カリボネレ○プ by 無職人さん


――日本科技大の一角の研究室。上田の部屋。相変わらず散らかっている。何故か呼び出された私は、
以前遭遇したようなシチュエーションでオレンジジュースを飲み、何だか、火照っている。

「 上田さん…オレンジジュースに何入れたんです!」
「 YOU。"カリボネ"だよ。――ほら、前に君のお母さんの故郷…ポケ門島で…」
「 黒門島!!」
「 そう、その黒門島の、媚薬効果のある植物だよ。エキスだがね。」
「 い、一体どうやって飲ませたんですか!!」

――上田がにやっと笑って、事務椅子のキャスターを転がし、私の脇へ来る。

「 YOU――君は以前、僕のグラスと君のグラスを交換することにより、まんまと媚薬を逃れたな。だが今度は違う。
あらかじめ君がこっそりグラスを入れ替えることを予想し、僕は前もって僕のほうのグラスに媚薬を入れておいた…ふふ、
どうだこの応用力!!正に君は、僕がオレンジジュースを出せば入れ替えなければいけないという、パブロフの犬的な行動を
取ってしまったと言うわけだよ!ふふ、ふふふ!!」

上田は例のごとく勝ち誇ったような笑顔を浮かべている。懲りない巨根だ。

「 はあ、それで?どういう目的で私に媚薬を飲ませたんです。まさか――」
「 勘違いするな?僕ぁ決して君目当てという訳じゃない…只、あれは男性にしか今のところ試してない。つまり、
あの媚薬が女性に効くかどうか、ちゃんと立証しなければ、イザというときに失敗に終るかもしれない… 」
「 上田さん。犯罪です。」

眉を顰めてそう言い切ってやると、上田は次の言い訳に苦しんで、ああ、だのううんだの言って宙を見ている。
「 …ま、と、とりあえず効果を、き、聞こうじゃないか。今度こそどうだい。その…俺を見て、胸がどきどきしたり、
息が苦しかったり、肌が上気するかい?」

「 はあ、まあ 」
「 よしっ!成功だ!!」

上田は、イエス!とガッツポーズを取る。この野郎、本当に犯罪者だ。

「 矢部さん呼びますよ。」

上田の携帯を机上からスると、上田が素早く私の手首を捉える。

「 YOU――お前、不特定多数にヤられたいのか?そう言う趣味か?」
「 馬鹿いうな!お前をしょっぴいて貰うんだ!御用だ!こいつめこいつめ!」

手当たり次第にバッグの中身を投げつけてやる。最近何故か送られてきた『桂』印の文鎮も投げつける。
――ごつっ。
「 ――おうっ 」
「 あ、『桂』文鎮がヒット。」



「 ところで、…お前も飲んだだろ!上田!」
「 何故解る。…まさかYOU、…やっぱり俺の心が読 」
「 違います。…上田さん、多分、二分の一の確立に賭けるの厭だったんじゃないですか?万が一私がすり替えなかったら、
上田さんが飲むことになりますもんね?上田さんは必ず私にすり替えるチャンスを与える――その間、私の行動は見えない。
だからすり替えられても替えられなくても、私がオレンジジュースを飲むという選択をしたら確実に媚薬入りを選ぶよう、
入れておいた… 」

上田は、一瞬例の度肝を抜かれた顔になり、直ぐにまた薄っぺらい笑顔を浮かべる。

「 当りだ。中々やるな。その通り…だが確立論以前に、君がジュースを飲まないわけがない!」
「 ――チッ。でも…後で吐き出したら上田さんは飲まずに済むじゃないですか。なんで飲み込んだんです。 」
「 勿体無いことをするとな、家のお婆ちゃまもお母様も怒るんだよ!!」
「 マザコン。」

口を金魚みたくもぐもぐさせて、上田が言葉に詰っている。私の勝ちだ。
「 ――では、帰ります。」

「 …ま、待ってくれ。」
手首を掴まれた。以前よりも強い力だ。鍛えたな、上田。――と、そんな悠長にここに居ると、こやつの暴走に負けて
巨根にヤられてしまう。それは非常にまずい。なぜなら私は処――
いや、そういえば『世田谷の母』の一件で、ちょっと疑わしくなっていたんだった。うっ、不味い。もうそろそろ
足が動かなくなってきた。何だか上田から、逃げたくなくなってくる…

「 YOUだってもうその気なんだろう?――なあ、ヤらないか?どうせ、もうお互い処女でも童貞でも無いし…」
「 やっぱりあの時私のこと犯しただろう!!おーまわーりさ―― んぐっ!!」
「 馬鹿!…う、うっかり人が来たらどうするんだ。…ああ、そういう趣味なのか。ふふふ…それならそれで」

ち、違う違う!必死で首を震うのだが、何故か私よりも多くオレンジジュースを飲んでいた、というか飲み干していた
馬鹿な上田は、どうやら完全に媚薬が回ってしまったようで、…ああ、そこが、あんなになって…

「 そうだよ。YOUと俺とは、既に通じ合った仲じゃないか。何度同じ夜を共にした?え?
――ああほら、既にお母さんの認可も頂いてる。前にも言ったと思うがこの優ぅーー秀ぅーーな遺伝子を後世に残さない手は無いぞ。
ほーらほら、こんなに胸が高鳴ってるじゃないか。――矢張りYOUも女だな…貧乳だが。」
口を塞いでいたでかい掌が、ワンピースの肩を撫でてくる。私は、触れてきた掌に咄嗟にびくっと震えた。
「 う、うるさい――貧乳は…余計、だ 」



「 な、…な、何をやっとるねん、センセェは…」
「 こ、これは踏みこまないかんのじゃないけぇのぉ、兄ぃ… 」

ショックで矢部のズラが落ちかかっているのを気付くことなく、どこか口惜しそうに石原は櫛を噛んでいる。
事件の調査にと訪れたのが、研究室の扉の前へ立った途端、中からはいかがわしい会話が聞こえてきて、
矢部は石原に思い切り倒れこみ、その拍子にズラもずれたという訳である。

「 何や、常軌を逸してへんか?――石原君、君、見て来て。」
「 わ、わしですかぃ?そ、それはちょっと…」
「 はよ行かんかい!犯されてまうぞ!…お前、ちょっと好きやろ。あの女の事。」
「 何言うとるんじゃ兄ぃぃ…い、行けんけぇの、わし。行けんけぇの。無理じゃて、わし、行ったら、わしも、わしも――混ざってしまいそうじゃけぇのv」
どこかお茶目に石原が言うと――矢部の怒りの鉄拳が、石原の顔にぶち当たった。

「 とりあえず様子、見守っとこ。」
矢部は昂ぶる自分を押さえつつ、倒れた石原を椅子に中の様子の覗き見を始めた―――


---------- 続 -----------

最終更新:2006年09月04日 02:30