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発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針

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発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針

http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/1/si002.pdf
平成2年8月30日
原子力安全委員会決定一部改訂 平成13年3月29日 原子力安全委員会


Ⅰ.まえがき


本指針は、発電用軽水型原子炉(以下「軽水炉」という。)の設置許可申請(変更許可申請を含む。以下同じ。)に係る安全審査において、安全性確保の観点から設計の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的として定めたものである。

軽水炉の設置許可申請に係る安全審査において用いられる安全設計審査指針は、最初は昭和45年4月に、当時の原子力委員会が定めたものであり、その後昭和52年6月に、同じく当時の原子力委員会が、これを全面的に見直して改訂を行った。昭和52年の安全設計審査指針の改訂以来、10年以上が経過し、この間軽水炉の技術の改良及び進歩には著しいものがあった。また、この間に、米国で発生したTMI事故等、国内外に生じた様々な事象から得られた教訓も含めて、軽水炉に関する経験の蓄積も大きいものがあった。これらを踏まえ、従来の指針について全面的見直しを行い、指針の内容の一層の明確化及び体系化を図ったものである。

また、本指針の改訂とともに、原子炉施設の各種構築物、系統及び機器の安全機能の重要度についての判断のめやす及び本指針の適用方法について、新たに「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(以下「重要度分類指針」という。)を定めることとした。したがって、本指針の適用に当たっては、「重要度分類指針」も併せて参照すべきである。

Ⅱ.本指針の位置付けと適用範囲


本指針は、今日までの軽水炉に関する経験と最新の技術的知見に基づき、軽水炉の設置許可申請に係る安全審査に当たって確認すべき安全設計の基本方針について定めたものであって、原子炉施設の一般的な設計基準を指向したものではない。

安全審査においては、当該原子炉施設の安全設計が、少なくとも本指針の定める要求を十分に満足していることを確認する必要がある。ただし、安全設計の一部が本指針に適合しない場合であっても、それが技術的な改良、進歩等を反映したものであって、本指針を満足した場合と同様又はそれを上回る安全性が確保し得ると判断される場合は、これを排除するものではない。

本指針は、軽水炉施設を対象としているが、その他の原子炉施設の安全審査においても2参考となり得ると考える。

Ⅲ.用語の定義


本指針において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 「安全機能」とは、原子炉施設の安全性を確保するために必要な構築物、系統又は機器の有する機能であって、次に掲げるものに分類される。

  • 1) その喪失により、原子炉施設を異常状態に陥れ、もって一般公衆ないし従事者に過度の放射線被ばくを及ぼすおそれのあるもの。
  • 2) 原子炉施設の異常状態において、この拡大を防止し、又はこれを速やかに収束せしめ、もって一般公衆ないし従事者に及ぼすおそれのある過度の放射線被ばくを防止し、又は緩和するもの。

(2) 「安全機能の重要度」とは、原子炉施設の安全性確保の見地からの安全機能の重要度の度合いをいう。

(3) 「通常運転」とは、計画的に行われる起動、停止、出力運転、高温待機、燃料取替え等の原子炉施設の運転であって、その運転状態が所定の制限内にあるものをいう。

(4) 「異常状態」とは、通常運転を逸脱させるような、何らかの外乱が原子炉施設に加えられた状態であって、運転時の異常な過渡変化及び事故をいう。

(5) 「運転時の異常な過渡変化」とは、原子炉施設の寿命期間中に予想される機器の単一の故障若しくは誤動作又は運転員の単一の誤操作、及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって生ずる異常な状態をいう。

(6) 「事故」とは、「運転時の異常な過渡変化」を超える異常な状態であって、発生する頻度はまれであるが、原子炉施設の安全設計の観点から想定されるものをいう。

(7) 「原子炉格納容器バウンダリ」とは、原子炉格納容器設計用の想定事象に対して、圧力障壁となり、かつ、放射性物質の放散に対する障壁を形成するよう設計された範囲の施設をいう。

