仮設定

川平清明(かわひら きよあき)
16歳 
啓太とようこのムスコ
性格は謙虚、時折優柔不断
13歳の契約の儀の時、彼には20人もの犬神が契約を求めてきたが
両親の助言により、みやこ一人と契約した。
みやことは幼なじみで、清明はよく一緒にヤマで遊んだ。
霊力は葛葉の力を封じるために常に使われており
非常に不安定。
しゅくちを暴発させてすっぽんぽんになってしまうことがしばしば。

みやこ
19歳
清明の犬神
基本的に従順かつ清明一筋
世話好きで、身の回りの世話の他、爪切り、トリミング、
マッサージなどまでやる。清明にとっては毎回、赤面ものである。
彼女は清明の両親の前例を辿りたいと目論んでいて、
葛葉とつるんで既成事実を狙っている。
セミショートの黒髪に濃紫色のしっぽをもつ。
重力を操る。

川平葛葉
清明の双子の妹
大妖弧すら越える神クラスの強大な霊力誇る
幼い頃にはけによる封印が施されたがそれをもっても
まだ身に余る力をもっている。
その封印は霊力を常に供給せねばならず
供給元を清明に設定してあるため
彼にとっては大きな負担である
性格は天真爛漫、自由奔放、トラブル好き
清明とみやこをくっつけたがってる(小悪魔・・・)

川平かおり
16歳
宗家(薫)となでしこの娘、有望な犬神使い。
なでしこ似で楚々としていてお淑やかで優しい
戦闘は普通にこなす、治癒術が得意
じつはキレると怖い?!

川平さゆき
14歳
かおりの弟にして犬神
最初は犬神使いをめざしていたが
血の気が多く、指導者に向かないことから
かおりの犬神になった。
氷を操る、かおりとのコンビネーションはなかなか。
実はシスコン?

新堂ヒナ
15歳 137㎝
新堂ケイの娘
性格は、はつらつとしていて明るい、ちびっこ
家はかなりの金持ちらしいが、今は家出をしていて、河童橋の河川敷に、
掘っ立て小屋を作り生活しているため、困窮を極めている。
実はかなり強く仙界で修行し体術はマッチョなロリコン痴漢をはっ倒すほど
死神を調伏している
小さな水晶のドクロを使う。

デス
旧約聖書に出てくるくらいの歳 141㎝
その名のとおり死神(♀)
短い白髪、ヒナに負けず劣らずのちびっこ
ヒナと戦い敗れ、その後忠誠を誓っている。
鈍色の大鎌を振るう。



