ややこしい事 (矢×山)by 192さん
1
まーた、ややこしい事件に巻き込まれそうやなぁ。
そう感じると、自然と大学へ、上田の元へと足が向かう。山田も居るやろか、そんなことも脳裏にかすめる。
「何期待しとんねん」
会っても喧嘩ばかり、だいたいあいつのせいで、何度危ない目にあったことか。それでも、奈緒子のことがやけにちらつくのは何故だろう。
「嫌よ嫌よも好きのうち、ってか?」
あー、阿呆らし。1人悪態をつきながら、上田の個人部屋のドアに手をかける。
「センセーェ、ご機嫌うるわしゅっ、って何しとんねん山田」
「へっ?!やややや、矢部さんっ?!」
ドアを開けると、そこには今まさに思っていた女性がいた。
「まーっ、どこにでも現れよってコイツは」
毛布を身体に巻きつけ、やけに慌てふためいている。
「や、矢部、いいか、これ以上こっちへ来たら、来たら死ぬぞ」
「なに阿呆なこと言うとんねん」
「き、来ちゃだめ!何にもいないわ!なんにもいないったら!」
毛布に隠れるようにもぞもぞしている。頭隠して尻隠せず、悲しいことに生足が毛布からはみ出ている。
「ったく、何隠しとんねん。お前に隠すもんなんかあるかーい」
ずかずかと踏みより、怯えた奈緒子の毛布を奪い取ろうとした時、何かが側に落ちているのを矢部は拾い上げた。
「なんやこ...うわぁっ」
「あっ、」
拾い上げるとほぼ同時にそれが何か気づき、床に投げた。
「なんでこんな所にこんなモンが落ちてああぁお前らまさかここで」
「うー、上田のやつ。だから処理はきちんとしろとあれほど......!」
落ちていたのは、使用済みのスキンだった。
「うえー、触ってもた、触ってもた!えんがちょきった!と......あっ、ということはまさか山田お前、その毛布の下」
「そ、そうですよ。だから早く出て行ってください。あ、でも一応下着だけはつけていますよ」
どうやら隠していたのは、奈緒子自身であったようだ。
「大学でなんちゅーことをしとんのや」
「しょうがないじゃないですか!だって上田さんがトクウエおごってやるっていうから仕方なくここまで来て」
「なんや呆れた、寿司につられたんかいな!」
「そ、そんなんじゃないですけど......食べ終わったら、その、なんか、そういう雰囲気になって」
「どんな雰囲気じゃーい!」
「どんなって、そんなのどうでもいいじゃないですか。着替えちゃいますから、出て行ってください」
食って、ヤって、講義ってどないな身体しとんねん。その時、矢部の中で鎌首がもたげた。
「あー、上田センセはどこにおるんや?」
「上田先生なら授業で当分帰ってきませんよ。その後補講もあるらしくて。それが解ったならもういいでしょう、早く出て行ってください」
目の前には、あられもないであろう姿の山田が居る。そして、上田もまだ当面戻ってこないという。天使と悪魔がささやく。
「えぇい、辛抱ならん」
悪魔の圧勝劇である。
2
毛布は剥ぎ取られ、悲鳴を出されないようにか、口で口を塞がれた。
「んっ?!」
突然の出来事に驚き、目を見開く奈緒子。必死に抵抗するものの、力強く押さえつけられそう簡単には抗うことはできなかった。徐々に舌が侵入してくる。
「ん~っ、んっ~!!!」
息が苦しい。必死の抵抗も虚しく、こじ開けられ、舌を舌で絡めとられた。噛みついてやろうと試みるものの、何故か矢部だと思うと出来ない。それでも、感じている自分が少し嫌だった。
「はぁ、はぁっ......なんてことをするんですか、矢部さん」
息も絶え絶え、今度は首筋を舐ってくる。
「ええやないか、もう」
