*

深夜、狭い車内で放す気のない大男に抱きしめられるという人生最大のピンチに陥った奈緒子だったが、頭の回転という点では有名大学教授をはるかにしのぐ彼女は、唸りながらもすぐに頭の中で解決の糸口を探り始めていた。

あのパトロール中の警官はもういない。よりによって奈緒子が追い払ってしまった。
それに助けを呼ぶために大声を出しても、恋人の痴話げんかと思われるのが関の山かもしれない。
道に人通りはないので警官以外の助けは同様に得られまい。
いつも奈緒子に見えつ隠れつあとをつけているストーカー…もとい、熱心なファンの確かコチンダさんも彼なりの生活もあるのか今夜は生憎見かけない。いつぞやの黒門島の時は別だが、肝心の時に役に立たない男だ。
どこかから上田の持っている携帯に電話がかかってくれさえすれば、必ず出ずにはいられない上田の習性を利用して逃げ出すことも可能だが──この時刻ではまず希望はない。
つまり、外部の要因の助けは望めないということになる。
奈緒子一人の知恵と力でのりきるしかない。

上田の望んでいる事はなんなのか。
一応こうして抱き締めているだけで満足しているようだが、処女の奈緒子とて彼がなぜぐずぐずしているのか、その理由はなんとなくわかるような気がする。
なにかが起こらないかとほのかかつ本能的な期待をしているに違いない。
格好つけで気弱で奥手の彼が自分からそういう強引な状況に持ち込めるとは思えないからこの期に及んでもなぜか奈緒子はさほど恐ろしさを感じないのだが、それにしても意地汚いと思わずにはいられない。
なにかしたいならしたいと言え。
したいなら、キスのひとつもかませ。
「し、したいわけじゃ──ないけど……」
思わず呟いた一言を上田が敏感にキャッチした。
「you?」
「な、なにっ」
思わずとびあがりそうになって奈緒子は上田の目を見た。
見てしまってから気がついた。いつのまにか上田は奈緒子の顔を覗き込んでいたのだ。
「………」
「上田」
「………」
上田の唇がむにむと開いたり閉じたりしている。
唇の上の髭がつられて動くから、公園内の離れた水銀灯頼りの薄暗がりでもよく見える。
「むにむにするなっ!」
奈緒子は赤くなって囁いた。
「む……むにむにって?」
自覚がないらしい。
「アピールするなって事ですよ」
「アピール……」
「き、キスとか…したいって、まさか思って…ますんよね」
「ますん?」
「聞き返すなっ」
上田の唇の動きがやんだ。広い肩の線が低くかがみ込み、奈緒子の背を抱いていた腕が距離を縮めてきた。
まさか。
「上田」
「……」
上田の小鼻が一瞬ふくらんだのが見えた。




「上──」
奈緒子は目を見開いた。
くっついてしまった。
唇が、くっついてしまった。
上田の唇と。
(ええっ!?)
奈緒子は叫ぼうとしたが叫べなかった。これが唇を塞がれているという状態か。
すぐに上田は顔をおしつける力を緩めた。
信じられないという目をしているのがわかった。
上田の唇の間からちらりと舌の先がでて、確認するように奈緒子の唇の輪郭を撫でた。
奈緒子は唇を開いて自分も慌てて確認した。──特に変な味はしない。
舌先が、上田の舌と触れた。
かすかに漢方くさい匂いがした。さっき張り込み中に上田が舐めていたのど飴の風味かもしれない。
上田の目が薄く細まった。狭いシート側でなく、フロントガラス側の腕を抜き、上田が眼鏡を外した。
何をする気かすぐにわかった。
抱き寄せられて、奈緒子は目を閉じた。
キスの続きを防げないとわかっていた。

奈緒子の背中にまわされた上田の左手の腕時計はいつの間にか午前一時半を示している。

 *

嘘ばっかりだ。

奈緒子を抱いたって興奮なんかしないとか豪語していたくせに上田の激しい鼓動はやむ気配がない。
何もしないとかいいながらキスだって今現に交わしている。
──尊敬?
なんでこんな奴、尊敬なんかしてやらなければならないのだ。

