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山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」質疑応答 2011年3月21日

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「山下俊一氏・高村昇氏「放射線と私たちの健康との関係」質疑応答

2011年3月21日





Theme: 講演

それでは、今からの残りの時間を質疑応答にします。私も少し喋りすぎましたから、是非皆様の方から手厳しい、いわきのような質問をしてください。それでは順番にいきましょう。

Q1:昨日、炉心容器を取り出すというような報道がされました。そうすると、放射能は放出されるんじゃないでしょうか。そういう不安定な時期であるのに、心配はないといういわれはないと思うんですけれども、もしそれが本当であれば、コンクリートミキサー車、ポンプ車で炉心が安定した時にコンクリートで固めて頂ければ、本当に安心すると思いますが。それと、山下教授にですけれども、放射性ヨウ素だけを取り上げて、セシウムを問題とされないのはおかしいのではないかと思いますけれども。食物の内部被ばくに対してですね。それと、数値なんですが、福島市、10とか9とか、その辺なんですけれども、県北地域をもっと細かく測定してみますと、どういうわけか福島市役所だけが高いんですね。高値なんですよ。例えば、県庁の自治会館とか2.0だったり、福島ICが6.5とか。だから平均をとればもっと低い値になるんですけれども、その辺の数字のマジックというか、何故、観測地点を変える、今までやってきたから変えないでと言うんですけれども、やはりそこは正確な情報として言わないと、なかなか福島県にも必要な物資が来ないんじゃないでしょうかね。その辺のところ、いかがでしょうか。

山下:ありがとうございます。3つとも私が答えます。素晴らしい質問ですね。

 まず最初に頂いた原子炉の問題。これは、我々は健康の専門家で、原子力工学の専門ではありませんから、今の状況を抑えるのに水だけで十分なのか、冷却水が回れば全部反応が収まって、次のステップをどうするかというのは次の問題です。恐らく廃炉にする覚悟があれば、今言ったようにコンクリート固めするということも可能だと思います。しかし、それをするかしないかは、また別の判断があると思います。ただ言えることは、数日前から放射性物質は明らかに下がりつつありますので、現状の計画にまず注視したいと思います。

 2つ目の質問、何故放射性ヨウ素だけなのか。セシウムもあるのではないか、おっしゃる通りです。セシウムもあります。放射性のヨウ素は半減期が8日ですが、セシウムは30年です。身体に入ると60日で半分になります。エネルギーの力はヨウ素に比べると遥かに低いんですが、セシウムは必ず入ります。じゃあ、この放射性のセシウムは身体に入ったらどこに行くでしょうか。殆ど尿に流されますが、一部、身体の筋肉に入ります。筋肉。しかし、それは半減期と共に減って行きます。私たちの最大の研究成果は、放射性セシウムをずっと食べ続けたという人々がチェルノブイリの周辺に数百万人います。このレベルどころではありません。放射性セシウムに汚染されたキノコを食べ続けたという方が沢山いるんです。20年フォローしてきて病気は何も増えていません。つまり、筋肉に少し入った放射性セシウムは半減期が身体の中で60日で消えて行きますし、ベクレルも非常に低いので、全く心配しないでいいというので、今日は放射性セシウムの話はしませんでした。ましてや、水道水の中ではフィルターで全部抜かれますから、水の中に出てくるのは放射性ヨウ素だけです。しかし、井戸水は注意が必要ですから、しっかり測ることが必大事だということであります。

 3つ目の質問は、福島市でも場所によって異なる。これはその通りです。理由は、みんな均一に降り注ぐ訳ではありません。非常にまだらです。杉花粉がパーッと飛ばすとみんなまだらに行くと同じで、放射性物質もふわふわ浮いて、そういう環境中に留まる密度は全部異なります。数マイクロシーベルトはある意味、誤差範囲です。ミリシーベルトの誤差範囲はあり得ませんが、マイクロシーベルト、0.01~0.2という、そいいうのは非常に誤差範囲ですから、その辺の変動は当然、市内であります。ただ、あなたが仰った「じゃあ、福島市は平均で出せばいい」、仰る通りです。平均で出していいんです。しかし、観測のポイントがそこというふうに登録されていますので、そこのデータは出すということになっています。よろしいですか。

Q2:半減期とは何か(回答からの類推。全く聞き取れず)

山下:ごめんなさい、半減期ね。10という放射線のレベルが5になるのにかかる日数です。自然に放射性物質は壊れて行きます。壊れるというのは、放射線を出して安定なものに変わっていくんですね。その時に出す放射線の量が半分になっていきます。それにかかる日数を半減期といいます。申し訳ございません。半分に減ずる期間という意味で半減期といいます。

