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飛行役畜の活用
○騎乗普及以前の技術としての飛行籠
 地球で約4000年前に馬の家畜化が始まった当時から、ハミが使用されていたことが分かっており、騎乗が行われていたと推測されるが、戦争の舞台で騎兵が盛んになるのは紀元前8世紀ごろから紀元前後という比較的新しい時代になってからである。
 それ以前は戦争の舞台では戦車、チャリオットを用いた騎兵がほとんどであった。その原因は馬格の不足、騎乗に必要なおもり付きの手綱や、鞍、鐙、拍車などが未開発であった事などがあげられる。このように騎乗は、馬の品種改良や各種馬具の発明を前提とする技術なのだ。
 同様に惑星アトラスに存在する飛行役畜である飛竜や、小型飛竜の聖竜と馬の混血種である天馬も騎乗の前段階として、籠を牽引した段階があることが十分予想できる。

飛行籠は気球のバスケットに近いものから、気球のゴンドラのような縦長の船に近いものまで時代により様々な形状がある。品種改良や牽引用の効率的な繋ぎ方やカラーの開発が進んでいない段階での馬力不足を補うため、一つの飛行籠を二頭以上で牽引する。大型の物になるほど必要頭数は多くなる。
馬具の開発が進み、カラーなど効率的に牽引させる器具が誕生すれば、一頭で牽引可能な小型飛行籠も開発されるだろう。並行して、幻晄を節約するための行軍や、固定陣地で陸戦を行う必要から馬車牽引する必要があり、その馬車もこれらの馬具の開発により一頭牽引方式のものが現れるだろう。
最終的には馬車の技術を転用した車輪や安定的な飛行を実現するための複葉機のような翼の付いたものも出てくるだろうが、それ以前に騎乗のための前提技術が出そろうため、リアリティーを追及すると、天馬動力の複葉機のようなロマンあふれる乗り物は登場させるのは難しい。出てくるとすれば、航空力学や鋼鉄加工技術が進んだメル歴3世紀に絶滅寸前の天馬を用いて飛ばすのだろうが、この時代には騎乗技術はもちろんのこと、魔法動力や蒸気機関動力の飛空挺の技術もあるため、ロマン以外の何物でもない。

  • 制御
制御は、天馬の場合手綱で行う。

  • 搭乗員
複数の天馬を操縦しつつ攻撃を行うのは極めて困難であるため、戦闘用の飛行籠は、騎手のほかに2人以上が搭乗する。戦闘員は射手、槍士が一人ずつと言うのが一般的であるが、どちらか一人と言うことも少なくない。
槍士とはいえ、実際に使う武器はすり抜けざまに効率的に落馬させることができる戦闘用ピック、「戈」を使うのが一般的である。戦闘用ピックと槍を組み合わせたハルバードや戟に近いものも時代が進めば開発されるだろう。
射手とはいえ、実際には弓ではなく蒼晄弾を放つ者や氷や石を射出できる魔法使いが多い。炎の魔法は、敵に当てれば天馬を恐慌状態にさせ制御不能にしたり、飛行籠を燃焼させることができるが、それは味方も同様の迷惑を被るため敬遠される。もちろん魔物素材を用いた強度の高い弓と、その常識外の張力に対抗できるほどの筋力を持つ翠晄使いの弓士も射手になりうる。

  • 天馬の陸戦利用
天馬や飛竜は、翼の力だけでは飛べず、蒼晄を後方に射出することにより推進力を発生させて飛行している。よって飛行していない時は、飛行のための蒼晄を防御に回すことができ、耐久力が増す。よって機動力よりも防御力を重視する局面では、馬車を挽いての陸戦を行うことになる。地球においては馬車を遮蔽物として射撃を行うことができたが、飛行していない天馬の耐久力は馬車に匹敵し、天馬を盾に射撃を行うことができるほどである。

  • 飛行役畜で飛行する有用性
惑星アトラスにおいては、ユーマの一族もまた、重力制御と推測される古代魔法ルテや、変身魔法であるアシェク、翠晄で筋力強化し、人力飛行機を操作したり、蒼晄のジェット噴射により飛行することが可能であるが、そのような世界観で飛行役畜を用いる価値はあるのだろうか。
第一に、飛行速度の違いが上げられる。魔物を家畜化したものである飛竜や天馬の方が筋力や強く、幻晄総量がも多い。体の形状は特別飛行に適しているわけではないが、飛行のために進化したのか、晄基の組み換え失敗により廃棄される幻晄も少なく効率的である。ユーマの一族を超える機動力の高さは戦闘や通信において大いに有効である。
第二に、航続距離の違いがある。ユーマの一族の場合、たとえ神話級の英雄であっても、長時間の飛行は不可能である。それは幻晄総量の少なさや飛行に関する晄基配列を組む際の経常廃棄率の高さ等が原因だろう。惑星の重力圏内なら1時間もかからない戦闘で用いられるのみで行軍は困難である。英雄でもない一般の士官・兵卒は、なおさら困難であり、ほとんど飛行できないはずである。このため長時間の飛行には飛行役畜が必要となるのだろう。
第三に耐久力の違いである。どのような手段で飛ぶにせよ、人力飛行は幻晄・体力の消耗が激しく、戦う前に疲弊してしまう。戦闘をする場合は、攻撃するにせよ防御するにせよ、幻晄と体力は必須である。天馬の陸戦利用のところでも上げたが、飛行すれば、防御力も耐久力も激減してしまうほか、エネルギー不足で魔法攻撃や蒼晄弾、筋力強化などの補正も弱体化する。そのため、飛行は役畜に任せ、戦闘は人間に任せる方が効率的なのである。

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日誌 飛行役畜
最終更新:2012年04月19日 17:05