(8) 「原子炉冷却材圧力バウンダリ」とは、原子炉の通常運転時に、原子炉冷却材(PWRにおいては1次冷却材)を内包して原子炉と同じ圧力条件となり、異常状態において圧力障壁を形成するものであって、それが破壊すると原子炉冷却材喪失となる範囲の施設をいう。

(9) 「原子炉冷却材系」とは、原子炉の通常運転時に炉心を直接冷却する原子炉冷却材の系統(PWRにおいては1次冷却系、BWRにおいては原子炉冷却材再循環系、主蒸気系及び給水系)をいう。

(10) 「原子炉冷却系」とは、原子炉の通常運転時及び異常状態において、原子炉から熱を除去する系統(原子炉冷却材系、残留熱を除去する系統、非常用炉心冷却系、2次冷却系(PWRの場合)、最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統等)をいう。

(11) 「原子炉停止系」とは、臨界又は臨界超過の状態から原子炉に負の反応度を投入することにより、原子炉を臨界未満にし、高温停止から低温停止に至る反応度の変化を補償し、かつ、臨界未満を維持するための機能を備えるよう設計された設備をいう。

(12) 「反応度制御系」とは、原子炉の反応度を制御することにより、原子炉の出力、燃焼、核分裂生成物等の変化に伴う反応度変化を調整するよう設計された設備をいう。

(13) 「安全保護系」とは、原子炉施設の異常状態を検知し、必要な場合、原子炉停止系、工学的安全施設等の作動を直接開始させるよう設計された設備をいう。

(14) 「工学的安全施設」とは、原子炉施設の破損、故障等に起因して、原子炉内の燃料の破損等による多量の放射性物質の放散の可能性がある場合に、これを抑制又は防止するための機能を備えるよう設計された施設をいう。

(15) 「単一故障」とは、単一の原因によって一つの機器が所定の安全機能を失うことをいい、従属要因に基づく多重故障を含む。

(16) 「動的機器」とは、外部入力によって能動的に所定の機能を果たす機器をいう。

(17) 「多重性」とは、同一の機能を有する同一の性質の系統又は機器が二つ以上あることをいう。

(18) 「多様性」とは、同一の機能を有する異なる性質の系統又は機器が二つ以上あることをいう。

(19) 「独立性」とは、二つ以上の系統又は機器が設計上考慮する環境条件及び運転状態において、共通要因又は従属要因によって、同時にその機能が阻害されないことをいう。

(20) 「燃料の許容設計限界」とは、原子炉の設計と関連して、燃料の損傷が安全上許容される程度であり、かつ、継続して原子炉の運転をすることができる限界をいう。

Ⅳ.原子炉施設全般指針


指針1.準拠規格及び基準


安全機能を有する構築物、系統及び機器は、設計、材料の選定、製作及び検査について、それらが果たすべき安全機能の重要度を考慮して適切と認められる規格及び基準によるものであること。

指針2.自然現象に対する設計上の考慮


1. 安全機能を有する構築物、系統及び機器は、その安全機能の重要度及び地震によって機能の喪失を起こした場合の安全上の影響を考慮して、耐震設計上の区分がなされるとともに、適切と考えられる設計用地震力に十分耐えられる設計であること。

2. 安全機能を有する構築物、系統及び機器は、地震以外の想定される自然現象によって原子炉施設の安全性が損なわれない設計であること。重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器は、予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件、又は自然力に事故荷重を適切に組み合わせた場合を考慮した設計であること。