よくはない。一体どうなっているのだ。
「なんや、下着ってシャツとパンツだけやないか」
面倒くさくなって、ブラジャーは後でいいやと思い、シャツとパンツだけを着用した自分がとても恨めしい。薄いシャツ越しに、乳首をつねられた。
「にゃっ......」
「感じる時もそんな言葉なんかいな」
ニヤニヤと意地が悪く見つめてくる。コリコリと指でなじったり、あま噛みをしたりと、だんだんと奈緒子の余裕は奪われていく。他の所は触れない、触れてくれない。頭の奥がじーんとしてきた。
「苦しそうやな、それとも、気持ちええんか?」
「はぁっ、ふにゅぅ、そんなわけ、あるか」
あれ? 違う、ちがうの。
「そんな顔で言うても、説得力ないで」
あぁ、じれったい。
「直接触ったら、もっと気持ちええかもなぁ」
布越しじゃなくて、もっと。
「こんな姿を上田センセが見たら、どんな反応をするやろ」
もっと、もっと、もっと、
「もっと、気持ちよくさせてください......」
わたしは
3
あいつが堕ちた。
奈緒子は矢部の手をとり、自分のシャツの下へと拱いた。
「仰せのとおりに」
シャツをめくりあげ、思いきりくらいついた。
「あぁぁっ」
奈緒子の吐息がもれる。いつの間にこんな艶かしい女になったんや。舐り、いじり、あま噛みし、奈緒子の反応を楽しむ。
「だめです、だめ、おかしくなる」
「こっちでこんなんなるなんてなぁ、下なんて、どうなっとんのやろ」
パンツの上から触っただけで、ぐちょぐちょなのがわかる。パンツをずりおろして、ぬらぬらと光る秘部をひと撫でする。
「こんなにして、センセーでもワシでも誰でもええんか?」
奈緒子は違うと必死に首を横にふる。こんな美しい表情を、センセはいつも見てんのかいな。妬けるわー。
「なァ、そろそろこっちも我慢の限界やねんけど」
キスをすると、奈緒子は小さくうなずいた。
手を引き、上田の机まで連れていく。 いつも上田が使っている椅子に矢部が座り、その上に奈緒子を座らせる。
「いつもセンセはゴムつけとったんか?」
コクリと頷く。じゃ、ワシはつけへんで。矢部は奈緒子の中に熱り勃ったものを入れ、ゆっくりと動きはじめた。
なにがどうなろうと知ったこっちゃない。奈緒子はもうワシのもんや。
「ナマは始めてかいな」
「はじ、めて、ですっ」
もう、元には戻れない。
「んんっ、あっ、あっ、はぁあっ」
ずちゅ、ずちゅ、という水音と喘ぎ声が響く。柔らかな粘膜が、矢部のものを締め付ける。お互い、一心不乱に快感を求め合う。
ずっとこうしてやりたかった。山田が上田と懇ろなのはうすうす気が付いてはいたが、自分が出るような幕ではないとも悟っていた。
それでも、いつも顔をあわせる度に小憎らしいだけでなく、一生この女を愛してしまうのかもしれないと怖かった。自分はもっと、適当に、楽に、生きていただけのはずなのに。
「中に、出させてもらうわ」
2人は、絶頂に達した。一瞬の快楽に見えた奈緒子の姿は、蠱惑的だった。
矢部はベルトとズボンをなおし、奈緒子は洋服に着替えた。金属的な音と、衣擦れの音のみの世界だった。
「私も、好きだったのかもしれませんね、矢部さんのことも」
「何言うとんねん、ただちょっと溜まっとっただけや。第一、矢部さんのことも、ってなんやねんな」
再び静寂が広がる。奈緒子は着替え終わり、ドアへと向かう。
「今度は、矢部さんも全部脱いでくださいね」
それじゃあ、また。と、矢部を残して奈緒子は出て行った。
おい、と投げかけたが、閉じられたドアが虚しく返すだけであった。
終わり
最終更新:2014年03月04日 23:48