シンダール語(Sindarin)とは、1915年ごろ、ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン(John Ronald Reuel Tolkien, 1892年1月3日 - 1973年9月2日)によって創案された芸術言語である。
テンプレート
2014/02/23
シンダール語 |
Sindarin Eglathrin |
発音 |
IPA: /sindarin/ |
発案者/作成者 |
John Ronald Reuel Tolkien(1892年1月3日 - 1973年9月2日) |
創案時期 |
1915年ごろ。1973年に逝去するまで使用 |
設定と使用 |
中つ国の作中言語 シンダール族の言語。 第三紀ではエルフの話し言葉として一般的な言語 |
母語話者数 |
不明 |
表記体系 |
ラテン文字 tengwar, cirth |
目的による分類 |
人工言語 |
・芸術言語>架空言語 |
参考言語による分類 |
音声:ウェールズ語、古英語、古ノルド語、アイスランド語 語彙:アプリオリだがクウェンヤからの借用語多数 文字:アプリオリ 文法:ウェールズ語、古英語、古ノルド語 語法: |
言語コード |
''ISO 639-3'' |
sjn |
''Linguist list'' |
sjn |
名称
Sindarinとは、クウェンヤで「灰色エルフ(sindar)の言葉」という意味である。
シンダール語自身で、この言語を示す言葉は、Eglathrin、「見捨てられたもの(Eglath)の言葉」だが、この名称は太陽紀第一紀までしか使われていないとされる。
英語ではGrey-elvishまたはGrey-elvenと呼ばれる。
作製史
トールキンは、1910年ごろにのちにクウェンヤになるelfinをはじめ、彼の神話世界のエルフたちが話す諸言語の作成が始まった。
Gnomish(1915年)
1915年、23歳の時、ウェールズ語をモデルにしたエルフ語の作成を始めた。この言語は、Goldogrinまたはノーム語(Gnomish)と呼ばれた。これがシンダール語の原形である。
1915年は『失われた物語の書』(Book of Lost Tales)に記されるエルフの歴史が作られた時期であり、Gnomishは、エルフの第二種族であるノーム(Gnomes)またはノルドリ(Noldoli)によって話され、Elfinは離れ島のエルフの大多数が話していると言う設定であった。
『ホビットの冒険』(1936)によるとノームは後のノルドール族の文脈で用いられる種族名であるため、現在のシンダール族の言語というのとは設定が異なる。
Lam na Ngoluith(1925年)
1925年、33歳の時、改めてノーム語の文法と語彙を改定した。
Goldogrinとlam Goldrinという語をノルドール語のために廃棄した。
この段階の言語をLam na Ngoluithという。
後期概念的ノルドール語(late conceptual Noldorin, 1930年代前半)
1930年代前半、トールキンはノルドール語(Noldorin)の文法を改訂した。これを後期概念的ノルドール語(late conceptual Noldorin, 1930年代前半)という。
同時期に、後にシンダール族と呼ばれる、ベレリアンドにとどまったエルフ第三種族の言語、イルコール語(ilkorin)の開発をしていた。
当時のノルドール語(ウェールズ語風言語)は、ヴァリノールで話されていた古ノルドール語から進化したものだという設定だった。ノルドール族はクウェンヤを話すエルフ第一種族から言葉を区別したいと考え、Koreldarin(中つ国を去り、ヴァリノールのエルフの丘(Kór)に来た者の言語。丘のエルフ語)から古ノルドール語を発達させたというせっていである。
そして、ノルドール族がベレリアンドへと追放された時古ノルドール語が多くの方言を持つウェールズ語風の言語になったとされた。
ベレリアンドの言語であるイルコール語(Ilcorin)はウェールズ語に似ていない。後にトールキンはこの言語の名前をLemberinに変更した。
シンダール語(Sindarin, 1944)
1944年、52歳のトールキンは、ノルドール語(nordorin)、イルコール語(ilkorin)、ドリアス語(doriathrin)そしていくつかの新しい工夫を加えて、シンダール語(Sindarin)を作成した。
