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赤松隊「陣中日誌」改竄の一端

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赤松隊「陣中日誌」改竄の一端




より詳細な検証が必要だが


  文献取り扱い専門家である歴史研究者によるより詳細な検証が必要ですが、海上挺進第三戦隊の「陣中日誌」(赤松隊陣中日誌)改竄の一端が明らかになりました。赤松隊陣中日誌とは、1970年に編纂されたものです。編者である元戦隊本部付特別幹部候補生、谷本小次郎氏は次のように記しています。
……
  私、本部付として戦闘詳報、命令会報を記録し甚だ以て僅かの戦闘のみしか参加せず誠に汗顔の至りでは御座居ますが、幸いに基地勤務隊辻政弘中尉殿が克明に書き綴られた本部陣中日誌と第三中隊陣中日誌(中隊指揮班記録による四月十五日より七月二十四日迄の記録、第三中隊長所有)を資に取り纏め聊の追記誇張・削除をも行わず、正確な史実を世代に残し歴史は再び巡りて精強第三戦隊たりと誇れる事を念願します。
……
(編集のことば  谷本小次郎 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1429.html
  • (引用者注)戦闘詳報、命令会報は一体どこに?
  • (引用者注)「聊の=いささかの」

  しかし、辻政弘中尉が克明に書き綴った本部陣中日誌と、谷本氏が編集したものとは全く違ったものです。追記誇張・削除が随所に見られます。一例として、昭和20年3月28日、集団自決の日の記述を比べてみます。


辻政弘中尉「本部陣中日誌」1945(防衛研究所資料・沖台沖縄209)

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三月二十八日 

一、陣地構築ヲ終日実施ス

二、第三中隊主力廓陣地ニ到着

三、渡嘉敷、渡嘉志久、留利加波各地ニ上陸セル約一ケ大隊ノ敵ハ廓陣地ニ侵入二三六高地附近に迫撃陣地ヲ構築シ同砲撃ニ艦砲射撃を以テ我ガ陣地ニ攻撃ヲ加フ

四、損害 戦死 
   勤務隊 二中隊 多田一ト兵
   水勤隊  阿部軍曹  軍夫五名
   防招  小峯上ト兵以下八名
   村民  若干
  負傷
   辻中尉 山田上ト兵
   水勤隊  若干  防招  若干  村民  若干

五、辻中尉負傷ノ為田所中尉副官業務ヲ代行ス

六、独立第三大隊付新海中尉高塚少尉戦死ノ為第三勤務小隊長ニ命ス

七、通信機の状況 破壊三号甲無線機一、五号無線機ニ


谷本小次郎編「陣中日誌」1970(防衛研究所資料・沖台沖縄405)


三月二十八日小雨 晴 夜小雨 

 昨二十七日留利加波方面に上陸したる敵は一部海岸稜線上を渡嘉志久へ、一部は我陣地北側の高地に布陣せるものの如し、各隊陣地の構築を行う。第三中隊の主力到着。

 昨夜出発したる各部隊夜明けと共に帰隊道案内の現地防衛招集の一部支給しありたる手榴弾を以て家族と共に自決す。本朝二、三件の模様なり。

1、各隊全員陣地稜線上にタコ壷を掘る。

2、一四〇〇陣地の北の谷に避難していた住民陣地内に崩れ込む、住民の異様なる叫び声阿鼻叫喚の中へ。北方の敵陣地より迫撃砲攻撃を受く、戦隊長防召兵を以て之を鎮めしむ。

 二十七日未明「通信隊は軍司令部に対し戦隊長敵情報報告、電報を打ち五号無線一を残して破壌、本隊に合流 三号無線機一 五号無線機二 破壊

3、勤務隊辻中尉防衛招集兵の手榴弾暴発のため負傷田所中尉副官業務を行う。

 第三中隊高塚少尉戦死のため独立第三大隊付新海中尉第三勤務小隊長に命ず。

 本日の損害
   通信隊    里見芳郎上等兵 戦死
   勤務隊    多田健一上等兵 林時三一等兵 戦死
   水上勤務隊  阿部盛雄軍曹  軍夫五名 戦死
   防衛招集兵  小峯上等兵以下八名戦死(自決者含む)
   勤務隊    辻政弘中尉 山田上等兵負傷

4、二○○○頃二中隊正面軽機関銃座に敵襲を受く。

5、小雨の中敵弾激しく住民の叫び阿修羅の如く陣地後方に於いて自決し始めたる模様

  注 自決し翌日判明したるものである。

《違い》

  1. 原本には天気は無い
  2. 文章の構成がガラリと変わっている
  3. 原本には米軍上陸日時は無く上陸後の行動も違う記述。後に判明した米軍記録に合わせた後付けだろう
  4. 原本には「自決」に関する記載は一切無い
  5. 原本には一四〇〇の記述は一切無い
  6. 原本には軍司令部への敵情報告もない
  7. 原本にはニ○〇〇の記述も一切無い
  8. 原本にあった損害・戦死「村民 若干」が抹消されていながら、「注 自決し翌日判明したるものである。」の加筆

中西記者の引用

  中西記者が週刊朝日1970年8月21日号で引用した文章は、辻中尉が書いたオリジナルの「陣中日誌」ではなくて、谷本氏が1970年に編んだものでした。


大阪地裁判決での評価


大阪高裁判決での評価


陣中日誌改竄に基づく赤松手記




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