Q3:切実な問題として、まず飲み水、洗濯水、生活用水、それから食べ物ですね。 そして、安全だ、安全だって先生おっしゃいますが、だったら何で、官房長官が茨城の放射線汚染されたほうれん草を食うな、川俣で取れた原乳を捨てろ。それで本当に安全だったらば、全国民がほうれん草を食べて、全国民が福島の牛乳飲んでもいいんじゃないんですか。それを福島まで来て、福島県民は汚染された食べ物を食べてもいい、飲み水飲んでもいい、それから洗濯水に使ってもいい、牛乳も飲んでもいい。半減する。福島県民だけが、もちろん、食べなくちゃいけない、飲まなくちゃいけない、生きて行くために。だったら、全国規模で枝野官房長官が、ほうれん草大丈夫ですよ、今先生がおっしゃったみたいに、健康被害ないですよ。食べてください、 洗ってください、牛乳も飲んでください。半減しますから。どうしてそういう事が言えないんですか。原発がまだどうなるかわからないこの現状で、私たちが不安なのは、これから先、飲まなくちゃいけない、洗濯しなくちゃいけない。いくら安全だ、体内に取り入れられるのはいくらくらいで、半減期があって、安全ですよ、もちろん、長崎・広島に原爆落とされても、被ばくしても70も、80も生きた方います。でも、その人たちの子孫が白血病、それから先生は甲状腺の権威だと言いましたけども、甲状腺の病気、子供に対する奇形。そういったものを全然出さないで、私たちの不安はそこにあるんです。乳幼児、それから妊婦、女性がいち早く出なくちゃいけないというのは、そういう人たちに対しての被ばく効果があるからでしょう。いま現に福島にいる私たち女性、若いお母さんたち、妊娠するかもしれない女学生、そういう人たちに対しての安全宣言というのが1つも聞かれないんですよ。ですから、怒っている人がいますけれども、私が聞きたいのは、今現在、福島市で通している水が安全なのかどうか。それを飲み水として、お味噌汁に使えるのかどうか、洗濯していいのかどうか。それから、自分たちが自家栽培でつくっている野菜を食べていいのかどうか、今、この日、食べていいのかどうか。それが聞きたいんです。

山下:ありがとうございます。それが皆さんの声の代表だと思います。今、安全宣言はできません。しかし、今のレベル(の水)を既に飲んだ人は全く心配要りません。1回こういうのを測られて、基準値を超えたということであれば、枝野官房長官でなくても、みんなこれは、そういうふうな指示を出します。じゃあ、今ここで汚染されたミルクを飲みなさいと言って、みんな飲むでしょうか。飲まないですよね。福島県民だけにそういう辛い思いをさせるということは許されません。日本国民が全部がこれは分かち合うべきだと思います。だからこそ、風評被害を減らすために私達はここに来ています。枝野官房長官には今日連絡しましょう。ここに来て食えと。まさにそういうことですよね。

Q3:一番最初に食べてほしいし、飲んでほしい。

山下:はい、そう伝えますので。ありがとうございます。

Q4:3点ほど質問させてください。まず1点目なんですが、福島市として放射能濃度が高い。それが福島市の、例えば盆地とか、あるいは立地条件的に何か地形的な、何か高くなる要因があるのかどうか。これがまず第1点。

 それから2点目。前の彼と同じなんですが、我々ずっと住むということは水を飲まないと生きて行けない訳で、水が大変心配です。水道水が安全なのか。それとも、福島は扇状地でちょっと掘ると井戸水が出まして、井戸水を使っている人が大変多いんです。今のように短期間、長期的なスパンではなくて、短期間の方ならば地下水の方が安全とか、あるいは濃度的にどのくらいまでならば、先生のお考えで、どのくらいまでならば飲めるという数値的なものがもしあれば、教えて頂きたい。これが2点目です。

 3点目は高村先生に質問なんですが、チェルノブイリで、ソ連の方で味噌を日本から大量に事故後輸入して、味噌を沢山食べると健康にいいというふうなことがあったように、これも噂なんですが、その辺の真偽についてご質問したいと思います。以上よろしくお願いします。

山下:まず、水ね。まず、水からいきましょう。水道水は、問題になるのは放射性のヨウ素だけです。セシウムはフィルターで取られてゼロになりますので、たとえ少し汚染してもゼロになります。放射性ヨウ素はそのフィルターを通り抜けますから、このレベルが問題です。原則的には確か300ベクレル/kgということで、単位が出ます。各地区の水道水は定期的にチェックされていますから、それを超す場合には今の勧告は飲まない方がいいでしょう。しかし、ボイリングしたり、あるいは洗濯に使う分には全く問題がないし、その水は極めて、8日の半減期で拡散されてほぼゼロになります。今の放出がなければ、もう数日すると安全性が出ると思います。