指針3.外部人為事象に対する設計上の考慮


1. 安全機能を有する構築物、系統及び機器は、想定される外部人為事象によって、原子炉施設の安全性を損なうことのない設計であること。

2. 原子炉施設は、安全機能を有する構築物、系統及び機器に対する第三者の不法な接近等に対し、これを防御するため、適切な措置を講じた設計であること。

指針4.内部発生飛来物に対する設計上の考慮


安全機能を有する構築物、系統及び機器は、原子炉施設内部で発生が想定される飛来物に対し、原子炉施設の安全性を損なうことのない設計であること。

指針5.火災に対する設計上の考慮


原子炉施設は、火災発生防止、火災検知及び消火並びに火災の影響の軽減の3方策を適切に組み合わせて、火災により原子炉施設の安全性を損なうことのない設計であること。

指針6.環境条件に対する設計上の考慮


安全機能を有する構築物、系統及び機器は、その安全機能が期待されているすべての環境条件に適合できる設計であること。

指針7.共用に関する設計上の考慮


安全機能を有する構築物、系統及び機器が2基以上の原子炉施設間で共用される場合には、原子炉の安全性を損なうことのない設計であること。

指針8.運転員操作に対する設計上の考慮


原子炉施設は、運転員の誤操作を防止するための適切な措置を講じた設計であること。

指針9.信頼性に関する設計上の考慮


1. 安全機能を有する構築物、系統及び機器は、その安全機能の重要度に応じて、十分に高い信頼性を確保し、かつ、維持し得る設計であること。

2. 重要度の特に高い安全機能を有する系統については、その構造、動作原理、果たすべき安全機能の性質等を考慮して、多重性又は多様性及び独立性を備えた設計で5あること。

3. 前項の系統は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できる設計であること。

指針10.試験可能性に関する設計上の考慮


安全機能を有する構築物、系統及び機器は、それらの健全性及び能力を確認するために、その安全機能の重要度に応じ、適切な方法により、原子炉の運転中又は停止中に試験又は検査ができる設計であること。


Ⅴ.原子炉及び原子炉停止系


指針11.炉心設計


1. 炉心は、それに関連する原子炉冷却系、原子炉停止系、計測制御系及び安全保護系の機能とあいまって、通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において、燃料の許容設計限界を超えることのない設計であること。

2. 炉心を構成する燃料棒以外の構成要素及び原子炉圧力容器内で炉心近辺に位置する構成要素は、通常運転時及び異常状態において原子炉の安全停止及び炉心の冷却を確保し得る設計であること。

指針12.燃料設計


1. 燃料集合体は、原子炉内における使用期間中に生じ得る種々の因子を考慮しても、その健全性を失うことがない設計であること。

2. 燃料集合体は、輸送及び取扱い中に過度の変形を生じない設計であること。

指針13.原子炉の特性


炉心及びそれに関連する系統は、固有の出力抑制特性を有し、また、出力振動が生じてもそれを容易に制御できる設計であること。

指針14.反応度制御系


1. 反応度制御系は、通常運転時に生じることが予想される反応度変化を調整し、所要の運転状態に維持し得る設計であること。

2. 制御棒の最大反応度価値及び反応度添加率は、想定される反応度投入事象に対して原子炉冷却材圧力バウンダリを破損せず、また、炉心冷却を損なうような炉心、炉心支持構造物及び原子炉圧力容器内部構造物の破壊を生じない設計であること。

指針15.原子炉停止系の独立性及び試験可能性


原子炉停止系は、高温待機状態又は高温運転状態から、炉心を臨界未満にでき、かつ、高温状態で臨界未満を維持できる少なくとも二つの独立した系を有するとともに、試験可能性を備えた設計であること。

指針16.制御棒による原子炉の停止余裕


原子炉停止系のうち制御棒による系は、高温状態及び低温状態において、反応度価値の最も大きい制御棒1本が完全に炉心の外に引き抜かれ、挿入できないときでも、炉心を臨界未満にできる設計であること。

指針17.原子炉停止系の停止能力


1. 原子炉停止系に含まれる独立した系のうち少なくとも一つは、通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時において、燃料の許容設計限界を超えることなく、高温状態で炉心を臨界未満にでき、かつ、高温状態で臨界未満を維持できる設計であること。