吉日市警察署。
その名の通り、吉日市の治安維持組織の中枢である。
比較的新しい7階建ての無骨な鉄筋コンクリートづくりで、
屋上からは、近所の小学生が考え、応募した中から選ばれた、
『変態を消して、明るい吉日市』という太平洋戦争チックな
スローガンがプリントされた垂れ幕が下がっている。
そこの5階留置所、第三独房に二つの人影があった。
ひとつは少年だった、年の頃は15、6歳ぐらいだろうか。
整った顔立ちと、短めの黒髪をもつこの少年は、独房の端で
10年間、想い焦がれた女の子に、きっぱりとふられたときのような、
絶望とあきらめの混じった表情をしていた。
それもそのはずだ、彼が身につけているのは、
両腕に銀のバングル、以上。
彼の今の状態を表す日本語は多々あるがそのなかでも、
全裸、または、すっぽんぽんが妥当だろう。
留置所に入っている、全裸の少年、誰がどうみても、立派な変態である。
体育座りをして膝に顔を埋めているため、きわどい部分はかろうじて見えない。
もうひとつは、白のタキシードにシルクハットに、赤いネクタイという、
少々、風変わりな格好をした壮年の紳士だった。
感心したように、独房の隅でふさぎこんでいる、暗い顔の少年に話しかけていた。
「いやはや、親子二代で大儀を果たすとは、敬服するしかありませんな」
それに対して、全裸の少年は沈黙を続けていた。
「この冬の寒空の中、そうそうできることでありません、本当に立派になられて」
「からかうのもいい加減にしろ、ドクトル」
少年がドスの効いた声色で釘を刺した。
紳士が咳払いをひとつし
「失敬、少々興奮しましてな」
と、言った。
「はあ、何でこんなめに」
少年が嘆息し、
「我々の崇高な嗜好は、一般人には理解されないことが多いのですよ」
紳士が真面目に告げた。
少年はまたひとつ大きなため息をついて、
「常人の健全な思考は変態には理解できないようだな」
と、吐き捨て、
「ええ、そうですよ」
紳士が優しく笑った。
「むっ?」
紳士が何かを察したように
「誰か来たようです、また合いましょう、裸王児」
と、告げ、暗闇にかき消えた。
「だれが、裸王児だ!」
少年が反論しようと立ち上がったところに、
「おい、川平、面会だ」
看守の警官がいった。
少年があわてて股間を手で隠した。
檻の前に立ったのは、
白髪をオールバックに固めた長身の男、特命霊的捜査官の仮名史郎と、
艶やかな黒髪を持つ、セミショートカットの少女だった、年頃は獄中の少年と同程度、
ミニスカートの下から、ひょっこりと覗く、ふさふさのしっぽが、しょぼんとたれていた。
少女が目を潤ませながら、少年を見やり言った。
「ああ、清明さま、おいたわしや」
清明と呼ばれた少年は、深い、ため息をつきながら言った。
「みやこ、おまえが好いてくれるのはうれしいが、寝起きを襲うのは感心しない」
みやこと呼ばれた少女は、嗚咽に言葉を濁らせながらいった。
「はい、ごめんなさい、ごめんなさい、わたしのせいで清明さまに恥をかかせてしまって」
みやこは泣きながらしゃくりあげている。
「どうしてこのようなことになったのだね?」
仮名史郎が尋ねた。
「そっ、それは・・・・・・」
みやこがモジモジしながら説明を始めた。
その日の朝。
紅葉を終えた落ち葉が、木枯らしに吹かれる、肌寒い晩秋の早朝。
吉日市の郊外にたたずむ、木造二階建ての一軒家に、清明とみやこは住んでいた。
それは、一階が和風、二階が洋風の作りになっていて、もとは二世帯住宅を想定されて造られたのか、各階にそれぞれトイレとキッチンがある。
なかなかの広さを持つ庭には、乗用車が二台は入る、大きなガレージが建っている。
物静かな家の中、二階に向かう階段を、みやこは鼻歌を歌いながら、上機嫌で登っていた。
手に持ったおぼんには、湯気たつコーヒーが二つと、クリームが入った小瓶が乗っている。
階段をのぼってすぐのところから、フローリングの廊下が奥まで続いている。
みやこはトテトテと歩き、二つ目のドアの前で立ち止まった。
『清明の部屋』と、書かれたボードがドアに掛かっている。
みやこは、ドアをノックして、間延びした声で聞いた。
「清明さま~、おきていますか~」
返事はない、中はいたって静かなものだ。
「入りますよ~」
みやこはドアを開け、主人の部屋に足を踏み入れた。
おぼんをテーブルに置いて、カーテンを引き、窓を開け放つ。
秋晴れの青空。
朝の陽光と、静謐な空気が部屋に入り込んでくる。
「さあ、朝ですよ、おきてください、休日だからって、いつまでも寝過ごしてちゃ駄目ですよ」
みやこはそういって、傍らを見やった。
折りたたみ式のベットのうえで、みやこの主人、川平清明は暖かそうな毛布に身をくるみ、
規則正しい寝息を立てている。