1930年から1950年にかけてベレリアンドで話されたイルコールの単語、たとえばドリアス語やその他の方言はノルドール語のようにウェールズ語に基づいたものではなく、トールキンは、ウェールズ語風言語としての新しい「ベレリアンド語」を欲した。
シンダール語の使用
1970年代にファンたちによってシンダール語を書く試みが開始された。当時出版されたエルフ語のコーパスは100語あまりしかなかった。以後、詩、文、フレーズ、名前、タトゥーなど、エルフ語の使用が栄えている。しかし、トールキン自身、会話のための十分な完成した言語を作ることを意図していなかったため、結果として、ピーター・ジャクソンの『ロードオブザリング』三部作におけるデイヴィッド・サロが書いた台詞のような新たなエルフ語文は、推測と新しい単語の造語が要求される。
作中設定
アマンへ渡った上のエルフ三種族、ヴァンヤール族、ノルドール族、テレリ族のうち、テレリ族の中で行方不明になったエルウェ・シンゴルロ王のために中つ国にとどまった者たち、つまりシンダール族(灰色エルフ)が、共通テレリ語(Common Telerin)から発達させた言語とされる。
ちなみに原始クウェンディ語からクウェンヤと共通エルダール語が派生したわけであり、共通エルダール語の段階から、クウェンヤとは別言語である。共通テレリ語は共通エルダール語派生言語である。
もっぱら儀式と詩に使われたクウェンヤとは違い、シンダール語は太陽紀第一紀から第三紀にかけて、中つ国西部のエルフの話し言葉として最も一般的な言語であり続けた。
第三紀におけるエルフ語(elf-tongue, elven-tongue)といえば、シンダール語のことを指す。
音声
シンダール語はウェールズ語風音声学でデザインされた。同じ音や類似の音声構造、または音素配置論を持つ。古英語、古ノルド語、アイスランド語の音韻論もかなりシンダール語に近い。
子音
23子音。
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両唇 |
歯唇 |
歯 |
歯茎 |
後部歯茎 |
硬口蓋 |
軟口蓋 |
口蓋垂 |
声門 |
破裂音 |
p[p] b[b] |
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t[t] d[d] |
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c[k] g[g] |
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鼻音 |
m[m] |
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n[n] |
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ng[ŋ] |
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ふるえ音 |
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rh[r̥] r[r] |
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摩擦音 |
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f[f] v[v] |
th[θ] dh[ð] |
s[s] - |
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hy/h[ç] |
ch[x] - |
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h[h] |
接近音 |
hw[ʍ] w[β̞] |
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y[j] |
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側面接近音 |
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l[l] |
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側面摩擦音 |
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lh[ɬ] |