2. 原子炉停止系に含まれる独立した系の少なくとも一つは、低温状態で炉心を臨界未満にでき、かつ、低温状態で臨界未満を維持できる設計であること。

指針18.原子炉停止系の事故時の能力


事故時において、原子炉停止系に含まれる独立した系の少なくとも一つは、炉心を臨界未満にでき、また、原子炉停止系に含まれる独立した系の少なくとも一つは、炉心を臨界未満に維持できる設計であること。


Ⅵ.原子炉冷却系


指針19.原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性


1. 原子炉冷却材圧力バウンダリは、通常運転時及び異常状態において、その健全性を確保できる設計であること。

2. 原子炉冷却材系に接続する配管系は、原則として隔離弁を設けた設計であること。

指針20.原子炉冷却材圧力バウンダリの破壊防止


原子炉冷却材圧力バウンダリは、通常運転時、保修時、試験時及び異常状態において、脆性的挙動を示さず、かつ、急速な伝播型破断を生じない設計であること。

指針21.原子炉冷却材圧力バウンダリの漏えい検出


原子炉冷却材圧力バウンダリから原子炉冷却材の漏えいがあった場合、その漏えいを速やかに、かつ、確実に検出できる設計であること。

指針22.原子炉冷却材圧力バウンダリの供用期間中の試験及び検査


原子炉冷却材圧力バウンダリは、その健全性を確認するために、原子炉の供用期間中に試験及び検査ができる設計であること。

指針23.原子炉冷却材補給系


原子炉冷却材補給系は、原子炉冷却材の小規模の漏えい等が生じた場合においても、原子炉冷却材の保有量を回復できるように、適切な流量で給水できる能力を有する設計であること。

指針24.残留熱を除去する系統


1. 残留熱を除去する系統は、原子炉の停止時に、燃料の許容設計限界及び原子炉冷却材圧力バウンダリの設計条件を超えないように、炉心からの核分裂生成物の崩壊熱及びその他の残留熱を除去できる機能を有する設計であること。

2. 残留熱を除去する系統は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できるように、多重性又は多様性及び独立性を適切に備え、かつ、試験可能性を備えた設計であること。

指針25.非常用炉心冷却系


1. 非常用炉心冷却系は、想定される配管破断等による原子炉冷却材喪失に対して、燃料の重大な損傷を防止でき、かつ、燃料被覆の金属と水との反応を十分小さな量に制限できる設計であること。

2. 非常用炉心冷却系は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できるように、多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であること。

3. 非常用炉心冷却系は、定期的に試験及び検査ができるとともに、その健全性及び多重性の維持を確認するため、独立に各系の試験及び検査ができる設計であること。

指針26.最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統


1. 最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統は、重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器において発生又は蓄積された熱を最終的な熱の逃がし場に輸送できる設計であること。

2. 最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できるように、多重性又は多様性及び独立性を適切に備え、かつ、試験可能性を備えた設計であること。

指針27.電源喪失に対する設計上の考慮


原子炉施設は、短時間の全交流動力電源喪失に対して、原子炉を安全に停止し、かつ、停止後の冷却を確保できる設計であること。


Ⅶ.原子炉格納容器


指針28.原子炉格納容器の機能


1. 原子炉格納容器は、原子炉格納容器設計用の想定事象に対し、その事象に起因する荷重(圧力、温度、動荷重)及び適切な地震荷重に耐え、かつ、適切に作動する隔離機能とあいまって所定の漏えい率を超えることがない設計であること。

2. 原子炉格納容器は、定期的に、所定の圧力により原子炉格納容器全体の漏えい率測定ができる設計であること。

3. 原子炉格納容器は、電線、配管等の貫通部及び出入口の重要な部分の漏えい試験ができる設計であること。

指針29.原子炉格納容器バウンダリの破壊防止


原子炉格納容器バウンダリは、通常運転時、保修時、試験時及び異常状態において、脆性的挙動を示さず、かつ、急速な伝播型破断を生じない設計であること。

指針30.原子炉格納容器の隔離機能


1. 原子炉格納容器壁を貫通する配管系は、原則として、原子炉格納容器隔離弁を設けた設計であること。

2. 主要な配管系に設ける原子炉格納容器隔離弁は、事故時に隔離機能の確保が必要となる事態に際して、原則として、自動的、かつ、確実に閉止される機能を有する設計であること。