 それから、もう1つ。どこに溜まりやすいかというお話です。同じような地形であっても、どこに溜まりやすいか。当然、 雨が降って高き所から低きに流れる。低い所に溜まります。これが原則です。じゃあ、将来、これが地下に入っていって、じゃあ地下水を汚染するかということは、まずありません。地下の微生物、あるいはフィルターの効果は極めて強いので、地下水に到達する前に半減期でもう、なくなっています。ですから、原則地下水は数メートル以上であれば全く心配ありません。それと、もうひとつ、

高村:味噌の話ですね。味噌を配ったという話は、私は初耳でした。放射能と味噌という関連は、それはよくわかりません。それが特に効果があるとは思いませんけれども、一般的に非常に植物性のたんぱく質で、塩分も適度に含みますから、そういう意味では栄養補給にはいいと思いますけれども、それと放射能の関連ということはあまりないと思います。

Q5:毎日、毎日、放射線量が今、話題になっている何マイクロシーベルトって発表になるんですけれども、今日の新聞なんかを見ると乳製品が汚染されていると。ベクレルっていうことで。で、シーベルトで言うと本当に少ない量のところでも汚染があるということで、実際、我々関心があるのは、水とか乳製品とかそういうものが汚染されることに非常に関心があるんですが、報道されているマイクロシーベルトと、そういう汚染というのはパラレルなんでしょうか。それとも、全く別なものでしょうか。

山下:たぶん、汚染はベクレルで単位されていて、我々の被ばく線量はシーベルトという単位なんですが、これは換算します。いま何故、乳製品にそれだけ高いかというと、大地に沢山降っているんです、放射性物質は。その雑草を食べた牛のお乳には、放射性ヨウ素が濃縮されるんです。これが1つの原因です。そのために原乳を測ると放射性ヨウ素が高く出る。というのは、他の食材でも非常に高いということで、これが常識です。汚染された物を飲まなければいいんです。これは多分、輸出、あるいは流通に乗らないと思います。チェルノブイリで子供の甲状腺ガンが増えたのは、残念ながらこの汚染されたミルクを子供が飲み続けたんです。これが原因です。ですから、日本の国でもあるレベルになると飲まない、捨てようということを言っているわけです。これは子供に非常に特異的に起こった現象です。

Q6:こんな大変な時に福島まで入って頂いて、こういうお話が聞ける事に本当に感謝しております。みんな感情的になっているんですが、辛い時って怒りが別の方向に向かうので、お許しを願いたいと思いますし、皆さんも怒りを別の方向にぶつけるのは止めましょう。

 先生方に1つ質問です。WHOにもいらっしゃったということなので、うちの教員のアメリカ人とかは国家から安全圏に避難するようにということで、帰っております、母国に。この時に気になったんですが、避難の距離が80キロとか90キロとか、非常に長いですよね。こうした国際的な違いというものは何を根拠においてあるのでしょうか。それだけお聞きします。

山下:根拠はないです。基本的には放射性降下物がどのレベルかということで各国で決めます。少しでも懸念されれば、危険といえば危険というふうに判断をします。アメリカは関東平野まで飛ぶと考えたのでしょう。実際に飛んでいます。しかし、私が強調したいのは、そのレベルでは健康影響は全く出ません。ただ、外国人です。外国人は日本と心中する必要ありません。そういう意味では、私は遠く離れたアメリカがそういう判断をしたのは理解できますし、明日、外国人記者クラブでこの福島の現状、あるいは原発について説明するつもりです。

Q6:つまり、国際基準はないということで、各国で設定しているということですね。

山下:はい。5キロ、10キロ、20キロ、そうです。

Q7:現実的な問題として、聞くように言われて来たんですけど、洗濯物を外に干していいのか。あとは、福島って農業県なんです。果樹とか畑とか沢山あります。雨が降って土のところに放射線が降り注いだという話が沢山ありました。今後、その土を使って畑とか田んぼとか、果物とか、そういったものをまだやっても大丈夫なのかどうか、というところ。最後にもう1つ。いま、避難している方、福島県内から各県に。沢山いらっしゃるっていう報道があります。そういった方が、どのくらいになったらば福島に戻ってきていいのか。そういったところを、ちょっと教えて頂きたいと思いました。