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/f/は、語末またはnの前で[v]と発音する。
古いシンダール語では、mhと書かれているところでは、mは鼻音のv[ṽ]で発音する。
後のシンダール語では、mhは常に[v]で発音する。
i 母音の前では[j]、それ以外では[i]で発音する。
ng 語末では[ŋ]、それ以外では[ŋg]と発音する
ph 語末では[f]、それ以外では[ff]と発音する。
母音
6つの短母音、i[i], e[ɛ], a[a], o[ɔ], u[u] y[y]
6つの長母音、í[i:] é[e:] á[a:] ó[o:] ú[u:] ý[y:]
6つの長母音+アクセントî[i::] ê[e::] â[a::] ô[o::] û[u::] ŷ[y::]
を持つ。
|
前舌 |
後舌 |
狭 |
i[i] y[y] |
u[u] |
半広 |
e[ɛ] |
o[ɔ] |
広 |
a[a] |
|
古いシンダール語では、ドイツ語のö[œ]に似た母音があり、トールキンはそれをしばしばœと綴った(出版物で見られるNírnaeth Arnoediad [Nírnaeth Arnœdiad](数えきれない涙), Goelydh [Gœlydh]のように、oeではない)。この母音文字は[ɛ]と発音されるようになり、それゆえ、Gelydhのように書き変えられるようになった。
二重母音
ae[ai], ai, ei,
oe[oi],
ui, au
aw 語頭におけるauの別字体
上以外は二音節で発音
アクセント
アクセント法則
1. 二音節の単語では、第一音節にアクセント
※dûn(西)から派生するannûn(日没)、rhûn(東)から派生するanrûnなど、接頭辞+本体の場合は例外となる。
2. 三音節以上の単語かつ、最後から二番目の音節が長母音、二重母音、二つ以上の子音を伴う母音の場合、最後から二番目の音節にアクセント。 isIldur elentÁri periAnnath pelArgir silIvren andÚne
3. 三音節以上の単語かつ、最後から二番目の音節が短母音、後に伴う子音がないか1つしかない場合は、最後から三番目がアクセント。 Orome, erEssëa, fËanor, ancAlima, dEnethor(thは1子音でカウント) , ecthElion
音素配列論
- 母音で終わる語が少なく、たいてい子音で終わる。
- クウェンヤと違いmb, nd, ng, ld, rdなどの組合せ以外でb,d,gが見られる。
文字
ラテン文字転写
中つ国の諸言語共通のラテン文字転写法を示す。
c[k] celeb[keleb] 銀
ch[x] ドイツ語のbachとかachtみたいな感じ。
dh[ð] thisとか、theseのth音
f[f] 語末で[v]
g[g] gil[gil] 星
gh[ɣ]有声軟口蓋摩擦音。黒の言葉とオーク語で使われる。
h[h]
ht[xt]
I[i/j] 後に母音を伴う場合[j] Iarwain ヤールワイン
k[k] エルフ諸語以外でもちいる。
kh[x]
ドワーフ語では帯気音のk
l[l]
lh 無声化したl
hl 無声化したl
ng[ng]
ph[f] p音が音韻変化してf音になった時に現れやすい
qu[kw] quenyaで仕様頻度多
r[r] 震え音。ゴルァ音
rh 無声化r
hr 無声化r
s[s]
sh[ʃ] シャ行
th[θ] thinkやclothなどの音。
ドワーフ語では帯気音のt
ty チューンとか、トューンみたいな。
v[v]
w[w]
hw 無声化したh
y[j]
i e a o u yの六種類。yはだいたいラテン語読みでOK。ゴンドールではyはiで発音されている。
ë
目立つように点を置いているのみ。英語と違って語末でもちゃんと発音することを目立たせるために使われることが多い。
í é á ó ú ý
伸ばして発音する。
ホビット庄ではéを[ei]、óを[ou]と発音する傾向がある。粗野で不正確な発音とされた。
î ê â ô û
さらに長く伸ばして発音する。
すべて、二重母音の最初の母音にアクセントをつけて発音すること。
ui, oi, ai
iu, eu, au
iuは第三紀ではyuのように発音される傾向。
上以外は二音節で発音すること。
ëa, ëo, oë
ae[ai], ai, ei,
oe[oi],
iu, au
aw 語頭におけるauの別字体
上以外は二音節で発音
éa éo
テングワール(Tengwar)
