姫初め

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4

  ―――ムカつく。

  さっきから密着している腰の辺りに、少しずつ主張している巨根も。

  決して認めたくはないが、ほんの少しだけそれを期待している自分自身にも。


  そんな複雑な気持ちの私をよそに、上田はゆっくり内腿を撫でていた手を、一番敏感なところへと忍ばせてきた。

  「…ふっ…」
  「慣れてきたとは言え、良く濡らさないとな…YOUだって、気持ち良くなりたいだろ?」
  「そんな、訳…ない…っ」

  下着越しに軽く指で撫でられてるだけで、少しずつ追い立てられていく。

  もどかしい思いはするものの、それと気付かせるのも、ましてや、言葉にすることも負けた気がして、頑なに上田の方に顔を向けようとはしなかった。

  「まあいい。この天才上田次郎、YOUの好きなところは分かってるからな…フハハハ!」

  それ「天才」じゃなくて、回をこなしてるうちに覚えただけじゃん!

  と心の中で突っ込んでるうちに、今度は下着の横から直に指が触れる。

  「…!」
  「おう、熱いな…」

  何やらくすぐるような仕草で指を動かしていたが、じれたように
  「おいYOU、ちょっと腰上げるんだ」
  「え…」

  数センチだけソファから腰を浮かせた途端、上田は私の華麗なマジックにも劣らぬ早業で下着を下ろす。

  「!?」

  軽く混乱する私をよそに、上田の武骨な長い指が侵入してきた。

  「んぁ…っ」
  「いい反応だ…」

  上田は満足げに呟いて、もう一本指を増やす。

  「君は、ひねくれ者だからな…ここを、こうされるのがいいんだろう?」

  私の中で上田さんの指がぐるりと回されて、ある一点を指の腹で撫でられると、魚のようにびくりと跳ねた。

  「…ぃ…あっ…!は…ぅんっ…」

  テレビからの音声と、お互いの吐息や衣擦れの音の他に、時折何やら粘着質な音が混じってくる。それが、自分から発せられてるものだと気付いた瞬間、羞恥で顔から火が出そうになる。

  「…今、締まったな」
  「な、にがっ…」
  「ふっ、カマトトぶりやがって。ここ、俺の指が入ってるところ…だ」



5

  言うなり、わざと音を立てるように指を大きく動かす。

  「や…だ、これぇっ…」

  上田は抗議の声を封じるように、耳を舐める。

  「ひっ…」
  「なあ…YOU、そろそろ…いいか…?」

  聞かれる前からずっと腰に当たってはいたが、わざと惚けてみる。

  「な、何が…?」
  「いい加減、素直になれよ…この、じゃじゃ馬娘が!」
  「―――――!!」

  胸を触っていた手で乳首を、中を触っていた手の空いていた指で突起を、それぞれ強めに摘まれて、そのあまりに強烈な刺激に頭の中が真っ白になって―――イってしまった。


  ソファにもたれて、まだ息が整わない私を尻目に、上田はいそいそとズボンのファスナーを下ろす。

  「…入れるぞ」

  ソファに腰掛けたまま、下着ごと半分だけズボンを下ろした間抜けな体勢で、くったりしている私を後ろから抱えるとスカートをたくし上げ、ソファにいた姿勢のまま、ゆっくりと挿入してきた。


  「…ぁ、あ…ぅんんっ…!」
  「ぅ…おい…っ…YOU…もっと、力抜け…保たないっ…だろ…」

  じわじわと私の中を侵す、上田さんの熱さからはもう抗えない。
  とても楽しみにしていたはずの「暴れん坊将軍スペシャル」のテレビ画面を虚ろに見つめ、全く内容の入って来ない音声を聴く。
  ああ…上様の立ち回りだ…と
  穿たれながらぼんやりと考えていると、上田がこんなことを言いだした。
  「え、液晶、テレビにっ、なったのが、少々、惜しいな…」
  「?…な、ぜ…?」
  「ブラウン管、だと、君のっ、姿が映るじゃ、ないかっ」

  快楽に溺れかけ、朦朧とした頭が、映るはずのない私と上田さんとの行為を大画面テレビに映す。
  古典的マンガ表現のごとく、頭から湯気が出そうなくらい恥ずかしくてテレビから顔を背けると、上田さんの唇が触れた。

  「YOU…そんなに、締めるな…っ」
  「し、締めて、なんかぁっ…」
  「……まただ」

  そう呟いて、再び唇が触れる。今度は、唇に。
  触れるだけのキスからだんだん深く、そして唇の隙間から舌をねじ入れ、口の中までも侵す。

  「んっ…うぅ、ふ…」

  ―――何かが、身体の内側からせり上がって来る。

  上田さんも限界が近づいてるらしく、喘ぐ速度が速くなり、どちらのものか分からない汗が混じり合う。

  「はあっ…はあっ、………奈緒子…っ、奈緒子…!」

  こんな時だから、いつも気付いていないと思ってるだろうが、そんなに何度も熱く名前を呼ばないで欲しい。


6


  そんなに求められてるのかと、勘違いしそうになってしまうじゃないか―――

  「…くぅ…も、う、出す…ぞ…っ!」

  内側からせり上がるものが一気に身体を貫いて、頭のてっぺんまで来た時―――

  「…あ、ぁああ――――!!」

  私の中の上田さんから一際熱いものを放たれ、お互いほぼ同じくして果てた。





  「………上田さん」
  「ん…?」
  「そろそろ…離して欲しいんですけど」
  少し息が整った頃、上田さんは私を抱きかかえたまま、私の肩に顔をうずめていた。

  「まだいいじゃないか」
  「というか…結局、TV途中から見られなかったし」
  「………」
  「いいから早く抜け!このタコ!」

  上田は半ば渋々私をかかえた手を緩めたので、私はゆっくりと腰を浮かせ、抜こうと試みた。


  「んぅっ…」

  胎内から熱い楔が引き抜かれる感覚に、ぶるりと小さく震える。
  半分程引き抜いた時、上田が私のセーターを下着ごと捲り上げ、視界を奪った。

  「うにゃーっ!何すんだ!おい、上田!」
  「悪いな、YOU」

  自分のセーターと格闘し、身を捩らせる。

  「ちょっ…!また、中、ピクンって…」
  「おおぅ…そんなに動かすんじゃない」

  上田は私の視界を奪った服を全て剥ぎ取ると、しっかりと腰をつかんでぐるりと反転させ、向かい合わせの状態にさせる。

  「冗談、です…よね…?」
  「どうせなら、このままあと2、3回挑戦しようじゃないか」
  「ば、バカっ…!せめて、付けてしないと…!」
  「大丈夫だ。YOUのバイオリズムは熟知して、妊娠し難い日を選んでるし…それでも万が一の場合は、責任は取らせてもらうと、YOUのお母さんに確認済みだ」

  きっぱりと言いきった上田に、思わず意識が遠のきかける。どちらにしても、なんてことを…

  「…あとで、腹いっぱい寿司食わせてやる」
  「……トクウエ以外認めませんよ」
  「任せろ。俺は生まれてからずっと、約束は破ったことはない」

  もう突っ込むのも疲れて、上田さんの首に腕を回したのだった―――


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最終更新:2014年03月06日 16:21