山下:洗濯物だけは答えられます。できるだけ干さない方がいいと思います。屋内退避のところは。部屋の中に干す方が安全です。1/20~1/10くらい放射性のチリの付き方が違います。ただ、2つ目の質問、3つ目の質問は、これは安全宣言に関わります。これは政府が責任を持ってやるべきで、これなくしては農作物あるいは農耕の再開はできません。ですからこそ、政府の情報公開が第一になります。まず、モニタリングして測る。安全宣言を出すということが、この復興の第一歩になると思います。

Q7:ありがとうございます。あとは、先生方2人の穏やか話し方、私たち聞いて凄い安心しました。本当にありがとうございました。次の方。

Q8:福島に住んでいるアンザイと申します。よろしくお願いします。2つあるんですけれども、報道で基準を超えた牛乳を1年間飲み続ければという報道がされるんですけれども、具体的に1日何ミリリットル飲み続ければとか、そういう具体的な量を知りたいというのと、うちは水道が通っていないので、地下水だけ飲んでいるんですね。この地下水を、放射性物質が含まれているかどうかを、どの機関に持ち込めば見てくれるのかというのを教えて頂きたいんです。

山下:地下水については、これは県に言えば測れると思います。たぶん、これは県民全部の安心を保ために、井戸水の安全・安心ということであろうかと思います。最初の質問は?

Q8:飲み続ければ、の量です。

山下:ミルクですね。一番高い、例えば1万5千ベクレルとかいうものであれば、1リットルを飲み続けたという場合の1年間の量が、CT1回の6ミリシーベルトに相当するというコメントです。

Q8:365日ですね。

山下:そうです。

Q8:わかりました。ありがとうございました。

Q9:私ども、今日聞いた中では非常に安心しているんですが、ただ、私ども年寄りを預っている事業所を持っている者、そして職員の家族を預っている私なものですから、職員にもう少し、こうしてこうすれば安心ですよと言える言葉で、もう少しわかりやすく、これとこれをすれば安心ですよという言葉があれば教えて頂きたいと思っております。

山下:科学的に言うと、環境の汚染の濃度、マイクロシーベルトが、100マイクロシーベルト/hを超さなければ、全く健康に影響及ぼしません。ですから、もう、5とか、10とか、20とかいうレベルで外に出ていいかどうかということは明確です。昨日もいわき市で答えられました。「いま、いわき市で外で遊んでいいですか」「どんどん遊んでいい」と答えました。福島も同じです。心配することはありません。是非、そのようにお伝えください。


Q9:すみません、私も今日、マスクをして来たんですが、マスクあるいは帽子と言われているんですが、それについてはどうなんでしょうか。

山下:これは、花粉症には効くでしょう。はい。放射能のそういう物質をどうやってブロックするか。皆さん、濡れタオルを口にしたことはありますか。窒息するぞ、これ。でも、そんなことを平気で書いとるね、新聞は。これは気休めです。でも、気休めを言わなくちゃいけないようになっとるんです。基準がそう書いとるから。だから、皆さん、マスク止めましょう。はい、次の方。

Q10:ベクレルとたぶんシーベルトが今後、ごっちゃまぜで出てくると思うんですけれども、公式発表を全部統一した形でシーベルトに揃えるということは、科学的ではないと思うんですけれども、それは可能でしょうか。

山下:それはできないと思います。1ポイントでベクレルという放射線の出す力の、汚染のベクレルと、受けた時の実効線量のシーベルトは式を換算しますから、仮定の上に仮定を立てるので、実測値しか出せないと思います。

Q11:先程の先生方のお話で、数10マイクロシーベルトぐらいではDNAの破損は問題ないのではないかという話だと思って認識しているんですが、報道なんかによりますと、胃のレントゲンで600マイクロシーベルト、あるいは飛行機に乗って成田からNYを往復すると160マイクロシーベルトとか、そういうような報道がありますけれども、これは多分レントゲンでも放射線を直接出す訳ですね。現在、空気中に拡散している放射性物質がある所で何マイクロシーベルトだと、その辺を単純に比較するというのは整合性があるのかどうかということと、 私はいま、大変この辺、ガソリン不足なんです。ガソリンが。会社まで大げさに言うと約2時間弱くらい自転車で行っている訳ですね。そうすると、マスクをしてもかなり汗をかくくらい、運動しながら外を歩いているということになりますが、これは先生のお話の、普通、外へ出ても1/10のくらいの吸入だということですが、その辺は問題はないのかどうか。この点をお教え頂ければと思うんですが。

山下:今の外に出て2時間半くらい自転車でこいで行って吸っても、たいへん嬉しいことに、あるいは残念なことに、まず男、20歳以上、全く影響ありません。どんどんやって大丈夫です。それはご心配いりません。最初の質問は何でしたかね。