トールキンが1920年代後半~30年代初期、34~40歳ごろに発明したと考えられる人工文字。
トールキンが1910年代後半、20代後半ごろに発明した人工文字saratiを発展させたもの。
『ホビット』や『指輪物語』で見ることができる。
17世紀の哲学的言語の作者フランシス・ロドウィック(1619-1694)のUniversal Alphabet(1686)同様の、調音点と調音方法に合わせて字形を調整するという流派の人工文字である。
作中ではルーミルのテングワールと呼ばれるsalatiを元にノルドール族のフェアノールが改良して発明したとされる文字。ノルドール族の中つ国降臨に伴って中つ国西部に普及した。
元々クウェンヤのノルドール族用法に合わせて作られた文字だが、シンダール語から黒の言葉まで、中つ国の様々な言語がこの文字によって記述されることになった。
キアス(Cirth)
トールキンが発明した人工文字。
『ホビット』(1936)の段階ではアングロサクソンのルーン文字が用いられ、『指輪物語』(1954)ではキアスが用いられたことから、1936-1954年の間に発明されたと考えられる。
作中ではドリアスのダイロンが発明したとされる。
クウェンヤやシンダール語だけではなく、ドワーフ語にも用いられた。直線的であるため、石を使った建築を好むドワーフに特に好まれた字形である。
http://en.wikipedia.org/wiki/Cirth
語彙
アプリオリ言語だが、クウェンヤ語からの影響が見られる。
推定語彙数
Kloczko, Edward (2008). L'Encyclopedie des Elfes (in French)によると、エルフ語全体で約25.000語あるというが、シンダール語単体での単語数は不明である。
文法
シンダール語は創作の(ウェールズ語という自然言語をモデルにした)非正規言語であり正規の形態論を持つ国際補助語ではないため、出版された情報からシンダール語の形態論的規則を推定することはほとんど不可能である。
ほとんど膠着語であるクウェンヤと異なり、シンダール語は分析言語的な傾向を持つ屈折語である。
古いシンダール語では、接尾辞-ī,で複数形を作ったが、この用法は消滅し、ウェールズ語および古英語の影響を受けて、adan(人間), edain(人間たち), Orch(オーク), Yrch(オークたち)のように母音交替で複数形を作るようになった。
統語
類型
屈折語
名詞
単数形と複数形がある。ドリアス方言では双数形もあるらしい。
複数形
複数接尾辞-inと、総複数接尾辞-(n)athで複数形を作る方法もある。
総複数「全ての~」の方は、クウェンヤの総複数用法と同じものと思われる。
êl 星、elin 星々、 elinath 全ての星々
Ennor 中つ国 Ennorath 全ての中つ国(複数)
Drû 野人 Drûin 野人たち Drûath 全ての野人たち(ただしこの語形は一般的ではない)
種族集団を表す接尾辞-rim, -lir。
Nogoth(ドワーフ) Nogothrim(ドワーフ族) Nogothlir(ドワーフ族)
敵対集団を表す接尾辞-hoth。単数形と接続する。
Gaur(人狼) Gaurhoth(人狼の群れ、人狼ども)
gornhoth(ドワーフに対する蔑称。硬い-敵対集団)
多くのシンダール語の複数形は、i-ウムラウトによる母音交替で作られる。
この言語の初期段階ではあ複数接尾辞-īによって複数形を作っていたが、このi音に前の語幹部分もつられてi-ウムラウトを起こし、後に接尾辞-īが消滅して、語幹の母音交替だけが残ったという設定である。
このプロセスは、英語のman/men, goose/geeseを作ったゲルマン語のウムラウトに非常に似ている。
非最終音節 |
a>e |
galadh(木)>gelaidh(木々) |
e>e |
bereth(女王、配偶者)>berith(女王たち、配偶者たち) |
o>e |
nogoth(大きなドワーフ)>negyth(大きなドワーフたち)元々œだったが、後にeになった |
u>y |
tulus(ポプラの木)>tylys(ポプラの木々) |
y>y |
(例がない) |
最終音節 |
後に1子音が付くa>ai |
aran(王)>erain(王たち) |
後に2つ以上子音が付くa>e |
narn(サーガ)>nern |
後に鼻音+破裂音が付くa>ai |
cant(形)>caint |
後に流音+摩擦音が付くa>ei |
alph(白鳥)>eliph |