窓から吹き込んでくる木枯らしに、部屋の気温が少しずつ下がり始めているのに関わらず、
清明は安らかに寝入っていた。
「もう、おねぼうさんなんだから」
そういいながら、みやこはベットの端に腰掛け、、自分のいとしいご主人様の寝顔を眺める。
犬神ごころをくすぐる少し幼い顔立ち、細身ながらたくましい身体、すらりと伸びた手足、普段は頼りないが、誰かが苦しいとき、必ずそばにいてくれる存在、みやこにとって、すべてがお気に入りだ。
思わず、頬にキスする。
清明が、ううんと、一瞬、眉をしかめたが、また寝顔にもどる。
悦に入り、もう一度、今度は唇に。
そして、清明の寝癖の付いた黒髪を、手で梳き、愛撫する。
みやこは、もう、ご満悦だった。
やがて、みやこは、なんとなく、犬神学校で習った、
犬神の本懐とやらを思い帰していた。
其の一、犬神は破邪顕正を旨とし、主人に仕え、人々に害を与える魑魅魍魎と戦うこと。
其の二、犬神は主人に忠誠を誓い、主人の身の回りの世話をすること。
ここまでは、おおむね、あっている、しかし。
其の三、犬神は主人に添い遂げ、子を成すこと。
これは、大きな曲解であるが、とうの本人は、信じて疑わない。
それも無理はない、清明の母親は、犬神であり、父は、現役の犬神使いである。
さらに、犬神使いの家元、川平家の総元締めである、川平の宗家は二人の子を、成しており、いずれも母親は犬神である。
そんなわけで、みやこは契約の儀を、婚約だと思っている。
三つめの、本懐を果たすために、みやこは日々、努力していた。
このあいだは、いいトコまで行ったのに、駄目だった・・・・・・
清明の首筋に鼻を当て、クンクン、匂いをかいでいると、
心臓がトクトクして、微妙なところが、熱くなってくる。
今日は、いけるかも。
みやこは、毛布を、そっと、めくり、
したの方にある、モコモコを確認した。
よし、いける。
「清明さま、失礼しま~す♪」
喜々として、清明の布団の中に、もぐりこんだ。
ベットがギシギシと軋む音が、殷殷と続く。
・・・・・・・・・・・・・描写割愛。
体操の一種、
絶対に。
少し後、清明が、やっと覚醒して、
ふたりで、いいトコまで、いったとき。
鈴が鳴るような、高い音がしたと同時に、
清明は、着衣だけを残して、忽然と姿を消していた。
独り、のこされた、みやこは、
なんだか、悲しいやら、悔しいやらで、
胸が、いっぱいに、なっていた、だから、
「ど~して、いつもこ~なるの~~~~~~!!!」
力一杯、叫んだ。
その悲痛な叫び声は、何度も、何度も、谺し、リフレインして、
辺り一面を、覆い尽くていった。
天井裏から、成り行きを見守っていたドクトルが、大音量に耳をしかめ。
明け方に、みやこが庭に撒いた、米粒をついばんでいた、
すずめたちが、驚き、一斉に飛び立つ。
 上空の、雲の上で寝ていた、仙人が、何事かと、跳ね起き、辺りを見回して。
 近くの、川を流れていた、河童が、くけけと鳴いた。
 しばらくして、叫び終えた、みやこは、清明を捜して、町中を、駆けずり回った。

 先ほど、駅前の商店街で、全裸の少年を補導した、勤続三十年になるベテラン警官は、ノートパソコンに今日の記録を打ち込んでいた。
 机には様々な報告書や資料が散乱し、吸い殻があふれ出さんばかりにねじ込まれた灰皿と、妻と娘が写った家族の写真が置かれていた。
 ふと、タイプをしていた手を休め、画面から目を離し、目頭を押さえ、乾いた目玉に涙で潤いを与える。
 画面に目を戻しキーボードを打つ、そうして今日、補導した少年の報告書を打ち始める。 名前は川平清明。
 「うん?、川平?」
  警官は何か気になった様子で、ワープロソフトを最小化して、下の方に保留する。
 インターネットに接続して、警視庁が管理する警察官専用の個人情報データバンクにアクセスする、個人認証するための、パスワード入力ウインドウが現れた。
 警官はウインドウにIDと、六文字ほど米印を入力して、サイトに入った。
 検索エンジンに川平清明と入力する。アクセス中と画面に表示され、さほど時を待たず、それと思われる人物のリストがあがる。
同名の人物が三人ほどいたが、名前の横に簡易的な情報があったため、補導した少年と同じ生年月日の人を選び、リンク先をクリックした。
 少年の個人情報が一瞬で表示される。
それは、住所、氏名、年齢、電話番号、血液型、過去の犯罪歴、血縁関係、などが顔写真付きで書かれていて、そういう情報を使って商売している人には、喉から手が出るほど欲しい代物だった。
 警官が少年の両親の欄を見る。そこに書かれていたのは、
 父・川平啓太、母・川平ようこ。
 それを見て警官は驚嘆した。
 「あの川平かっ!」
 川平啓太。警官は彼を十数年前、何度となく逮捕した。
 罪状は全裸でのストリーキング。
 ここ十年、見ないと思ったら、あいつも身を固めて所帯をもったか~、時が経つのは速いなぁ、うんうん。と、警官が少し、しみじみした。だが、
「息子に継がせたのか・・・」
頭を抱えた。定年退職も目前だというのにもう一波乱ありそうだ。

