焼きもち by ◆dv1/DP6HGsさん

6-10



あぁ、キスされるんだな、とわかってた気もするけど、
そう思うより唇が触れる方が先だったかもしれない。
けど、そんな事はどうでもよかった。
背中には腕が回されて、何度も何度も口付けて。
どれ程の時間が経っただろうか。
息苦しさで我に帰って、何とか上田を押しやった。
「はぁっ…苦し…お前もうちょっと考えて、んっ!」
隙ありと言わんばかりに口に舌が入ってきて口内を撫で回す。
優しく舌を絡め取られて、また私の頭は簡単に思考を手放す。
もう、どうなってもいいかな…なんて朧気に思った頃、上田はやっと唇を離した。
「you…可愛いな」
「な、気持ち悪い事言うな」
やっぱり普段の勢いがないのが言いながらわかった。
上田は笑いが抑えられないといった様子で返してくる。
「ふっ、そんな真っ赤な顔して言っても可愛いだけだ」
何でこんな時だけ余裕があるんだこいつは。
「…上田さんも顔赤いですよ」
「嘘だろ!?」
「あ、赤くなった」
「…こいつ」
ふっ、やっぱり私の方が一枚上手だな。
「それくらいで優位に立ったつもりか?
いいか、俺はyouとは決定的に知識の量が違うんだよ。
今までどれだけ練習してきたと思ってるんだ」
「そんな事自慢するか普通…っていうか、普通こんなに雰囲気ぶち壊しにするか?」
「それはyouのせいだろ」
「……」
「………」
もう、何でこうなってしまうんだろう。
知識が豊富だとか自慢してた目の前の男もこんな時の対処法はわからないらしく、
目が泳いでいて私なんて目に入ってないみたいだ。
やっぱり肝心な所は私が動かないといけないのか。
しょうがないなぁ、もう。
心の中で小さく決意を固めて、私はそっと上田の頬に手を伸ばした。


驚いた上田が向けた視線に思わず止まりかけたが、勢いのままにそっと唇を重ねた。
おずおずと食むように唇を動かすと、すぐに上田はさっきの調子に戻って
あとはもう、上田のペース。
気付けば押し倒されるような体勢になっていて、お互いの息も荒くなっていた。
もっと触れて欲しい。
そんな想いが浮かんだ事がたまらなく恥ずかしかったけど、
でも、どうしようもない。
気持ちを悟られたくなくてそっと視線を外すと、上田は小さく笑った。
「…何で笑うんですか」
「もう何も言うな。さっきみたいになるのは嫌だからな」
「嫌です」
「おいyou」
私はそっと腕を首に回して抱き寄せて耳元で囁いた。
「あの…私も…好きですから。だから…」

優しくしてくださいね、という言葉はキスの嵐で押し込められた。


至る所に唇をつけながら、上田は器用にボタンを外していく。
あっと言う間に服は脱がされ、とうとうブラも外された。
身につけているのは下着一枚のみ。
「そんなに見るなぁ…っ」
恥ずかしくない訳がない。
視線のやり場に困って思わず目をつむってしまう。
「気にするなyou。小さいが…綺麗だよ」
そう言って上田は胸に顔を埋めて、また至る所にキスしてくる。
ゾクゾクして思わず足を擦り合わせていると、一際強い刺激に襲われた。
「やぁっ…」
「やはり感度はいいみたいだな」
恐る恐る見てみると、上田は胸を揉みしだきながら先端に口付けていた。
「んっ…あぁっ…」
顔が、いや顔だけじゃない。
身体中が熱くて、身体の奥が疼いてしょうがない。
何なんだろうこの感覚。
上田の顔はどんどん下に下がっていき、
気付けば太腿に舌を這わせていた。
口から出るのは自分の物とは思えない喘ぎ声ばかり。
足を開かれても恥ずかしいとも思わなかった。
考えられるのは、早くどうにかして欲しいという事だけ。
「you、随分濡らしてるじゃないか」
上田は笑みを浮かべてこっちを見てくる。
「うっ、うるさい…もう一思いにやってくださいよ」
「一気にいきたいのは山々だがな、
俺は紳士だから初めてのyouを気遣って徐々に慣らしてやってるんだ。
まずはじっくり愛撫しないとな…」
「やるなら黙ってさっさとやれ、この変態」
「変態ならyouもだろ。あんなに喘いじゃって更に更にこんなに濡らして」
「あーもうわかったから言うなっ」
上田はあの余裕たっぷりな笑みを浮かべて、顔を足の間に戻した。
ムカつく。でも…
その先を考える間もなく、また強い刺激が身体中を駆け巡る。
「んあぁっ…はぁっ…」
気持ち良い。気が遠くなる位に。
でも、何か足りない。
「んっ…うえださん…」
お願いがあるんですけど。
「どうした?」
強がりな私はなかなか言えないけど。
「あの…起き上がってもいいですか?」
本当に言いたいのはそんなことじゃないのに。
上田は少し悲しそうな顔をした。
「…気持ち良くなかったのか?練習は完璧だったはずなんだが…」
それには答えずに私は身体を起こした。
そして向かい合う形になった上田にそのまま抱きつく。
「…この方がいいです」
多分、私が欲しかったのは快感じゃなくてあなたの温もり。
「you…」
上田が頬に唇をつけたのを合図に、またキスの嵐が始まった。


