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パートI 6 あれでいいんだ同好会

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6 あれでいいんだ同好会


 防衛庁設置法と自衛隊法は防衛2法と呼ばれ、予算成立等に伴うこれらの改正については戦後の55年体制下でいつも与野党の対立法案であった。このため自衛隊において各種事故や事案が発生すると、某野党などはここぞとばかり自衛隊を攻撃し一部マスコミもこれに同調してきたのではないかと思う。残念ながら我が国においては今なお自衛隊が国民の財産として十分には認知されていない。部隊等においてはこのため事故防止に格別の努力をし、隊員指導を強化してきた。その結果25万人の人員を抱える自衛隊の各種事故率は25万の人口を持つ市や郡に比較して圧倒的に低い状態に抑えられている。犯罪白書によれば、千人あたりの日本国民全体の刑法犯は平成11年から13年まで22.9、25.7、28.1であるが、自衛隊の刑法犯は、4.0、4.4、4.9とその約6分の1である。しかも25万人の平均年齢は35.1歳と若く、20歳そこそこの若者を数多く抱えた組織であるのにである。高校等において全く先生の言うことをきかなかった者が自衛隊に入って数ヶ月もすると礼儀正しい立派な社会人になるのを見るにつけ自衛隊は素晴らしい教育機関であると思う。

 にもかかわらず一民間人が起こしても何の話題にもならないような事故でさえも自衛隊員が起こした場合、マスコミ等で激しく叩かれる場合がある。しかも10年以上も前に自衛隊を辞めて民間人になっている人あるいは昔自衛隊に数ヶ月勤務しただけの人の不祥事についても元自衛官などと報道される場合もあり、それ自体は確かに事実ではあるが、なんとなく不自然さやある種の意図を感じざるを得ない。

 しかしこのようなことが長期間繰り返されると、われわれ幹部自衛官の心の中にも萎縮が起り、空幕やメジャーコマンド司令部等においてさえ、事故はゼロにはならないことを忘れ、隷下部隊等が起こした事故、あるいは事故に対する許せる範囲の対応のまずささえ責めたくなる。しかし私はこれを統率上絶対にやってはいけないと思う。私自身それをやってしまった場面に何度か出くわしたが、それによって空自内の団結を損なうこと著しいものがあると痛感した記憶がある。事実その事故が起きても相変わらず空自の事故は少ないし、隷下部隊等の対応もまずまずの合格点であると思っていた。しかしながら外から責められているという事実をもって誰かを悪者にしないといけないような雰囲気が充満していた気がする。問題を起こしたことが問題なのである。「どうしてこんな事故を起こしたんだ。だから俺達の仕事が増えて大変だ。そうでなくても忙しいのに。」という気持ちはよくわかる。しかしここは気持ちを切り替えて隷下部隊を護ることを考えなければならない。それをやらなければ部隊の上級司令部に対する信頼は失われてしまうし、何か理由があって自衛隊を攻撃している人達の思う壺である。自衛隊員がやる気をなくすことが無上の快楽である人たちに迎合しては国益を失ってしまう。よく自衛隊に対する信頼が失われたとか、警察に対する信頼が失われたとか報道されることがあるが、今までわが国においては自衛隊に対する信頼も警察に対する信頼も失われたことは一度もないと私は思う。国民は自分の生命等がもし真に危険にさらされたならば、信頼が失われたと報道されているときでさえきっと自衛隊や警察に助けを求めたであろうと思うからである。どこかの国の軍や警察とは我が国の自衛隊や警察は違うのだ。

 従ってこのような場合上級司令部等は隷下部隊等を護る発言をすることが大切である。事故を起こしたことは謝罪するにしても、少なくともそれに対する隷下部隊等の対応については「あれでいいんだ」と言わなければならない。これまでの私の経験ではあれでいいんだと言えない程のまずい対応は経験したことがない。空自の部隊長等になる人はそれなりの能力も常識も備えており、それなりの対応をしていると思って間違いない。よく調べもせずに「いったい何をやっているんだ」などとゆめゆめ言うなかれ。万が一あれでよくなかった場合は上司が責任を取るのだ。しかし「あれでいいんだ」と言わなければ、その責任を部下たちに取らせることになる。幕僚等が指揮官に迷惑をかけてはいけないという気持ちはよくわかる。しかしそのための予防線として初めから隷下部隊の対応のまずさを強調するようでは、決して部隊は精強にはなり得ない。幕僚は指揮官も部隊も両方護る責任がある。隷下部隊の対応はいつでも合格点であることを信じよう。みんなであれでいいんだと言おう。私は自称、航空自衛隊の「あれでいいんだ同好会」の会長である。

  • (引用者注)太字は引用者による


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