(リレー作品) 理由 by 151さん

《おまけ》


麻布十番の高級焼肉店、そこに俺と奈緒子はいた。
奈緒子は次々と皿を空にし、店員を青ざめさせている。
「you、もうその辺にしとけよ」
奈緒子は口に肉を含んだまま答える。
「ふぁんでですふぁ?…こほんっ、食い放題なんだから食べられるだけ食べますよ!
まだまだ、腹六部ってとこだな!」
そう言って腹をさする様を、俺は呆れたように見る。
…しかし、本当に焼肉が好きだな、こいつは。…ん?焼き肉と言えば…。
「なぁyou、こんな話を知ってるか?」
俺は嬉々として奈緒子に話しかけた。
「何ですかぁ?また、変な霊能力者の話とかなら…」
奈緒子が面倒くさそうに答える。
「いや、そんなんじゃない。君は焼肉屋にいる男女の定義をしっているか?」
「肉食ってる」
「当たり前だ!!…違うんだよ、そういうことじゃないんだ、聞いて驚くな?
焼肉屋にいる男女は間違いなく恋人同士、そして必ず肉体関係がある」
「ゴホッ!!」
奈緒子が盛大に吹き出した。苦しそうに喉を押さえているので水を差し出す。
「どうだ、当たってるだろ?」
水を飲み終え、奈緒子は赤い顔で俺に応える。
「な、なに言ってんだ!だいたい、私と上田さんが焼肉屋でご飯食べるの、今日が初めてじゃない
でしょう?!そりゃあ、今日は、当…たっ…て、るかも…し、れない…けど」
奈緒子の声はどんどん小さくなり、それに反比例して顔は赤くなっていく。
「僕なりに検証してみたんだが、要はスタミナだよ。これからあんなに激しい運動をしようとするんだから、
焼肉食ってスタミナつけようってわけだよ。はっはっはっはっ」
思わず笑いがこみ上げる。
奈緒子は真っ赤な顔で俯いている。
「上田!声でかい!!」
「youもそう思うだろう?いやぁ、俺もあんなに疲れるものだとは…」
話を止めない俺を引きずり店を飛び出した奈緒子は、結局腹六部しか焼肉を食べることができなかった。

《おわり》
最終更新:2006年09月07日 09:50