そう思いながら奈緒子はまだ迷っている。
探るようなキスを続けている上田の髪をおもいっきりむしってやるとか、髭を指先でつまみあげるとか、しようと思えば奈緒子は簡単にそうできるはずなのだ。
抱き締められてはいても腕をとられているわけではないし、狭いとはいえ上田の腿ぐらいは蹴り付けられそうな気がする。
なのに奈緒子はそれをせず、上田に抱き締められキスされるままでいる。
躯が動かないのだ。
上田なんかとキスするのは厭なのに。
厭なはずなのに、上田の温もりがあたたかすぎて動けない。

さっきの張り込みですっかり躯が冷えたからかもしれない。
少しでも上田の熱を利用しようとして、それで今だけ動けないのかも。

奈緒子はそう思った。
いつもの彼女ならそんなバカなと一蹴しそうな詭弁である事に当の彼女は気付いていない。
ジャケットの背中にあたった指先が温かい。
きっとこの下の上田の躯はもっともっと温かいはず。




奈緒子の考えを見抜いたわけではなかろうが、上田が少し躯を離した。
「you」
久しぶりに聞くような声が奈緒子の躯を震わせた。
「──いやなら厭と言ってほしい。無理強いは嫌だ。過ちも」
奈緒子の声は小さかった。
「……さ、最後までするつもり……なんですか」
上田は一瞬黙り込み、それから奈緒子に囁いた。
「できるところまで」
半端な事を言う男だと奈緒子は思う。
それがこの期に及んでの上田の逃げなのか、それとも嘘なのかが彼女にはわからない。
「妊娠するのは厭です」
「………あ」
上田が虚をつかれたような声を出した。
「……そうだな」
「忘れてたんだろ」
「…………」
奈緒子はふっと肩の力を抜いた。上田の、なんだか情けないような素直な目が不思議だった。
嘘つきのくせに、上田の目と躯はどうしてこんなに正直なのだろう。

「上田さん」
「………」
「上田さんの事、尊敬はできないけど──」
「…you」
「せめて少しは本当の事言ってくれたら、私は嬉しいと思います」
「………」
上田が喉の奥で声を詰まらせた。
密着している躯を奈緒子の掌が撫でている。
躯の線を確かめるようにその小さな温もりは躯の前に移動して、上田のジャケットの襟を掴んだ。
「上田さん」
「………」
「どうしたいんですか」
「………」
上田の喉仏が奈緒子の目の前で上下に動いた。
奈緒子は目を伏せて、そろそろと掌をさげた。
ジャケットの内側。ベストを撫で、さらに下に。
「私、知ってるんですよ。さっきから、腿に当たってるんです」
「……you。はしたない事言うな」
「はしたないのは上田さんの躯じゃないですか」
「………」
上田も動かなかった。さっきの奈緒子と同じだ。
ここで抱き合っているのは嘘つきばかりだ。

「私だって厭なことは厭だし、無理強いも厭ですよ。過ち…?……も」
「………」
「でも、じゃあ、してもいいって思った事は…その、してもいいんですよね。はしたなくても」
「you…」
上田の声は喘ぐようだった。腹の前で奈緒子の指が躊躇している。
「……目、光ってる。上田」
「し、仕方ないじゃないか」
「ぎらぎらさせるな」
「させようと思ってさせてるわけじゃない。you。その手…どうするつもりなんだ」
今度は正直すぎると奈緒子は思い、溜め息をついた。