Q11:放射線を直接浴びるのと、放射性物質がある所にいる放射能の量、その整合性はどうかということです。

山下:要するに外から浴びる、レントゲンその他は外部被ばくです。今、彼が質問したのは中から入ってくる内部被ばくと同じように考えていいのかという話ですね。内部被ばくの方が1/10、そういうリスクは少ないです。でも、それも外部被ばくと同じような基準で議論します。2つのスタンダードを作ると混乱しますから、内部被ばくも外部被ばくと同じように基準を作っています。ですから、今の基準は幾重にも安全に厳しく作っているというふうに考えてもらっていいと思います。

Q12:わからないこともあったんですけれども、今、現状が安全だということは、話を聞いてちょっと安心しております。ありがとうございました。それと、僕個人の思いと、福島県民全員が思っている事だと思うんですけれど、原子力発電所はなくなった方がいいと僕は思っているんけど、先生はどう思われますか。

山下:難しい質問ですね。

Q12:はい、そうだと思います。

山下:私は原爆を浴びた両親から生まれましたから、被ばく2世です。しかし、こうやって元気に仕事をしています。高村先生は被ばく3世です。そういう意味で考えますと、科学に善悪、善し悪しはない。原子力発電所を我々がコントロールする術はこれから学ばなくてはいけませんけれども、全廃とか、あるいは原子力発電所が悪いという意見を持っていません。では、どれをどのようにして管理するかはこれからのまた、大きな議論になると思いますので、私は申し上げません。ニュートラルな立場でこれが不要だとは言えませんし、言いません。

 1つ参考になるかもしれません。永井隆をご存知ですね。「長崎の鐘」の永井隆は、原爆を被ばくした直後、彼は瀕死の重傷で日の丸を描いて、復興に当たります。奥さんが、みどりさんというご夫人が亡くなりました。しかし、家に帰ることなく彼はその後3ヶ月間、荒野で、原子野で、被ばく者の救護に当たりました。その時の救護報告書が10月の初めに書かれました。全く何もない中で200数十名の被ばく者の健康影響を書いて、最後に彼がこう書いています。「祖国は破れた。国は壊滅し、荒野になった。しかし、この思いは日本人、日本国民が科学者をないがしろにしたせいである」と。

彼は放射線科の先生でしたから、原子力の知識もありました。先に欧米が原子力爆弾を開発したということで非常に悔やみます。と同時に、この惨禍を乗り越えるためには、このエネルギーを良きものとして、世界の幸福のために使うべきだということを彼は述べています。そういう意味では、科学をコントロールする力を持つ事が我々の責務だというように思いますので、今の考えの答えにはなりませんけれども、そのように答えさせて頂きます。

Q12:わかりました。僕にも子供が居ます。正しい知識を身に付けて、頑張って生きて行こうと思います。ありがとうございました。

Q13:3月18日の朝日新聞の方で、同じ長崎大学の教授の方なんですけれども、残念ながら名前の方は覚えていないんですけれども、急性的な200ミリシーベルトと、そういったものの症状だけではなくて、積算値として、私たち福島でも最初20マイクロシーベルト、それが10日近く続いているような状態で、単純に日にち時間で1年で計算したような場合に、放射線従事者が緊急時に100ミリ、認められている数値を超える訳ですよ。急性的な症状はわかるんですけれども、積算として緊急時に100ミリ、それを超えるような数字になるということに対しての危険性。先程、細胞は再生するので、その怖れはないような話だったんですけども、積算値に対する危険性というのはどうなのか。食物とか水から積算されることもあると思うんですけれども、そこの危険性について述べて頂きたいと思います。

山下:はい、内部被ばくで少量、長期間浴びた場合に、それがあるレベルを超したら、1回こっきり受けた量と同じかどうかという質問ですよね。これは防護上は同じと考えて防護します。しかし、生物学的には圧倒的に少量浴びる方が障害が出ません。これはもう明確に疫学的に証明されていますし、動物実験でも、私が話した細胞のレベルでもわかっています。これ、安全防護の基準上、積算で超えたら危険だから、逆算していつもこういう話をしています。ここがわかりにくいんですけれども、少量の慢性被ばくの影響は非常に低いと思ってもらって結構です。

Q13:圧倒的に、その原子力でいま働いている方が100ミリシーベルト受けたものと、我々が福島に1年間居て100ミリシーベルト積算して受けたものとでは、明らかに危険度が違うと。