â>ai |
tâl(平らなスペース、足)>tail |
e>i |
adaneth(女)>edenith(女たち) |
ê > î |
hên(目、子供)> hîn |
i>i |
brennil(淑女)> brennil |
î > î |
dîs(花嫁、新婦)> dîs |
o>y |
brannon(主君)>brennyn |
o>e |
orod(山)> ered(山脈) (一部) |
ó > ý |
bór(信頼できる家臣、ゆるぎない男) > býr |
ô > ŷ |
thôn(杉) > thŷn |
u > y |
urug(オーク) > yryg |
û > ui |
hû(魂、犬); > hui |
y > y |
ylf(ブランド、杯) > ylf |
ý > ý |
mýl(カモメ) > mýl |
au > oe |
naug(ドワーフ、発育不全) > noeg(ドイツ語のau>äu) |
aea > ei |
aear(海) > eir |
adan(人間), edain(人間たち)
Orch(オーク), Yrch(オークたち)
golodh(賢者) gelydh(賢者たち)
Moredhel(闇エルフ) Moredhil(闇エルフたち)
単数と複数が同形になることもある。
Belair(ベレリアンドのエルフ、ベレリアンドのエルフたち)
子音交代
シンダール語は、複雑な子音交代の仕組みを持つ。3つの主な子音交代がある。
軟変化(または軟音化)、鼻音変化、閉鎖音変化である。さらに分詞や前置詞の後に混合変化が見られる。最後に古風な摩擦音変化(または学者によって流音変化と呼ばれる)ものがある。
語頭変化は、複合語で起きる同化と混合してはならない。
(Araphor, Arassuil, Caradhrasなど。)
原形 |
軟 |
鼻音 |
混合 |
閉鎖 |
流音 |
p |
b |
ph |
b |
b |
ph |
t |
d |
th |
d |
th |
th |
c |
g |
ch |
g |
ch |
ch |
b |
v |
m |
b |
b |
v |
d |
dh |
n |
d |
d |
dh |
g |
' |
ng |
g |
g |
' |
m |
v |
m |
m |
m |
v |
s |
h |
s |
h |
s |
s |
h |
ch |
ch |
h |
ch |
ch |
rh |
thr |
'r |
'r |
thr |
'r |
lh |
thl |
'l |
'l |
thl |
'l |
アポストロフィーはエリジオンを表す。
mb-, nd-, ng-から派生した、b-, d-, g-で始まる単語は以下の別の子音交代が起こる。
原形 |
軟 |
鼻音 |
混合 |
閉鎖 |
流音 |
b |
m |
mb |
mb |
mb |
b |
d |
n |
nd |
nd |
nd |
d |
g |
ng |
g |
g |
g |
g |
例えば、直示単数冠詞iは軟変化を起こす。
tî 線 i dî その線
tâl 足 i dâl その足
シンダール語の音韻学の歴史では、tは語の間ではdになる。i tâlは一語と見なされ、結果、i dâlになるのである。
最も広範に起こる子音変化。
単数冠詞i
接頭辞athra-(交差した), ath-, go-, gwa-,ú-, u-
前置詞 ab, am, adel, be, dad, di, na, nu, î avo
名詞の後の形容詞や、動詞の後の目的語でも発生する。
複数冠詞 in
前置詞 an, dan
複数の 'nin
属格冠詞en
前置詞 ben, erin, nan, 'nin, uin
前置詞ed, ned, o(d)
前置詞 or
代名詞
|
一人称 |
二人称 |
三人称 |
単数 |
複数 |
単数 |
複数 |
単数 |
複数 |
主格 |
im |
|
|
|
e |
|
対格 |
nin |
#men |
le |
le |
den |
di/hain |
属格 |
nín |
mín/vín |
|
lín |
tîn/dîn |
|
与格 |
enni/anim |
ammen |
|
|
|
|
前接語 |
-n |
-m |
?-ch |
|
|
-r |
|
代名詞 |
所有格接尾辞 |
一人称単数 |
-n |
-en |
二人称単数親称 |
-g |
-eg |
二人称単数敬称 |
-dh |
-el |
三人称単数 |
nil |
-ed |
一人称複数抱合 |
-m |
-em |