奈緒子は呟いた。
「ちょっと離れて」
上田は無言でわずかに身を退いた。
密着していた躯の影になっていた場所に水銀灯のぼんやりした灯りが届く。
そっとその上に掌を置く。
「おう…」
呻いて上田が吐息をついた。
「大きいですね」
「そ、そうかな。そうでもないだろう」
「きっとすごく痛いんですよね。…怖いです」
「そんな事は」
「嘘つき」
「………」
奈緒子は目を泳がせた上田の顔の前に顔を寄せた。
「こんなの、私に入れるつもりだったくせに」
「you……はぁう」
ぐに、と掌全体で掴まれた上田は変な声を出し、慌てて制止するように奈緒子を抱きすくめた。
「待て。待てまてyou!そ、そんな大胆な…!」
「──私が大胆にならなきゃ上田さん、死ぬまで童貞のままじゃないですか!」
奈緒子の声はわずかに高まった。薄暗がりで見えないが、頬は真っ赤だった。
「それでいつまでもいつまでもぐじぐじぐじぐじ私に付きまとうんですよ。焼肉券持って。きっとそうです」
「ゆ、you。それは暴言──」
「黙れバカ上田!」
奈緒子は顔をうつむけ、いきり立っている問題の部分を睨みつけた。
「今日全部は無理ですけどね。できるとこまでがんばりますから、上田さんも協力してください」
「協力?」
「ズボン脱いで」

上田は目を白黒させた。
「you」
「何ですか」
ベルトのバックルをいじりながら奈緒子はしかめた眉をあげて上田を見た。
「これ、どうなってるんです。してほしくないならやめますけど」
上田は慌ててベルトを抜き、すぐに奈緒子がボタンを外そうと奮闘する様子を見て口を開けた。
「ど、どうしたんだよ、you──」
「上田さんって」
奈緒子はボタンを外すのに成功し、次にはジッパーにとりかかった。
はりつめすぎていてちっとも動かない。
「ここまでしても、どうせもうすぐ怖くなってやめろって言うに決まってますから。だから急がないと」
「……………」
バカにされているのかと上田の方は考えた。ちょっと冷静な口調で彼は言った。
「そんな事はないよ。だが君にばかり面倒をかけるわけには」
「じゃあ自分でするんですか?」
奈緒子は好戦的な目で上田を見た。
「助かりますけど。私やり方わかりませんから」
上田は再び声をつまらせた。
「ば、バカな事言うなよyou。なんで君の前で地位も名誉もある俺が──」
「地位と名誉は関係ない。……黙っててください。さっきみたいに」
「………」
上田は指示に従った。

 *

結局どうしても奈緒子にはおろせなかったジッパーは彼がなんとか処置をした。
弾けるように飛び出してきたブリーフの伸び切った前面を見て上田は顔を赤らめた。
奈緒子は一瞬口を開けたままになったが深呼吸をした後は、もうあまり文句を言わなかった。




「上田さん」
それどころか声は優しかった。
「もう少しそっちに寄ってください」
狭いシートをできるだけさがり、奈緒子のフェミニンな細い躯が自分の腿にすり寄るのを上田は鼻息を荒げながら見守った。
ちら、と奈緒子が上目遣いに彼を見た。
「…フンフン言わない」
「………」
ブリーフ越しに奈緒子の指が触れた。
それだけで電流が走ったようで、上田は呻いた。
「動いた」
奈緒子の驚いたような声がする。
「う、動くよ。当然じゃないか」
「当然……?…私、女ですからわかるわけないじゃないですか」
温かな手が腹に触れ、彼女がブリーフの中に掌をいれようとしている事に上田は気付いた。
「おい」
「腰浮かせてください」
「…………」
ハンドルが邪魔だったが、到底抗う事などできそうになかった。

はっと気付いて上田は腕を伸ばし、後部座席に転がっているティッシュボックスをつかみ取った。
奈緒子の前に差し出すと、彼女はけげんそうに眉を顰めた。
「何?」
「要るんだ」
「どうして?」
「……いいから」
奈緒子は自分の膝の上に箱を置き、またふーっと息をついた。
「いきますよ、上田さん」
手にはブリーフの腰の部分。奈緒子としてもそれを目の当たりにするにはいろいろ勇気がいるらしい。
ぎゅっと目をつむっているので、上田は緊張が紛れるのを感じた。
「噛み付かないよ」
「こんな時に冗談はやめろ」