山下:違います。だから、我々は原発の職員を心配しています。

Q14:南相馬市出身の原と申します。よろしくお願いします。汚染レベルというのは今、川俣とか、土壌が汚染されててミルクに影響が来ているというんですけれども、このまま、あと例えば1ヶ月後、完全に収束したとして、出なくなったといった時に、ただ汚染レベルというのはこれから幾つか続いていくと思うんですけれども、それっていうのは、例えば今から1ヶ月後に完全に原発の方もある程度問題が収束して終わったといった時に、大体どの程度その汚染レベルが、ミルクだったりほうれん草だったりの汚染レベルが、今までの通常時期と同じくらいになるのかということと、もう1つ、そうなった時にも、やはり福島県産のものより他の県の方が食べたいっていうような、風評というのは拭いきれないと思うんですけども、それを払拭するために、これからどのようにしていくのがいいのかという、この2点をお願いします。

山下:仰る通りであります。いつ安全宣言をして、いつその中に入っていけるか。あるいは、今の土壌が安全かというのは、まさにこれは政府の責任で測定をして決めます。だから、土壌の汚染がどのくらい残れるかということで、最も重要なのがセシウム137です。30年の半減期があるわけです。ですから、これが消える間、あるいは安全になるレベルということがまず安全基準の評価になります。じゃあ、福島原産のものがいつ流通が自主規制がなくなって、皆さんが安心して食べれるかというのは数値でしか判断できません。200ベクレル/kg、あるいは300というふうなものによって決まってますので、その基準以下になったら、もう議論する必要は全くないと思います。それは農林水産省と厚労省が両方で決めるというように思います。(場内からの声に対し)そうです、そうです。

Q15:私は15歳の娘が居るんですけれども、子供の事が心配なので色々情報をインターネットで調べたりしたので、間違っていることかもしれませんので、お聞きしたいんですけれども、いま3号機、あそこに今、冷却していますよね。あれは使用済み核燃料ですよね。それで、使用済み核燃料から出るのは、放射線ではなくて中性子線であるということ。それで中性子線というのは、放射線とは違って、コンクリートやガラスや全てを通り越して生きている人体をコロ(?)としてしまうと、そういう危険なものであるということ。で、それは半径80キロ圏内だと被ばくすると。そういう情報がありましたので、放射線の方は心配ないと思うんですけれども、その中性子線というものが一体どのようなものなのか、それが人体にどのような影響を及ぼすのか、そして、いまこの福島市は(原発から)60キロなので、もし仮に爆発などして中性子線が放出されたら、この福島市は大丈夫なのか。子供達は大丈夫なのか、その辺を教えて頂きたいんです。

山下:中性子線というのは熱線と同じでエネルギーですから、これはある距離しか届きません。中性子線を被ばくすると何が一番怖いかというと、自分の身体の元素が破壊されます。JCOの事故を思い出してください。2人の方が被ばくして亡くなりました。これは臨界事故といいます。まさに原発の中における臨界と同じ状況です。いま出てくるのはそういう状況と異なりますから、溜まっている放射性物質が冷やされないで出てくるという状況で、私の理解する限りでは中性子線は出ていないと思います。臨界事故ではありませんから。そして、その届く距離は、確かに鉄筋コンクリートを突き抜けますけれども、そんな数百メートル、数キロメートルも届きません。ですから、ましてや 10キロ、20キロ避難した所には絶対に中性子線は届きません。これは長崎の原爆がそれを証明しています。中性子、爆弾として爆発された時の中性子線は、 2.数キロの所で留まりました。これはウラン燃料を99%に濃縮した爆弾です。ここは3%のウランを使ってます。全くエネルギーも違いますし、中性子線の心配は全くここではする必要はありません。

Q15:じゃ、子供達も大丈夫だと。

山下:はい。

Q16:放射線が首に集まり、甲状腺ガンを引き起こすと聞いたのですが、それは皮膚から入り込むため、首を守るためにタオルを巻いた方がいいと聞いたのですが、実際はどうなんでしょう、単純に。巻かなくてもいいんでしょうか。

山下:単純にそれは間違い。

Q16:気休めですか。

山下:唯一心配しないといけないのは、飲み続けるミルクに入った放射性ヨウ素。内部被ばくでそのヨウ素が甲状腺に入るから、外をいくらブロックしてもダメ。中に入る事をブロック。汚染されたものを食べない、飲まないというのが大事です。

Q17:私は結婚したばかりで近い将来赤ちゃんがほしいんですけど、母体や子供への影響はこれからあるんでしょうか。何か凄く不安で、これから先。特に夫婦で男の人の方がダメとか、女の人の方が放射能を浴びるとよくないとかっていうのはあるのかなと思って、お聞きしたかったんですが。

山下:これは全部、放射線の量ですね。ですから、ある一定の量以上浴びるとやはりよくありませんが、今の現状が、例えば1ヶ月間収束しなかったとすれば、それは避難した方がいいと思います。しかし、今の状況がここ1週間で収束すれば何ら問題はありません。そうご理解ください。それ以上のことはわかりません。

