世界史

世界史の勉強法概観


世界史は暗記量が膨大であり、教科書レベルを完成させるまでが一苦労です。
その暗記量の多さは5教科の中でもトップクラスでしょう。
(参考:暗記量は世界史を10とすると、日本史9、地理7、政経5、倫理3、現社3、
物理2~5?、化学7、生物5、地学4というのが通説だそうだ。)
しかも、東大京大一橋をはじめとする難関大学では、
東大で500字前後、一橋で400字、京大で300字と、数百字の論述問題が課されています。
歴史の流れについて深く理解しておくことは必須だといえるでしょう。

さて初心者がやりがちなのですが、いきなり教科書を読むのは得策ではありません。
なぜなら、教科書ははじめて読む人にとってかなり難解な書き方がされているからです。
ゆえに、いきなり何の準備作業も無しに教科書から入ると
世界史の膨大な暗記事項の海に溺れ、世界史が嫌いになってしまうもとになってしまいます。
世界史には世界史なりの学習の順序があることを理解しないといけません。
では、どのように勉強したら歴史の流れがわかり、暗記の効率をよくできるのでしょうか。
以下、段階別に見ていくことにしましょう。


第0段階:「マンガ」

おすすめは
『世界の歴史』(集英社)です。
全20巻+別冊2巻あります。
これはマンガの中では一番よくできていると思われます。
もちろん、大学受験レベルには一歩及んでいないですが、それでも導入としては
最適だと思います。歴史が楽しくなるきっかけになるはずです。
是非、学校の図書室や近所の図書館などで探してみてください!!
また、多少値が張りますが、お年玉を使って全巻購入するという手もあります。
この段階で世界史に興味が湧いたらしめたもの。
興味が湧いた教科は必ず得意教科になりますし、楽しすぎて勉強を勉強と感じなくなるので、
自発的にその教科をやるようになり、更に“得意科目スパイラル”に入っていきます。
これは他の教科にも言えますが、まずはその教科に興味を持つにはどうするのかを考えるのです。
このような一見勉強とは関係なさそうな“種まき”がやがて大きな成果となって返ってくるのです。
特に社会科目は「急がば回れ」で最初は小学生時代のような好奇心を持つことが大切です。


第1段階:流れをつかむ本!!(特に論述問題が課される人は必須)

おすすめは
・『ナビゲーター世界史』(山川出版社)
・『NEW青木世界史B講義の実況中継』(語学春秋社)
・『荒巻の世界史の見取り図』(東進ブックス)
などです。どれも論述問題を解くための下地として比較的適していると思います。
どれか1冊相性のよさそうなものを買うといいです。
この段階ではまだ詳細に読み込む必要はなく、あくまでも全体像を掴むだけで構いません。
但し、最低限の用語にはこの段階で触れておきます。
これらを粗方把握したうえで初めて『教科書』を読むと効率がいいでしょう。


第2段階:一問一答!!

第1段階で存在を知った用語をこの段階で再定着させます。
『入試に出る世界史B用語&問題2000』(Z会出版)
がコンパクトにまとまっていておすすめです。
定期テストレベルの知識ならほぼ網羅できるし、国公立大学ならこれでOKでしょう。
『一問一答世界史B用語問題集』(山川出版社)を使ってる人も多いのですが、
あれは早慶上智レベルの細かいマニアックな単語もたくさん含まれているので
早慶上智志望の人だけやりましょう!!


第3段階:記述式問題集!!

第2段階で覚えた用語をより実践的に使えるように訓練を積みます。
・『詳説世界史学習ノート』(山川出版)~詳説世界史という教科書に準拠したサブノート。
・『はじめる世界史50テーマ』(Z会出版)~センターまでならこれ。定期テスト対策にも
・『実力をつける世界史100題』(Z会出版)~2次私大レベル。
などをおすすめしている人が多いようです。
センターまでの人は第3段階まででOKでしょう。


