sweet hot spa by ◆QKZh6v4e9wさん

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完璧だ。

上田の胸は達成感に膨れ上がった。
夜空に向かって拳を突き上げたい思いで一杯だ。
あまりの状況に混乱し、多少ぎくしゃくはしたが、急転直下のこの鮮やかな結末はどうだ。
上田はこれまであえて膝にのせた全裸の女性に求愛した事などなかったが、はからずも今回初めての試みであっさりと成功してしまった。
再認識するまでもなく、それもこれも上田が天才だからである。
山田奈緒子のようなひねくれた女までもを素直にさせてしまう、溢れ迸る底なしの才能と魅力が自分でもそら恐ろしいくらいだ。

「上田……さん…」
「……you」

見つめ合い、どちらともなく再び唇を重ねた。
なんという自然で美しい流れだろう。

言葉をいくら発しても、この喜びを完全に表現させる役にはたたない。
もどかしい。
どうすれば彼女に、この高揚感を伝えることができるのだろう。
奈緒子の指は上田の髪深く潜りこみ、上田の腕は奈緒子の躯に巻き付いた。
唇で首すじを覆うと、奈緒子が鼓動を跳ばしたのがわかった。
もしかしたら、跳んだのは上田の鼓動のほうかもしれないが。

掌全体に伝わってくる腰の艶かしい曲線。
囁き混じりに抑制をほどきはじめた彼女の吐息。
奈緒子の腿を押している、わかりやすい上田の反応。
……これは恥ずかしい事じゃない。
健康な成人男性としての当然の反応だ。
上田は頷く。

湯を通してかすかにみえる、ほの赤い乳房の先が可憐に尖っている。
奈緒子は、上田の肩に上気した頬を伏せてきた。
「上田さん……あ…」
大き過ぎる男根はいい予感に張りきって敏感になり、ぴくぴくと揺れ、たぶん湯などよりもはるかに熱く蕩けているはずの、奈緒子の躯の中に早く納まりたがっている。
彼女の華奢な背に腕を廻して引き寄せる。
湯が騒ぐ。

「you…もっとこっちに……来いよ」

もっと早くこうして触れ合えることができていれば、これまで遠回りしなくてすんだのだろうか。
昂る感情のまま上田は奈緒子の尻の肉に指をおいた。
抱き寄せ、奈緒子の胸の間に顔を埋める。
貧乳貧乳と苛めてきたが、ふわりと柔らかな肉がきちんと頬をおさえこむ。
綺麗な胸じゃないかとちらりと思った。
こうしていると、とても気持ちがいい。





細くひきしまった胴を確保し、舌を出して乳房を舐めた。
濡れた肉を震わせるように唇で挟み、くっきりと浮かんだ乳首を音をたてて吸う。
「あ、いやっ……上田……」
「好きだ……こいよ、早く、腰をあげて…」
浅く早い呼吸音が湯気を撹拌して響く。
自分のだと気付くが恥ずかしくもないし自己嫌悪も感じない。
歯止めが効かなくなっていく。
壁が失われていく。
なにかがどんどん壊れていく。

無理もないだろう。
……な女を抱いてるんだから。

すんなりした白い腿を腰の横に導く。
「……俺の腰を挟むんだ。そうだよ、上手だ…」
「こんな格好……恥ずかしい、上田…」

なにが恥ずかしい。
どんな動画教材の女優よりも俺をそそっているじゃないか。

ためらっている脚を引き寄せ、腰を掴む。
湯とは全く別の温かさに先端が触れる。
力をこめて彼女の腰を引きずり降ろす。
狭い肉の強烈な抵抗感。奈緒子の指が上田の肩を握りしめる。
「んっ………ぁ…う、ん…!」
深く深く、潜り込んでいく感覚。
「you…!」
蕩けた彼女の細い躯は苦労しながらなんとか上田を通過させていく。
のけぞるように身を揉み、奈緒子が呻く。
「あぁあ!」
苦痛だけとは思えない確かな艶が、血流でざわめいている上田の鼓膜を震わせる。
「あ、あ、っ……こんなに…深すぎて……やぁ……」
背筋を撫でる甘い声。
「んっ…んんっ…あ……上田さん…いや、あ、…上田さんっ…」
上田の顔の横でわなないている彼女の白い顔。
眉をよせ、綺麗な目を潤ませ、薄く開いた唇の隙間に喘ぐ舌がちらりと踊った。
「山田……」
勝手に腰が動き始める。
二人の周囲で、じゃぼっと湯が一斉に騒ぎ立てた。
「んっ、ん…ああっ、いや、あ…っ」
「や、山田っ!!」
奈緒子は柔らかな頬を上田の耳に擦り付け、振り落とされるのを怖れるかのように背に腕を廻してきた。
思わず爪をたてたのか、鋭い痛みが一瞬走る。
だがそれは興奮しきった上田に何らダメージを与えるものではなかった。
「あああっ、あっ、あはぁ、ああ!あ!…」
奈緒子の腿が上田の腰を、動きに合わせて締め付ける。
くねる躯は、もしもこんなに深く繋がっていなければ上田の腕から今にも抜けそうだ。
「いやぁ、上田、上田、さんっ…私…、わたし…!」
奈緒子が喘いで身をよじるたびに、その胎内で隙間なく上田に絡まりついた熱い複雑な肉襞が、きゅうきゅうと奥にむかって誘うように絞り抜く。
ほとんど拷問のような強烈な悦楽に上田は呻いた。
「おおぅ、youっ!……は、反応が良すぎるぞ!」
「あん、バカっ…上田のせいだっ……こ、こんなに…なっちゃったの…あああ、だめっ!」




こんなに感じているなんて、彼女もそれなりに──いや、かなりこの行為に馴染んできたのか……。
馴染む……?
だが、いつ奈緒子を抱いただろう。
上田にはその、記念すべき最初の開拓行為の記憶がない。
最初どころかその後の楽しかるべき発展途上の日々の覚えもない。
ないったらない。
ゼロだ。
「何だと……ばんなそかな!…ん…おぅ……なんで……」
「あっ、んっ!…ふぁっ!…上田、上田さん、ごめ、んなさい…もう、私…もう…っ…」
重要極まりないはずの記憶の欠落にたじろぐがそれも一瞬だ。
奈緒子の、限界を訴えるたまらなく色っぽい動きにすぐに上田は集中する。
腕の中、目の前に、彼の名を愛しげに呼びながら艶やかな声をあげている彼女がいる。

ああ、それで充分じゃないか?
彼女が自分の傍らに居る。
それだけで。

「上田さん!上田さん!!ああっ、一緒に、ね、いっしょ、に!ああ、もう……」
「そ、そんなにいいのか、you。イくんだな?…お、俺も、もう…っ」
「う、…上田さん、好き……あ、あぁあーーーーーっ………!!」
奈緒子が躯を震わせる。
紅潮し、色づいた躯が上田の胸板に擦り付けられ、細い指が首を抱き、耳朶に触れ、やわらかい唇が。
「…あ…あああぁ……や、ぅ…っ」
抱きしめると、彼女が跳ねる動きにあわせて濁り湯が揺れ動く。
奈緒子の脚が、強く上田の腰を締めつける。
「you……!!」
繋がった場所が何度も何度も、痙攣してうねり、ほどけ、彼をきつく搾りあげた。
耐えかねた上田は……。


最終更新:2006年09月12日 21:15