ずるずる、とはいかなかったが奈緒子はなんとかブリーフをずらせた。
肝心の部分がどうしてもくぐらなかったが、上田が手を添え、ねじ曲げるようにして取り出した。
「………………」
奈緒子が顔をあげ、目を開けるのを上田は見ていた。
口も丸く開いて、奈緒子の顔はとても困った表情を浮かべている。
「あ………」
奈緒子はきょろきょろとあたりを見回し、今さらのように車の外に誰もいないのを確認した。
「あの」
「………何だよ」
「……いえ。何でもありません」
奈緒子はきゅっと唇を閉じた。
自分が奈緒子の柔らかそうな唇ばかり見ていることに上田は気付いたが、慌てて頭を振ってその妄想を打ち消した。
AV女優じゃないんだから、いきなりそんな事は──

甘かった。奈緒子の覚悟を甘くみていた。
奈緒子は親の仇をとるような勢いで、素手で上田の巨根を握りしめた。
顔をうつむけ、長い髪がそのほとんどを覆い隠しはしたものの、先端にぱくっと。



自分が何を叫んだか上田にはわからなかった。
ぬるぬると舐める舌のたどたどしい動き、柔らかくていやらしい口腔の刺激。
絡み付く細い指と唾液の熱、奈緒子の小さな呻きや吐息。
くわえられてからわずかに八秒。
あっという間に、それこそあっという間に上田は達した。
自分でコントロールする時には相当に長時間でも平気なのに、信じられないくらいの悲惨な記録だった。
それでもティッシュをとろうとしたのに、それはかがみ込んだ奈緒子の膝にのっていて、とても間に合わなかった。

どくん、どぴゅっ。

奈緒子が驚いたように身を縮めたのがわかった。
しなやかな髪が揺れ動き、その間で彼女の指に握られ、苦しそうに暴れているモノが見えた。

どぴゅ、びゅっ、びゅっ、びゅっ。

奈緒子の白い顔がそのたびにねっとりと汚れていくのが見える。悪夢のようだ。
頬に、顎に、鼻に、唇に。そればかりか額や眉のあたりまで。
耐えかねたのか奈緒子は顔を仰向けるようにして喘いだ。
上田の目の前に奈緒子の濡れた唇と上気した肌と絡み付いた精液が晒された。

びゅっ、びゅくびゅく、びゅっ、びゅ。

射精はなかなか終わらなかった。
奈緒子の白いカーディガンの胸のあたりにもうっすらと染みがついていくのがわかる。
彼女の胸すらまだ一度も揉んでないのに。
上田はなぜかそう思った。

どく、どくん。……

「……………」

やっと終わった。
上田はもう鼻ではおっつかず、口を開けて呼吸していた。
微妙な虚脱感もさる事ながら、恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうだった。
プライドもなにもあったものじゃない。奈緒子は一体、彼のこのザマをどう考えているのだろう。
目を瞑ったまま震えている彼女の次の反応が恐ろしい。

奈緒子の睫が揺れ、細い指が欲望を吐き尽くしたモノから離れた。
ティッシュを抜く乾いた音が上田の耳に突き刺さる。
彼女は目元のあたりをそれで拭うと、ようやく綺麗な目を開けた。
「上田さん」
彼女の艶やかな髪にまで飛沫が絡んでいるのを発見した上田は情けない溜め息をついた。
「………気持ちよかったですか」
「………」
上田は驚いて目を開けた。つまりいつの間にかつむっていたという事だ。
叱られるのかと思ったのだが。
奈緒子はじっと上田を見て、それからようやく恥ずかしそうに微笑した。
「……これで、もう童貞じゃなくなりましたよ」
「へ」
「良かったですね、上田さん」

上田は目をぱちくりさせた。
「ゆ……you?あの…」
「え、あの。いえ、それはもちろん本当にそうでなくなったわけじゃないですけど」
奈緒子は頬を染めた。
「い、一応。これも、セ、セックスじゃないですか」
「……………」