まずは重要語句をコツコツ憶え、次にそれらの重要語句を流れの中でリンクさせる。
その地道な作業を通じて世界史は伸びていくと思います。


ちなみに、高1の段階から世界史をがむしゃらにやるよりは
英国数に重点を置いたほうが得策だと言われています。
世界史のような暗記の比重が高い科目は、高3から本格的にやるのが効率的だと
いうのが通説です。これはもっともだと思います。
しかし、だからと言って高2までに
「全く」
世界史をやらないのも考えものです。
なぜなら先述のように、世界史は暗記量がとにかく膨大なため、高3の1年間だけで
あれだけ覚えるのはそれこそかなりの苦痛を伴うはずだからです。
高3のようなプレッシャーのかかる受験期に膨大な知識の山を前にして
呆然と立ち尽くす羽目になるということは、受験生の先輩からもよく聞く話です。
その上、特に東大文系を受験する人は地歴が2科目も課されるので
やはり世界史だけでもある程度高2までに固めたほうがいいと思います。
定期テストを利用して、世界史の記憶の「軸」を作るのがおすすめだと
和田秀樹氏は言っております。ここは彼に従ってみるのが得策ではないでしょうか。
とはいえ、英数国に比べてそれほど多くの時間をかける必要はありません。
定期テストで1週間程度対策して70~80点台程度とれてれば十分だと思います。
世界史で満点を目指すあまり、英国数の勉強が疎かになったら
それこそ本末転倒になってしまいます。
過不足のない勉強で少しずつ世界史の種をまき、芽を育てていくのが得策でしょう。


第4段階:世界史論述対策

さあ、いよいよ終盤になると世界史論述対策です。
おすすめ教材は、
・『出題パターン別世界史論述練習帳』
です。また、第1段階で用いた教科書や参考書をいよいよ並行して本格的に読み込んでいくこと になります。

一見世界史は暗記科目のようにみえます。
確かにそういう側面は否定できないのですが、暗記だけでは論述問題が解けません。
ある程度世界史に対する時間的・空間的イメージを持っておくことが必要です。
「豊かで洗練された教養なり歴史的素養を身につける」
と言い換えても良いでしょう。

具体例として、次の例題を挙げてみます。
例題:ルネサンスが起こった歴史的背景を述べなさい。

ルネサンスは中世期のキリスト教的な“神”中心の世界観から、
近世期の“人間”中心の世界観へと変貌させたとても大きな出来事であり、
近代精神なり近代合理主義を生み出した契機となっている点で歴史的な意義があります。
人間中心の観念を生んだルネサンスは、後世の思想に多大な影響を与えるとともに、
その技術革新は同時に大航海時代の基礎ともなりました。
それだけでなく、ルネサンスは各地に波及し、その言語研究は宗教改革をも促したのです。
これは世界史だけでなく、倫理の分野でも最重要テーマの1つとなっています。
しばしば「文芸復興」という訳語が当てられますが
これはルネサンスが古代ギリシャ・ローマの文献の再発見による学問・知識の復興をも意味するからです。

では、ルネサンスが生まれた背景として何が考えられるのでしょうか。
いくつか典型論点を挙げておきます。

  • 十字軍によるイスラム・ビザンツ文化との接触。
十字軍とは中世に西ヨーロッパのキリスト教、主にカトリック教会の諸国が、
聖地エルサレムをイスラム教諸国から奪還することを目的に派遣した遠征軍のことです。
十字軍の影響により北イタリア諸都市が東方貿易で栄え、
イスラムやビザンツ(古代ギリシア・ローマの古典が保存)といった東方の文物が
西ヨーロッパに到来するきっかけともなり、古代ギリシア・ローマ文化の「逆輸入」が起こり
ました。
これ以降盛んになる東西の流通は、後のルネサンスの時代を準備することになります。

  • 教皇権の失墜(と、それに伴う王権の強化)。
十字軍の失敗により教皇の権威は失墜し、反対にそれまで弱かった王権が復活します。
(ドイツ(神聖ローマ帝国)はヴォルムス協約に代表されるように教皇権が強いままでしたが、
フランス王国ではフィリップ2世期におけるイングランドからの広大な領土の獲得や
百年戦争の勝利、更に教皇のバビロン捕囚などを背景に、王権伸長が顕著にみられます。)
これにより中世期のキリスト教的な“神”中心の世界観が弱まり、
個性や人間中心主義を尊重するルネサンスの考え方が開花しました。