「まったく、川平ってのは、変態の家元なのか」
警官が吐き捨てた。

同時刻。
「ハックションっ!」
川平家の本家の一室で、川平宗家は、大きなくしゃみをひとつした。
ちなみに川平家は変態の家元ではない、由緒正しき犬神使いの家元である。
洗濯物にアイロンをかけていた、割烹着姿の少女、なでしこが、
宗家に駆け寄り、
「あらあら、お風邪ですか?」
といい、取り出したハンカチで鼻を拭う。
「大丈夫だよ、なでしこ」
 宗家が微笑んで言った。
「なにか、温かい物でも、お持ちしましょうか?」
「ああ、ありがとう、頼むよ」
「では」
なでしこが淑やかな物腰で台所に向かう。
宗家はそれを見送り、手元の書類に目を戻した、そして。
「これは、一騒動ありそうだね・・・」
意味深につぶやいた。

留置所の独房。
「シクシク・・・なんでだよ~、仮名さ~ん、出してくれよ~」
川平清明はすすり泣いていた、その理由は、
みやこの話を聞いた仮名史郎は顔を赤くして、
しばらくそこで反省してなさい!、と言って出て行ってしまったからだ。
みやこも、お召し物を取って参ります、と告げて、家に戻ったきりまだ帰ってこない。
今は晩秋、とても寒い、全裸では身が持たない。
清明が悲痛な声で助けを呼ぶ。
「ううっ、誰か~、看守さ~ん」
返事は帰ってこない、その代わりに、天井から嘲笑うような声がした。
「くすくす、お兄ちゃん、惨めだね~」
そして、天井付近の影から、人が現れ、牢獄の床に降り立った。
「ひさしぶりだね、お兄ちゃん」
「くっ、葛葉っ!」
清明の実妹、葛葉である。
腰まで伸びた漆黒の髪。妖艶な美貌に不敵な笑みを浮かべている。
清明は最近、表情や立ち姿が、母親に似てきたなと思う。
ふさふさのしっぽをふりふり。清明のていたらくを観察する。
「また、しゅくちに失敗したんだ~、いや、暴発?」
 くすくす。
 「連帯封印のせいだよ、おまえはなんともないのか?」
「全然、絶好調♪」
 「ったく・・・」
葛葉には、犬神の長、はけによる封印が施されている。
それは、葛葉の有り余る強大な霊力を、抑えるためのものであり、その封印は特殊で、
清明と連帯的に結ばれている。清明は常に葛葉の封印の制御に、力を使っているため、霊力が不安定になり、ふとした拍子に、術が暴発してしまうことがある。
「あ、そういえば、みやこちゃんとは、よろしくやってるの?」
ちらりと横目で清明を見やり。
「まあ、その様子なら心配なさそうだけど」
と、大仰にうなずく。
朝、清明とみやこがしていたことを、葛葉は見透かしているようだ。
「ここ一ヶ月、いままで、どこに行ってたんだ?」
清明が聞く。
葛葉には前々から放浪癖があり、家には殆ど居着かない、両親は特に気にかけないから、一番心配しているのは、清明である。
「おじいさまと一緒に、西の方に、ぶら~っとね」
西の方。なんとも曖昧だなと、清明は思った、おじいちゃんも一緒となると、
何をしてきたのか、怖くて聞けない。きっとすごい『ぶら~っと』だったんだろうな。
 独房の壁をスウっとすり抜けて、みやこが帰ってきた。
 彼女は大きめの紙袋を胸に抱えていた。
「清明さま、お持ちしました」
と言って袋を清明にさしだす。
「おお、でかした」
清明は袋を受け取り、中に入っていた着衣一式を、素早く着込む。
最後に、みやこお手製のちゃんちゃんこを羽織り、これも、みやこが気を利かせたのか、使い捨てカイロまであった、清明はその封を切り、揉む、暖かくなってきて、やっと生きた心地を取り戻した。
「ところで、これからどうするの?、おとなしくここで反省してる?」
葛葉が問い。
「さあ、どうしようかな?」
清明が、隣に寄り添った、みやこの頭をくしゃくしゃ撫でながら、曖昧な返事をした。
みやこはうれしそうにゴロゴロと、のどを鳴らしている。
「脱獄しちゃう?」
ちょっと楽しそうに、葛葉が聞いた。
「う~ん」
 清明が少し考えた。
脱走したって、仮名さんが、何とかしてくれるよな、それに、
「俺、今日、朝飯食べてないからな、腹減った」
そう言って、清明が白い歯を見せてニヤリと笑う。
「そうこなくっちゃ」
くすくす笑って、葛葉が人差し指を唇に当てた
 しゅくち。
りんっ、と鈴の鳴るような、清んだ高い音がして、
 三人はその場から掻き消えた。