指針31.原子炉格納容器隔離弁


1. 原子炉格納容器隔離弁は、実用上可能な限り原子炉格納容器に接近して設けた設計であること。

2. 原子炉格納容器隔離弁の設置は、次の設計であること。

  • (1) 原子炉格納容器の内側において開口しているか又は原子炉冷却材圧力バウンダリに連絡している配管系のうち、原子炉格納容器の外側で閉じていない配管系については、原則として原子炉格納容器の内側に1個及び外側に1個とすること。
  • (2) 前号1の配管系以外の配管系のうち、原子炉格納容器の内側又は外側において閉じている配管系については、原則として原子炉格納容器の外側に1個とすること。
  • (3) 原子炉格納容器隔離弁は、閉止後駆動動力源の喪失によっても隔離機能が喪失することがないこと。
  • (4) 原子炉格納容器隔離弁は、定期的な動作試験が可能であり、かつ、重要な弁については、漏えい試験ができること。

指針32.原子炉格納容器熱除去系


1. 原子炉格納容器熱除去系は、原子炉格納容器設計用の想定事象に対し、その事象に起因して放出されるエネルギーによって生じる原子炉格納容器内の圧力及び温度を低下させるために十分な機能を有する設計であること。

2. 原子炉格納容器熱除去系は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できるように、多重性又は多様性及び独立性を備え、かつ、試験可能性を備えた設計であること。

指針33.格納施設雰囲気を制御する系統


1. 格納施設雰囲気浄化系は、原子炉格納容器設計用の想定事象に対し、その事象に起因して環境に放出される放射性物質の濃度を減少させる機能を有する設計であること。

2. 可燃性ガス濃度制御系は、格納施設の健全性を維持するため、原子炉格納容器設計用の想定事象に対し、その事象に起因して原子炉格納容器内に存在する水素又は酸素の濃度を抑制することができる機能を有する設計であること。

3. 格納施設雰囲気を制御する系統は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できるように、多重性又は多様性及び独立性を備え、かつ、試験可能性を備えた設計であること。

Ⅷ.安全保護系


指針34.安全保護系の多重性


安全保護系は、その系統を構成する機器若しくはチャンネルに単一故障が起きた場合、又は使用状態からの単一の取り外しを行った場合においても、その安全保護機能を失わないように、多重性を備えた設計であること。

指針35.安全保護系の独立性


安全保護系は、通常運転時、保修時、試験時及び異常状態において、その安全保護機能を失わないように、その系統を構成するチャンネル相互を分離し、それぞれのチャンネル間の独立性を実用上可能な限り考慮した設計であること。

指針36.安全保護系の過渡時の機能


安全保護系は、運転時の異常な過渡変化時に、その異常な状態を検知し、原子炉停止系を含む適切な系統の作動を自動的に開始させ、燃料の許容設計限界を超えないように考慮した設計であること。

指針37.安全保護系の事故時の機能


安全保護系は、事故時に、その異常な状態を検知し、原子炉停止系及び必要な工学的安全施設の作動を自動的に開始させる設計であること。

指針38.安全保護系の故障時の機能


安全保護系は、駆動源の喪失、系統の遮断及びその他の不利な状況が生じた場合においても、最終的に原子炉施設が安全な状態に落ち着く設計であること。

指針39.安全保護系と計測制御系との分離


安全保護系は、計測制御系と部分的に共用する場合には、計測制御系の影響により安全保護系の機能を失わないように、計測制御系から機能的に分離された設計で10あること。

指針40.安全保護系の試験可能性


安全保護系は、原則として原子炉の運転中に、定期的に試験できるとともに、その健全性及び多重性の維持を確認するため、各チャンネルが独立に試験できる設計であること。


Ⅸ.制御室及び緊急時施設


指針41.制御室


制御室は、原子炉及び主要な関連施設の運転状況並びに主要パラメータが監視できるとともに、安全性を確保するために急速な手動操作を要する場合には、これを行うことができる設計であること。