一人称複数除外 |
-nc |
-enc |
二人称複数親称 |
-g, -gir |
-eg, -egir |
二人称複数敬称 |
-dh, -dhir |
-el, -elir |
三人称複数 |
-r |
-ent |
一人称双数抱合 |
-m, -mmid |
? |
一人称双数除外 |
-nc, -ngid |
? |
二人称双数親称 |
-ch |
? |
二人称双数敬称 |
-dh, -dhid |
? |
三人称双数 |
-st |
? |
双数形はドリアス語話者のみが使う。
主語は、活用の中で用いる。シンダール語では、dhe(二人称単数親称)のような分離形を目的語に用いる。
以下のようにいくつかの格で特殊な形に変化することもある。
ammen(an men) 私たちのために
annin(an nin) 私のために
所有は、語の後に所有格接尾辞を付けて表す。
lamm 舌
lammen 私の舌
指示詞
前置詞
接合前置詞
動詞
子音で終わる基本動詞と、-aで終わる派生動詞がある。
基本動詞は、-iを付けることで不定詞になる。
語幹にaやoがある場合はeに母音交替する。
シンダール語において不定詞の利用は少ない。
gir 震える giri 震えること(不定詞)
blab 鼓動する blebi 鼓動すること。
派生動詞は、末尾のaをoに帰ることで不定詞になる。
lacha 燃やす lacho 燃やすこと
現在形は語幹-iのあとに-n(私)などの人称接尾辞を付ける。語幹にaやoがあるときはeに母音交替する。
三人称単数の場合は上の処置はなく、語幹の母音が伸びる。
|
gir 震える |
pad 歩く |
一人称単数 |
girin 私が震える |
pedin 私が歩く |
二人称単数親称 |
girig 君が震える |
pedig 君が歩く |
二人称単数敬称 |
girich あなたが震える |
pedich あなたが歩く |
三人称単数 |
gîr 震える |
pâd 歩く |
一人称複数抱合 |
girim (あなたを含む)私たちが震える |
pedim (あなたを含む)私たが歩く |
一人称複数除外 |
girinc (あなたを含まない)私たちが震える |
pedinc (あなたを含まない)私たちが歩く |
二人称複数親称 |
girig, girigir 君たちが震える |
pedig, pedigir 君たちが歩く |
二人称複数敬称 |
girich, girichir 貴方達が震える |
pedich, pedichir 貴方達が歩く |
三人称複数 |
girir 彼らが震える |
pedir 彼らが歩く |
語末がaである派生動詞の場合は、そのまま人称語尾を付ける。
一人称単数の場合は、ラテン語の影響かaがoになる。
|
''lasta 聞く'' |
一人称単数 |
laston 私が聞く |
二人称単数親称 |
lastag 君が聞く |
二人称単数敬称 |
lastach あなたが聞く |
三人称単数 |
lasta 聞く |
一人称複数抱合 |
lastam (あなたを含む)私たちが聞く |
一人称複数除外 |
lastanc (あなたを含まない)私たちが聞く |
二人称複数親称 |
lastag, lastagir 君たちが聞く |
二人称複数敬称 |
lastach, lastachir 貴方達が聞く |
三人称複数 |
lastar 彼らが聞く |
不規則動詞
繋辞・コピュラ・存在動詞
否定
時制
過去形は「過去形変化させた語幹+ -i + 人称接尾辞」で表す。この場合、語幹にaやoがある場合、eに変化する。
映画版では「過去形変化させた語幹+ -e + 人称接尾辞」になる。この場合は語幹の母音交替が起こらない。
過去形化させた語幹の作り方は複雑である。
○r, n, lで終わる語幹
語幹にnを付ける
dar 止まる → darn 止まった
nor 走る → norn 走った
過去形 |
nor 走る |
一人称単数 |
nernin 私が走った |
nornen 私が走った |
二人称単数親称 |
nernig 君が走った |
norneg 君が走った |
二人称単数敬称 |
nernich あなたが走った |
nornech あなたが走った |
三人称単数 |
norn 走った |
norn 走った |
一人称複数抱合 |
nernim (あなたを含む)私たちが走った |
nornem (あなたを含む)私たちが走った |
一人称複数除外 |
nerninc (あなたを含まない)私たちが走った |
