貞子 by 59さん
一夜村の契り祭の迷信を証明してくれと、西園寺から依頼されたが。
あの東崎とかいう〇ーテルのコスプレをした女性が現れた以外には
和やかな普通の祭りじゃないか。
このまま何事もなく無事に過ぎれば
研究費を惜しみ無く出して貰えるし
---それに---
衝立の向こう側、いやしくも穏やかにとはいかないが
寝息を立てている山田奈緒子と祭りに因んで契りを結んだ。
片方が誓いを破ったら死ぬ、という祭りの因習は自分に降り懸かる事は無いと確信している。
万が一本当だったとしても、被害は山田一人だ…
互いの気持ちが通い合っている、という本来の意味での契り祭りには当て嵌まらないんだろう。
布団の中でほう、っと小さく溜息をつくと、
衝立の向こうの相変わらず寝相が悪い山田が妙な寝言を言っていた。
今度は何かと思いながら、ゆっくり目を閉じる。
ゴソ、ゴソと畳を這うような音がするが、
いつものパターンだと衝立を越えるまでには起きているから
まさかこちらにまでは来ないだろうと思っていた。
「痛っ…」
うとうとし始めた頃に額を叩かれた。
仕方無く布団から非難しようかと目を開けて闇に慣れて来た頃
「…貞子!?」
俯き、長い髪を垂らしたまま畳を這い、自分を乗り越えようとしていた。
「起きろ!」
そう言いたかった。だがその口には、何か柔らかくて温かいものが触れた。
「それ」が何であるかはすぐに分かった。
--山田の、胸だ--
寝相が悪い為にちょうど顔の上を体が通った。ただそれだけだ。
何も意識する事は無い!何も無いはずだ!
という逡巡の間も
山田は私の体の上をゴソゴソ這っている。
と、突然かくんと肘の力が抜けて
私に覆い被さるような格好になった!
「……!」
倒れた向きが悪かったのか、二人とんでもない格好になっているのは分かっている。山田の顔は私の下腹部に、そして私の眼前には山田の臀部がでーん、と拡がっていた。
落ち着け、落ち着け次郎。山田はただ寝ぼけただけだ。ただのドッキリハプニングだ!
しかし山田の体が倒れた時、あれだけ乱れた寝相が止み、そのまますやすやと普通に寝息を立てて眠ってしまった。
YOU、待て、待つんだ。そこは落ち着く場所じゃないだろう?
うっかりそこで頭を動かしたら…って、わざとか!?
この体勢は非常にまずいだろう!計らずも69じゃないか!
とにかく落ち着こう!フェルマーの定理を思いだせば大丈夫だ。平常心だ!次郎!ベストを尽くせ!
そのまま、山田が離れるまで一睡も出来ずに夜が明けた。
さすがに本人に言える訳もなく、
いろいろモヤモヤした気持ちを抱えたまま
一夜村での一日が始まったのだった…
最終更新:2014年03月05日 17:51