指針42.制御室外からの原子炉停止機能


原子炉施設は、制御室外の適切な場所から原子炉を停止することができるように、次の機能を有する設計であること。

  • (1) 原子炉施設を安全な状態に維持するために、必要な計測制御を含め、原子炉の急速な高温停止ができること。
  • (2) 適切な手順を用いて原子炉を引き続き低温停止できること。

指針43.制御室の居住性に関する設計上の考慮


制御室は、火災に対する防護設計がなされ、さらに、事故時にも従事者が制御室に接近し、又はとどまり、事故対策操作を行うことが可能なように、遮へい設計がなされ、かつ、火災又は事故によって放出することがあり得る有毒ガス及び気体状放射性物質に対し、換気設計によって適切な防護がなされた設計であること。

指針44.原子力発電所緊急時対策所


原子炉施設は、事故時において必要な対策指令を発するための緊急時対策所が原子力発電所に設置可能な設計であること。

指針45.通信連絡設備に関する設計上の考慮


原子炉施設は、適切な警報系及び通信連絡設備を備え、事故時に原子力発電所内に居るすべての人に対し的確に指示ができるとともに、原子力発電所と所外必要箇所との通信連絡設備は、多重性又は多様性を備えた設計であること。

指針46.避難通路に関する設計上の考慮


原子炉施設は、通常の照明用電源喪失時においても機能する避難用の照明を設備し、単純、明確かつ永続的な標識を付けた安全避難通路を有する設計であること。


Ⅹ.計測制御系及び電気系統


指針47.計測制御系


1.計測制御系は、通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時における次の各号に掲げる事項を十分考慮した設計であること。

  • (1) 炉心、原子炉冷却材圧力バウンダリ、原子炉格納容器バウンダリ及びそれらに関連する系統の健全性を確保するために必要なパラメータは、適切な予想範囲に維持制御されること。
  • (2) 前号のパラメータについては、必要な対策が講じ得るように予想変動範囲内での監視が可能であること。

2.計測制御系は、事故時において、事故の状態を知り対策を講じるのに必要なパラメータを適切な方法で十分な範囲にわたり監視し得るとともに、必要なものについては、記録が可能な設計であること。特に原子炉の停止状態及び炉心の冷却状態は、2種類以上のパラメータにより監視又は推定できる設計であること。

指針48.電気系統


1. 重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器が、その機能を達成するために電源を必要とする場合においては、外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計であること。

2. 外部電源系は、2回線以上の送電線により電力系統に接続された設計であること。

3. 非常用所内電源系は、多重性又は多様性及び独立性を有し、その系統を構成する機器の単一故障を仮定しても次の各号に掲げる事項を確実に行うのに十分な容量及び機能を有する設計であること。

  • (1) 運転時の異常な過渡変化時において、燃料の許容設計限界及び原子炉冷却材圧力バウンダリの設計条件を超えることなく原子炉を停止し、冷却すること。
  • (2) 原子炉冷却材喪失等の事故時の炉心冷却を行い、かつ、原子炉格納容器の健全性並びにその他の所要の系統及び機器の安全機能を確保すること。

4. 重要度の高い安全機能に関連する電気系統は、系統の重要な部分の適切な定期的試験及び検査が可能な設計であること。


XI.燃料取扱系


指針49.燃料の貯蔵設備及び取扱設備


1.新燃料及び使用済燃料の貯蔵設備及び取扱設備は、次の各号に掲げる事項を満足する設計であること。

  • (1) 安全機能を有する構築物、系統及び機器は、適切な定期的試験及び検査がで12きること。
  • (2) 貯蔵設備は、適切な格納系及び空気浄化系を有すること。
  • (3) 貯蔵設備は、適切な貯蔵能力を有すること。
  • (4) 取扱設備は、移送操作中の燃料集合体の落下を防止できること。