nornenc (あなたを含まない)私たちが走った |
二人称複数親称 |
nernig, nernigir 君たちが走った |
norneg, nornegir 君たちが走った |
二人称複数敬称 |
nernich, nernichir 貴方達が走った |
nornech, nornechir 貴方達が走った |
三人称複数 |
nernir 彼らが走った |
norner 彼らが走った |
○lとnで終わる語の場合、llに変化する。
tol 来る → toll 来た
tîn 話す → tîll 話した
○b, d, gの場合
b→mp 後ろに人称語尾が付くとmm
d→nt 後ろに人称語尾が付くとnn
g→nc 後ろに人称語尾が付くとmg
○dhの場合
dh→nd 後ろに人称語尾が付くとnn
○vの場合
v→m 後ろに人称語尾が付くとmm
派生動詞の過去形は「語幹+nne+人称語尾」になる。三人称単数は「語幹+nt」である。
|
dartha 待つ |
gwesta 誓う |
一人称単数 |
darthannen 私が待った |
gwestannen 私が誓った |
二人称単数親称 |
darthanneg 君が待った |
gwestanneg 君が誓った |
二人称単数敬称 |
darthannech あなたが待った |
gwestannech あなたが誓った |
三人称単数 |
darthant 待った |
gwestant 誓った |
一人称複数抱合 |
darthannem (あなたを含む)私たちが待った |
gwestannem (あなたを含む)私たちが誓った |
一人称複数除外 |
darthannenc (あなたを含まない)私たちが待った |
gwestannenc (あなたを含まない)私たちが誓った |
二人称複数親称 |
darthanneg, darthannegir 君たちが待った |
gwestanneg, gwestannegir 君たちが誓った |
二人称複数敬称 |
darthannech, darthannechir 貴方達が待った |
gwestannech, gwestannechir 貴方達が誓った |
三人称複数 |
darthanner 彼らが待った |
gwestanner 彼らが誓った |
未来形は「語幹 + -i + tha + 人称接尾辞」である。語幹にaやoがある場合は、eに変化する。
一人称単数の場合は-ithanでなく-ithonになる。
派生動詞の場合は「語幹+tha+人称接尾辞」である。この場合は語幹の変化はない。一人称単数の時はthanでなくthonになる。
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gir 震える |
pad 歩く |
一人称単数 |
girithon 私が震えるだろう |
pedithon 私が歩くだろう |
二人称単数親称 |
girithag 君が震えるだろう |
pedithag 君が歩くだろう |
二人称単数敬称 |
girithach あなたが震えるだろう |
pedithach あなたが歩くだろう |
三人称単数 |
giritha 震えるだろう |
peditha 歩くだろう |
一人称複数抱合 |
giritham (あなたを含む)私たちが震えるだろう |
peditham (あなたを含む)私たが歩くだろう |
一人称複数除外 |
girithanc (あなたを含まない)私たちが震えるだろう |
pedithanc (あなたを含まない)私たちが歩くだろう |
二人称複数親称 |
girithag, girithagir 君たちが震えるだろう |
pedithag, pedithagir 君たちが歩くだろう |
二人称複数敬称 |
girithach, girithachir 貴方達が震えるだろう |
pedithach, pedithachir 貴方達が歩くだろう |
三人称複数 |
girithar 彼らが震えるだろう |
pedithar 彼らが歩くだろう |
相
法
命令
命令接尾辞-oを付ける。
派生動詞の場合は語末のaをoに置換する。
giro! 震えろ
pado! 歩け
受動態
使役
敬語
形容詞
比較
副詞
接続詞
感嘆詞
疑問詞
関係代名詞
数詞
挨拶
語法
方言
太陽紀第一紀の段階で4つの方言がある
○南方グループ
- ドリアス語(Doriathrin) ドリアスの言語
- ファラス語(Falathrin)または西シンダール語(west sindarin)
○北方グループ