片方の腕は背中に回されたまま、もう片方の手は下へと伸びていく。
まだ十分に濡れているらしく、上田の指はすんなりと中に入ってきた。
自分の中で自分じゃないものが動いてるなんて変な感じだ。
変なだけじゃなくて、ちょっと気持ち良い。
やっとキスが止んだと思ったら、同じ位息の荒い上田が口を開いた。
「はぁっ…奈緒子、腰浮かせて」
不安じゃないと言えば嘘になる。
けど、今はそんなのがどうでもよくなる位穏やかな気持ちだった。
大丈夫、死ぬ訳じゃないんだし。
私は小さく頷いてそっと腰を上げた。
嫌でも目に入る、冗談だとしか思えない上田の巨根。
「力抜かないと怪我するぞ」
「なるべく痛くなく…って無理ですよね」
「努力するから安心しろ、you」
そして、口付けと同時に上田は侵入してきた。
物凄い圧迫感だったけど、上田は少しずつ入っていく。
「うっ、痛っ…あぁっ」
「はぁっ…you、力を抜かないと…」
だからそうできれば苦労しないんだって。
痛くて痛くて仕方なかったけれど、時間が経つにつれて少しずつ慣れてきた。
「上田さん…ちょっと大丈夫になってきました」
「そうか…動いて大丈夫か?」
「はい…多分…」
「動き出したら止まらなくなるぞ、きっと」
「あの、私が痛がっても気にしないでくださいね。何とかなりますから。ただ…」
私は背中に回した腕に少し力をこめた。
「…何だ」
「いや、やっぱ何でもないです」
「言えよ」
「いいです」
「奈緒子」
あぁもう、言わなきゃよかった。
顔が熱くなるのがわかる。
「あの…離さないでくださいね」
上田は小さくフッと笑った。
「わかったよ」
そして上田はゆっくりと動き始めたが、激しくなるのにそう時間はかからなかった。
肉がぶつかり合う音が耳に響く。
「うえだ…さんっ」
「奈緒子っ…」
理性なんて吹き飛んでるように見えても、上田はちゃんと約束を守ってくれた。

しっかりとした腕の中で繋がって、絡んで、口付けしては抱き合って。
肌が二人を隔ててることすら鬱陶しくて、
このまま溶けてしまえばいいと本気で思った。
「あぁっ、うえださん…もっ…だめぇ…」
そう口に出したのと同時に目の前が真っ白になって
私はそのまま意識を手放した。



「ぅん…うえだ…さん?」
目が覚めると上田はいなくて、身体には毛布がかけられていた。
ちゃぶ台に目をやると「夕飯を買ってくる」との置き手紙。
時計を見るともう9時を過ぎていた。
…何時間やってたんだ?
「おぅ、you起きたか」
びっくりして振り返ると、コンビニの袋を持った上田が立っていた。
「人の家なんですからノックするなりしてくださいよ」
「俺が家賃払ってるんだから俺の家だろ」
「あーはいはい。それより早くご飯食べましょうよ」
「食べたら2回戦だからな」
「は?何の話ですか?」
「さっきの続きに決まってるだろ」
「…おとこわりします」
「今ちょっと迷っただろ」
「おとこわりします」
「試してみたい体位とか色々あるんだよ」
「おとこわりしますって言ってるじゃないですか!」
「じゃあ無理矢理やるまでだ」
「だから犯罪ですって」
「どうせ通報なんてしないだろ。俺がいなくなって困るのはyouだからな」
「それは上田さんの方じゃないんですか?」
「さっき離さないでとか泣きそうな顔で言ってたのは何処の誰だよ」
「…空耳じゃないですか?」

結局勝てなかった私は一晩中上田の好きなようにされてしまった。
立ったままだとか後ろからだとか
一体どれだけ試せば気が済むんだ?こいつは。
やっと終わったと思ったら、
今度は道具を用意しておくから楽しみにしてろとか言いながら鼻息荒く去って行った。
何をどうしたらあんな変態が出来上がるんだ?
結局されるがままになってしまうんだろうけど。
あの馬鹿力に敵うはずがない。
でも、絶対に私はハマったりしないように気をつけないと。
…上田にはハマってしまったのかもしれないけど。


おしまい。
最終更新:2007年05月06日 23:29