Q18:私の実家は原発から10~20キロの圏内なので、避難してきたんですけども、この会場の中、福島市の方いっぱいいる中、この質問をするの恐縮なんですけども、いつになったら元の生活に戻れるのか。原発の状況とか、放射能の測定値、マスコミで流れてると思うんですけど、今までの事故を参考にして環境面、衛生学的面から見て、いつ私達は実家に戻れるのか、本当に気がかりなんです。避難生活がいつまで続くのか。それを先生方からの見解をお聞きしたいなと思いました。

山下:南相馬市というのは、10キロですか。

Q18:10キロの範囲です。

山下:私は今日、日本チェルノブイリ連帯基金という、一緒にチェルノブイリの支援活動をしているグループから連絡をもらいまして、福島には放射能が危険だから、NGOやボランティアが入って行きづらいという連絡を受けました。私は心配いらんと言って、彼らは今、南相馬市に入っています。ですから、早晩この事故が終焉すれば早い時期に安全宣言されるだろうと思いますが、そのための全責任は国が負って安全宣言します。ですから、これは国をかなり強くお願いして、まず測定してもらわないといけません。汚染が大前提で避難しましたから、その地区が安全かどうかは、環境、モニタリングをして、評価をして帰るということになると思います。ですから、いつということは私は言えません。しかし、もう既にボランティアは南相馬に昨日から入りました。それほど危険ではないと思います。

Q19:福島市飯野で酪農をやっています。先程、牛乳に放射能が出てくるのは、降下物のせいだと仰った点でちょっと疑問だったのは、牛と人が共通しているのは空気と水。あと、えさがあると思うんですが、殆ど屋根のかかる所においてある牧草であるとか、配合飼料を食べます。ですから、大地に生えてる草を食べることは、今は全くないんです。ですから、降下物ということであれば、空気と水は人と同じなんですね。私の家族で、姪が間もなく出産します。息子の子供も7月には生まれます
。いま、妊娠5ヶ月、6ヶ月のところです。そこで同じ水と空気が、小さい子供、胎児とかに影響するということで、非常にその事が気になっています。このまま福島に居ていいのか、実家とか県外に行った方がいいのか、凄い単純なことなんですが、どうなんでしょうか。

山下:これは最も難しい質問です。お母さんと妊婦が汚染ゼロの所で当然生活すべきです。じゃあ、今の汚染が安全か安心かということになります。今、お住まいは何キロですか。

Q19:50キロくらいです。

山下:国の今のスタンダード、標準からいくと、30キロより遠い所は心配は要らないと言っていますが、もし私がそのような立場で心配があれば、それはより遠くに避難した方がいいと思います。何故か。避難させなかったばっかりに何かあった時の後悔を持つのは親であり、そしておじいちゃん、おばあちゃんです。そういう意味では、これは理論ではありません。理性ではない。感情論として、女性は行動していいと思います。ですから、もし本当にご心配であれば、その値を客観的に判断して、避難することは何ら恥じることではありませんし、もしそういう事が可能であれば、それを誰も止めることはできないと思います。

Q19:あともう1点。うちはこの地震が起きてから、停電・断水が続いてました。その間、発電機を使い、近所の水道、川俣なんですけれども、もらって、牛の世話をして、牛が病気にならないように搾乳してました。全て捨ててました。それが今の状況で、安全基準を満たすまで出せないって事は理解してます。でも、この後、ここで必ずその仕事を続けることはできるっていうのを、先生の新聞を見て、もう一度そのことを聞きたかったんです。

山下:必ずできます。是非、今はちょっと苦しいし厳しいと思いますけれども、是非乗り越えてください。

Q19:ありがとうございました。

Q20:市内の中学校の教員です。具体的に、生徒が外で体育の授業をしている、もしくは部活動をしている、駅伝の練習をしている、そういった時にモニタリングの結果が出た際、例えば、屋内に「念のため」というような文字が、テロップが入る訳なんですが、屋内にという指示を出すとしたら、そういった基準というのは、教育委員会の方でも設定すべきでしょうか。

山下:仰る通りです。子供は守らなければなりません。20歳以上は放ったらかしておいて大丈夫です。そういう意味では、まさに仰った教育委員会はその義務があると思います。

Q20:だとしたら、その数値の目安としては、

山下:私がいつも言うように100マイクロシーベルト/hというのは、それ以上になると屋内退避すべきだと思います。

Q21:土壌汚染が気にかかるんですが、セシウム137は30年の半減期とおっしゃいましたけども、福島市内にもそういうのが降っているのどうか、それを聞きたかったんですが。