 河童橋。
 吉日市の北西に位置する全長二十メートルほどの石造りの橋である。籾川と呼ばれる比較的、澄んだ清流の上を市内と郊外を繋ぐ形で築かれていた。
 その橋の下に一件、小屋が建っていた。
 木材で骨組みを組み、ベニヤ板で壁を張り、浸水防止に青いビニールシートで覆って、飛ばされないように、黄色と黒の色をした、ひもで括った粗末な物だ。
「あ~あ、いい天気」
 小屋の中から、シートをかき分けて出てきたのは、ホームレスのおっさんではなく、
可憐な少女だった。
 癖のあるウエーブのかかった、黄土色の髪をツインテールに結んでいる。
かなり小柄な体躯ながら、でるところはでている。かなりの美少女だ。
 河川敷の掘っ立て小屋に住んでるような、容姿ではない。
 少女は一つ大きな伸びをし、小手を翳して川の方を見やる。
 河童が三匹、並んで川を流れていた。そのうち一匹は子供なのだろうか、隣の二匹より小さい。
「お~い、河童さん達~おはよ~」
 少女が河童に手を振る。
「うけけ~」
 河童達が気づいて手を振る。そして流されないように立ち泳ぎする。
「うけけ~うけけけ~」
 小さい河童がいった。
「用事あるから今はだめよ~お昼に来て~ごちそう作るから~」
 少女が間延びした声でいう。河童の言葉が解るらしい。
「うけくけ~」
了解したかのように河童達は泳ぎに戻った。
「さて」
 少女は小屋に立て掛けられているボロボロのママチャリを起こして、またがる。
「行くわよ!」
ママチャリの籠には、クマの刺繍の入った買い物鞄と、スーパーマーケットの大安売りのチラシが入っている。
 少女の目がぎらぎら光っている。
「朝一爆安売り! 絶対ゲットするぞ!」
そして市街に向かってママチャリをこぎだす。
苦労しているようだ。

 清明とみやこは駅の近くの繁華街にいた。
 みやこは半ば抱きつくように、清明に寄り添っている。至極うれしそうな笑顔で歩きながら時折、清明を見やる。
 一方、清明はというと恥ずかしそうに顔を伏せている。理由は可愛い女の子に抱きつかれているからではない。
 清明はさきほど、ここを全裸で疾走したばかりだ。道行く人の視線が怖い。
 さて、なぜ清明がみやこを連れて犯罪現場に戻って来たのかというと。

 少し前、家へと舞い戻った清明達はみやこの作った料理を食べた。
 食事が終わったあと、葛葉はドルでも円でもないお札の束を持って、お買い物に行ってくると告げ、またどこかへ行ってしまった。気でも効かせたつもりだろうか。
 しかしあの札束はいったい…
 そう思うと清明の不安は募るばかりだった。
 葛葉が居なくなったとたんみやこの誘惑攻撃が再開された。
 清明は、抱きついてお熱いキスを浴びせてくるみやこを制して、こいつ全然懲りてないなと思いつつ、
「そ、そうだみやこ、どこかに出かけよう! 好きな所に連れてってやる」
と、提案した。家にいたらこいつの思うつぼだ。
 そして今に至る。
 以外にもみやこが希望したのは、一緒にお買い物だった。
 目当てのスーパーは繁華街のど真ん中にあり、どうしても通らねばならない。
 多くの人に裸体を見られたのだ、それは気が気ではない。
 一方みやこはとろけるような笑顔を浮かべている。清明はやっぱり憎めないなとおもいつつ、いろんな意味で顔を赤める。


[ 清明 |06/11/16 ](2/756-761,767-771,820-825,829)
最終更新:2007年01月03日 04:30