確かにそうだった。
だが上田としては違和感を覚えざるを得ない。

「だけど、君は──これで満足なのか」
「これでって?」
奈緒子はティッシュをさらに抜き取り、上田のモノにはらりと落とした。
「……あの、すみません、よくわからないのであとは自分でなんとかしてください」
「お、おう」
上田は慌てて躯を起こし、奈緒子の目から隠すようにして始末しながらちらちらと彼女を見た。
奈緒子はきれいに顔を拭い、乱れた髪を整えて身じまいをしている。
頬は赤いがなんだか嬉しそうだった。

「君は…もういいのか」
「え」
上田が納得いかなくて訊ねると、奈緒子は目を泳がせた。
「君は、もっと触れてほしくは──」
「い、いいんですよっ!」
奈緒子は囁いた。
「だが、その。俺だけじゃないか。youだって」
上田が食い下がると奈緒子はさらに低い声で言った。
「あの、あの、…い、今…都合が悪いんです」
「え?」
「私──その、女性には都合……ってものがあるんですっ!察しろこのボケ!」
「ああ。もしかして、youは今──」
「黙れ!!」
奈緒子の声には迫力がありすぎて上田は急いで口を噤んだ。
小さな躯は首筋まで真っ赤になっていて、奈緒子の味わっているだろう間の悪さがひしひしと窺われた。

「you」
身支度を整え、上田はティッシュのくずの山をまとめて後部座席のゴミ箱に押し込んだ。
間違ってもガソリンスタンドでうっかり渡さないようにしなければ──細かい事を考えつつ窓ガラスを細く下げ、彼は奈緒子にちらりと視線をやった。
「な、何ですか?」
「そこの眼鏡とってくれないか」
「あ。はい」
会話がもとのペースに戻っている事を嬉しく思いつつ、上田は奈緒子の顔をまた見た。

「なあ」
エンジンをかけるとそれまでの静けさが改めて思い出された。
「you。生理が終わるの、いつなんだ?この事件を解決したら──」
「上田っ」
上田を睨みつける奈緒子の、普段では珍しいほどの狼狽しまくった顔を見て上田はにやっとした。
次郎号を発進させる。
「無神経にも程があるぞ。こ、今度それを言ったら上田とは絶交だから」
「絶交なんかするんじゃないぞ」
上田は涼しい声を出した。
「……なぜなら、俺が決して早漏ではない事を、君には証明しなくてはいけないんだ」
「なんだ、気にしてたんですか。あ、そういえば確かに早かったですよね」
「……………」
上田が急に肩を落とし、スピードを落としたので奈緒子は慌てて励ました。
「じょ、冗談ですよ」
「言っていい冗談とそうでない冗談があるんだぞyou」
奈緒子は窓の外を見た。
上田の横顔が映っていて、今は実物よりそちらを見ていたいような照れくさい気分だった。




「………ふん、まあいい」
上田は再び気を取り直したように呟いた。
「次には本当に証明してやるからな。君にいつまでも童貞童貞とバカにされるのにも飽きたんだ」
「喜んでいるのかと思ってました」
「誰がだ!…覚悟しとけよ、君にはかなり辛いだろう。ふっ、ハッハッハ!」
奈緒子は赤くなった。
上田の癖に、何を大胆な事を言っているのだろう。
そう言うと、上田は小さくうそぶいた。
「俺が大胆にならなきゃyouは死ぬまで処女じゃないか」
「……し、失礼な奴だな!い、いますよ絶対。私の事欲しいって思う男性が世の中には」
「何言ってんだよ。youの処女なんかが欲しい男がどこにいるというんだ」
「私の横に一人座ってるじゃないか」
「俺は違う。これも腐れ縁で仕方なくだな…」
「あーっ嘘!嘘つき!私の事好きなくせに!」
「誰がだ!そっちこそ嘘つくなよな!」
「バカ上田!巨根!早漏!」
「それを言うなっ、俺に惚れ抜いている貧乳が!」
「貧乳って言うな、私に頼り切りのデレデレ上田め!」

 *

嘘つきな二人の罵り合いを乗せ、次郎号は深夜の道を軽快に走っていった。




おわり
最終更新:2006年10月25日 00:51