- 北西方言(North-Western dialect) Hithlum, Mithrim, Dor-lómin
- 北東方言(North-Eastern dialect) Ard-galen, the highlands of Dorthonion (Taur-nu-Fuin)
ドリアス語(Doriathrin)
ドリアス語は多くの古風な特徴を保っていた。他の方言と違い、クウェンヤからの影響を受けていない。ドリアスのアクセントは際立っていたので、トゥーリンがドリアスから去った後、シンダール語の他の方言の話者がすぐに彼の出自を当てられるぐらいに、彼は死ぬまでドリアス語のアクセントのままだったと言う。
「ベレリアンド的戦争の後、共通語として、ノルドールの言葉としてドリアスからの強い影響を受けた」
ドリアス語の形態学の詳細と他のシンダール語の方言との違いについては以下の通りである。
- 名詞と代名詞の双数形
- 動詞の人称変化
- 総複数と部分複数(elenath 全部でなく一部の複数ある星)
- 特定の複数形(elin)
- mがṽに摩擦音化
- mp, nt, ñkの変化が他の方言より早く進行した。
ファラス語(Falathrin)
キアダンの従者の言語はファラス語(falathrin, 英語でfalassian)と呼ばれ、南方シンダール語に属する。ベレリアンドの戦争の時ファラスとドリアスの間で交易が盛んであったため、ドリアスの言語に近い。
北シンダール語
北シンダール語はMithrim、灰色エルフの北の大グループに話された。色々な面でベレリアンドのシンダール語と異なる。元々ドルソニオンとヒスルムで話され、多くの固有語を含み、他のエルフに全く分かりやすくなかった。北方方言は色々な面で保守的で、後に北西方言(Hithlum, Mithrim, Dor-lómin)と北東方言(陥落前のCalenardhonとTaur-nu-Fuinの高地)に別れた。この言語は、ロスガールで中つ国に帰還した追放されたノルドール族によって最初に受け入れられたものである。後にノルドール族のシンダール語はクウェンヤの特徴を受け入れるために、部分的に言語学的な変化を作るノルドール族の愛のために変化した。ベレンの品位は、彼の故郷の北シンダール語を話したことから、ドリアスのシンゴル王には明白であった。
「北シンダール語の主な特徴は、鼻音の後のp, t, kの保持と、母音の間のmの残存。u, o, i, e が明確に残っていない。iの変形がない。語頭のSに不寛容。語中のHが残存する。語中ではtt, pp, kkがt, p, kになる」
ノルドール族のシンダール語
ドリアス語を除き、シンダール語は、ノルドール族の帰還後クウェンヤの特徴を受け入れただけでなく、(言語改定を愛する)ノルドール族が考案した固有音の変化も受け入れた。
「実際、ノルドール族は、戦争の時代の『共通シンダール語』を考案し、それを作り安定化させ、それは西方シンダール語の元となった。古い北方方言は、Dorlomin, Hithlumなどの地名を除きほとんど絶滅したが、散らばり隠れた古い北方集団の部族とフェアノール一党を受け入れなかったものは、東へ移動した。
よって戦争の時代、シンダール語はまさに「西シンダール語」(フィンロドとフィンゴンのノルドール族を含む)、「東シンダール語」(北方方言)がフェアノールの一族によって残り、これらと「中央」または「ドリアス」に別れた」
孤立した土地であるゴンドリンの隠れた都市で、特異な方言が発達した。
「これはドリアスの標準的言語、製法といくつかの北方要素と異なり、ノルドールクウェンヤの単語が多く残り、シンダール語化した形が少ない。この都市が、(標準的なシンダール語で言うように)goenlinやgoenglinではなく、g-の単純な置換で通常Gondolin(クウェンヤのondolinから)と呼ばれるように。」
第二紀・第三紀
エルフと多くの人間の共通語、そして追放されたノルドール族の言語としての「ベレリアンド的」シンダール語は西方シンダール語を元にしたが、これはドリアス語からの影響を強く受けていた。第二紀を通してシンダール語は、シンダール語から深い影響を受けた第三紀に発達した言語である西方語に人間により置き変えられるまで、全てのエルフと彼らの友の共通語であった。
ゴンドールでは第三紀の終わりまで、シンダール語はミナス・ティリスの都市の少数の貴人により日常的に話されていた。イムラドリスで育ったアラゴルンはそれを流暢に話した。
使用例
参考資料
最終更新:2014年08月22日 20:33