2.使用済燃料の貯蔵設備及び取扱設備は、前項の各号に掲げる事項のほか、次の各号に掲げる事項を満足する設計であること。

  • (1) 放射線防護のための適切な遮へいを有すること。
  • (2) 貯蔵設備は、崩壊熱を十分に除去し、最終的な熱の逃がし場へ輸送できる系統及びその浄化系を有すること。
  • (3) 貯蔵設備の冷却水保有量が著しく減少することを防止し、適切な漏えい検知を行うことができること。
  • (4) 貯蔵設備は、燃料集合体の取扱い中に想定される落下時においても、その安全機能が損なわれるおそれがないこと。

指針50.燃料の臨界防止


燃料の貯蔵設備及び取扱設備は、幾何学的な安全配置又はその他の適切な手段により、想定されるいかなる場合でも、臨界を防止できる設計であること。

指針51.燃料取扱場所のモニタリング


燃料取扱場所は、崩壊熱の除去能力の喪失に至る状態及び過度の放射線レベルを検出できるとともに、これを適切に従事者に伝えるか、又はこれに対して自動的に対処できる設計であること。


XⅡ.放射性廃棄物処理施設


指針52.放射性気体廃棄物の処理施設


原子炉施設の運転に伴い発生する放射性気体廃棄物の処理施設は、適切なろ過、貯留、減衰、管理等により、周辺環境に対して、放出放射性物質の濃度及び量を合理的に達成できる限り低減できる設計であること。

指針53.放射性液体廃棄物の処理施設


1. 原子炉施設の運転に伴い発生する放射性液体廃棄物の処理施設は、適切なろ過、蒸発処理、イオン交換、貯留、減衰、管理等により、周辺環境に対して、放出放射性物質の濃度及び量を合理的に達成できる限り低減できる設計であること。

2. 放射性液体廃棄物の処理施設及びこれに関連する施設は、これらの施設からの液体状の放射性物質の漏えいの防止及び敷地外への管理されない放出の防止を考慮した設計であること。

指針54.放射性固体廃棄物の処理施設


原子炉施設から発生する放射性固体廃棄物の処理施設は、廃棄物の破砕、圧縮、焼却、固化等の処理過程における放射性物質の散逸等の防止を考慮した設計であること。

指針55.固体廃棄物貯蔵施設


固体廃棄物貯蔵施設は、原子炉施設から発生する放射性固体廃棄物を貯蔵する容量が十分であるとともに、廃棄物による汚染の拡大防止を考慮した設計であること。


XⅢ.放射線管理


指針56.周辺の放射線防護


原子炉施設は、通常運転時において原子炉施設からの直接ガンマ線及びスカイシャインガンマ線による敷地周辺の空間線量率を合理的に達成できる限り低減できる設計であること。

指針57.放射線業務従事者の放射線防護


1. 原子炉施設は、放射線業務従事者の立入場所における線量を合理的に達成できる限り低減できるように、放射線業務従事者の作業性等を考慮して、遮へい、機器の配置、遠隔操作、放射性物質の漏えい防止、換気等、所要の放射線防護上の措置を講じた設計であること。

2. 原子炉施設は、異常状態において放射線業務従事者が必要な操作を行うことができるように、放射線防護上の措置を講じた設計であること。

指針58.放射線業務従事者の放射線管理


原子炉施設は、放射線業務従事者を放射線から防護するために、放射線被ばくを十分に監視及び管理するための放射線管理施設を設けた設計であること。また、放射線管理施設は、必要な情報を制御室又は適当な場所に表示できる設計であること。

指針59.放射線監視


原子炉施設は、通常運転時及び異常状態において、少なくとも原子炉格納容器内雰囲気、原子炉施設の周辺監視区域周辺及び放射性物質の放出経路を適切にモニタリングできるとともに、必要な情報を制御室又は適当な場所に表示できる設計であること。



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