  • ビザンツ帝国の滅亡による学者のイタリアへの亡命。
イスラム教のオスマン帝国によって1453年にコンスタンティノープルが陥落し
ビザンツ帝国は滅亡しました。
その影響でビザンツ帝国の学者たちがイタリアに亡命してきます。
彼らも古代ギリシア・ローマ文化をイタリアに「逆輸入」していったのです。

  • イタリア諸都市の有力者による学問・芸術の保護
十字軍遠征により貿易が盛んになることで、商人階級の経済力が飛躍的に増大しました。
彼らがルネサンス期に活躍する芸術家や学者のパトロンとなっていったのです。
学問文芸を保護することが、一流の商人のステイタスのようになっていたからです。
代表的な人物としてロレンツォ=デ=メディチが挙げられます。

いかがでしょうか。
ルネサンスは世界史を少しでも習ったことがある人なら誰でも知ってるぐらいの基本用語です。

しかしその歴史的意義や背景を説明するためには
  • 通時的視点(タテの歴史)…前後の時代の特徴を押さえる。上の例では西洋中世と近世。
  • 共時的視点(ヨコの歴史)…同時期の国家間関係を押さえる。上の例では西ヨーロッパと東ヨーロッパとイスラム間の関係。
に深く精通していなければなりません。そして同時にそれが世界史的な面白さだと思うのです。
「流れを理解する」というのは、とりもなおさず、
「個々の歴史事象の持つ意義と他の事象との関連を理解する」ことなのです。
このようなセンスが身につけば、世界史は趣味の領域でどんどん論述問題が解けます。
勉強のコツとしては、論述問題を解いていき、その問題の解答要素となる文章を中心に
教科書や参考書にアンダーラインを引いていくと、論述のセンスがどんどんつきます。
教科書や参考書を優れた論述専用参考書に変貌させ、それを何度も読み込めばいいのです。

時代感覚をつけておくことも必須です。
例えば16世紀の覇権国はスペイン、17世紀の覇権国はオランダ、18世紀~19世紀の覇権国は
イギリス、20世紀の覇権国はアメリカ、といった百年単位の分け方は大変便利です。
もちろんこれらの国が覇権を握る事ができた背景は何か、というテーマも論述頻出テーマです。
(蛇足ですが、年号がなかなか覚えられない方には『世界史年代ワンフレーズnew』などが良いです)


世界史は高得点も取れて、役立つ魅力的な科目

冒頭で世界史は難しいと述べました。
しかし、いったん教科書レベルを固めてしまえばあとは安定して高得点をとれるのも
また世界史の大きな魅力だと思います。(世界史は社会科目の中で最も高得点がとりやすい)
しかも、いったん歴史的事象や歴史的な流れを把握し、
個々の大きな歴史物語や歴史的意義を深く理解してしまえば
これほど壮大で心躍らせるような楽しい科目もまた、なかなかないと思います。
大学においても、文系学部は世界史の知識が大変役立つという話も聞きます。
文系学部を志望している人は、世界史の素養をつけていくのがやはり大切なのでしょう。

また、理系の方は地理や倫理政経を選択する人が大半だと思いますが、
それらの科目も世界史と深い関わりがあって、内容の重複もしばしば見られます。
例えば、地理や政経は、世界史の近現代史と1割程度内容が被っているし、
倫理に至っては世界史の文化史を中心として3割以上は世界史の内容です。
このことから、地理や倫理政経を選択する人も関連分野においては
基本的なことだけでもしっかり世界史を学ぶことをお勧めします。
もちろん、逆も成り立ちます。世界史選択者であっても積極的に関連教科である
地理・倫理・政経から論述エッセンスを吸収したいところです。

以上のように、世界史は文系理系問わず全ての人に役立つ科目だといえるでしょう。

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最終更新:2012年04月26日 13:48
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