山下:降ってます。日本中、あるレベルまで全部降ってます。調べればわかりますが、希釈されて消えて行きますし、たとえ30年という半減期でも、微量なものであれば全く心配いりません。はい、降ってます。

Q22:現時点で取り組まれているスクリーニングについて、今の時点でどんな意味があるのかということで、私はもう少しマンパワーを別な所に回したらいいのではないかと思っている人間なんですけれどもね。

山下:ありがとうございます。これはもうJ0Cの事故の時からそうですが、被ばくか被ばくでないかを分けるのは、最初のスクリーニングするということが決まっています。それでしていますが、その線量は極めて安全なレベルです。ほとんど人が、除染の必要がある人は今の数をこなしてもゼロだったそうです。ですから、本当に安全なんです。たとえ、千カウント、1万カウント、1万5千カウントあったとしても、実はこれは身体に何ら影響を及ぼしませんから、洗う、服を脱ぐで済むんですが、でも、最初に言ったように測らないとわからない。今回初めて、皆様、CPMとか、大気中に放射線があるかということがわかりましたから、これは次の教訓に活かすべきだと私は思います。しかし、今は国の流れで測らないといけないんです。ですから、マンパワーが足りないんですね、確かに。仰る通りです。

Q23:土壌汚染のことですけども、毎日、福島の野菜を食べてる訳ですけども、洗っていいものと、そうでないものもありますけども、地上に落ちてきますね、放射能が。堆積していきますね。雨もありますね。これから、3ヶ月、6ヶ月、1年と継続していく訳ですね。そういう中で、安全に差し支えないものなんですか。生育していく訳ですけども、その中に取り込まれていくってことはないんでしょうか。

山下:土壌から取り込まれていくという不安ですね。それはあります。だからこそ、そういう野菜類にしても、食物にしても出荷の前には検査がされると思います。あるレベルであれば心配ありません。それから2つ目は、土壌に蓄積されるとおっしゃいましたけど、これは拡散します。そして、雨が降ればどんどん流されます。雨が降るということは実は天の恵みなんですね。ですから、雨は歓迎してよろしいと思います。その条件は、今の事故現場から放射性物質はもう出ないということが大条件です。今のところは、ある数日間は止まってますので、これが続くことを私たちは念願しています。ですから、今言ったようなご心配は、おそらく無くなるだろうと思いますが、絶対はないので、もう一度これが何らかの大きな事故をすれば、また考え直します。今の段階での、これは解釈です。

司会:これで一応、質問を打ち切らせて頂きたいと思います。それでは、最後にお2人の先生からまとめということでお願いします。

山下:いや、もう、まとめはありません。皆さん方の十二分なご質問と厳しい追及を受けましたので、ギロチン台に立ったような気がしましたけれども、でも、私は皆さんに是非お伝えしたい。大変な状況下にありますけれども、少なくとも日本国民、広島や長崎の同じ被ばく県民は、みんな応援してます。絶対に福島を忘れることはありませんし、これからずっと続けます。そういう意味で、今日は実は私たちの大学の副学長が来てくれました。この会をするというので、最後にあいさつを彼がしてまとめにさせて頂きます。調(しらべ)理事です。

調 漸:ご紹介頂きました長崎大学の調です。こんなに活気のある会は初めてでした。私は今月の14日の日に長崎大学の水産学部が船を持っておりまして、 そこに荷物を満載して、4日間航海をして、小名浜に入りました。そこで7トントラック4台分を降ろして、その後、宮古に行きまして、そこでまた同じように降ろしまして、そこで私は船を降りまして、釜石に入りました。いずれも大変悲惨な所でしたけれども、その後、学長から帰ろうと思ったら福島大変だから、山下先生を手伝いに行けということで、帰るアテもなく、東北地方を彷徨っている訳です。

 この2人は佐藤知事さんに、放射線リスクアドバイザーということで、福島県のアドバイスをするという任命を受けております。私共の大学の学長も、今は短期的な集中的な支援ということでございますけれども、次に中期的な支援に移るということで、できれば長崎大学のスタッフが誰かですね、福島県立医大に居て、この県の健康と安全を支えるお手伝いをしたいというメッセージをお伝えしたくて、壇上に上げて頂きました。

司会:ありがとうございました。本日のご講演はこれで終了させて頂きたいと思います。ここで、お忙しい中、また本日の講師をお引き受け頂きまして、また、先生方からは力強いお言葉を頂きました。先生方が退席されますので、本日の感謝の意を込めまして、皆さんで拍手でお送りしたいと思います。



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