけれどよく眠れた。コンディションは最高だ。
「なんだか、今日の圭一さんとレナさんは見ていて震えが来ますわね。コンビネーションがもう芸術的でしてよ?」
「……まったくだね。おじさんちょっと嫉妬しちゃうよ」
指揮官としてコンビネーションには参加していない魅音が口を尖らせる。
「まったく、あの二人に何があったのやら…………。知ってる? 羽入?」
「さあ? 僕は何も知らないのですよ? きっと愛の力なのです。あぅあぅあぅあぅ☆」
そう、互いの絆をより深いものにした俺とレナのコンビはもはや無敵だった。レナと一緒なら怖いものなんかありはしない。俺達のいる部活メンバーに敗北なんてありはしない。
魅音から次の指令が下る。
どうやらまた俺達のコンビネーションに出番が来たらしい。
俺はレナと目を合わせて、一緒に次の標的へと駆け出した。
―レナEND―
2023-06-13T19:55:45+09:00
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