たゆねのはんざいっ!



 ここは川平啓太のテント…その日、啓太達は、拾ってきたもので一杯になっていたテント内の掃除をしていた。
すると、啓太はあるモノを発見する、それは、赤道斎の魔道具の一つで、前に仕事で薫から拝借したものであった。
すっかりこの存在を忘れ、借りパク状態であった魔道具。
最近、ようこのせいでストレス満タンの啓太は、憂さ晴らしをするかの様に、その魔道具を悪用しようとしていた。
「にひひっ…ハーレム!、恋人一杯!犬神とやっても人間の子~!」
「ケイタ?何やってるの?」
タイミング悪くようこが登場…それに焦る啓太。
「げっ!ようこ!」
「何それ?」
「あ、いや…これは…そのだな…ちょ、ちょっとした遊びで…」
「遊び?ちょっと!人には掃除させといて、そんな子供みたいな…!」
とようこの怒号に反応してか、魔道具が啓太の掌で輝き始める。
「う、うわっ!馬鹿!」
「え?ええ?」
訳の分からなく慌てるようこと、訳が分かっていて慌てている啓太。
啓太は大惨事を免れようと、何とかして止めようとするが、発動してしまった魔道具は止まらず、輝く光は啓太を包み込んでいった。
「うぉぉぉぉ!この感覚まさかぁぁぁ!またアノ姿になるのかぁぁぁー!」
「ケイタ?ケイターーーーー!」
「赤子はもう嫌だぁぁーーーーー!せめて猫耳メ…!」
絶叫と共に消えていく光…やがて収縮していき、ようこの目が眩しさから和らいでいく。
ようこは、ハッとして啓太の身を心配し、彼の方に顔を向けたが、そこに彼の姿はなかった…そう今の彼の姿は…。
「ケイタ…?あ、あれ…あたし…?」

1 子供っ!

啓太の犬神である、ようこは、ある事情で川平薫の屋敷に訪れていた。
しかし、いつもはいる筈の啓太は、何故か一緒ではない。
その代わりといっては何だが、ようこと手を握って、ソファーに遠慮がちに座っている、まだ幼い子供がいた。
年頃で言えば、まだ4~5歳くらいであろうか。
一見、女の子のようにも見えるが、半ズボンにティーシャツの姿であった為、どうやら男の子らしい。
だが、その愛らしい姿に、薫の犬神達は、ずーっとその子供の事を見ていた。
「よ、ようこ…その子って…」
せんだんが、扇子を口の前で開かせて、まさか!と思いながら、ようこに問う。
応接間に集まった薫の犬神達が、驚きと興味の目を、その小さな子供に集中させる。
人見知りが激しいのか、子供は黙ったまま、ようこの後ろに隠れてしまった。
「うん、私とケイタの…って言いたいけど、そうじゃないのよねぇ…」
そうであれば良いなぁ、と思いながら、ようこは自分の子ではないと否定する。
「じゃあ、寝取られた女の子供?」
どこでそんな言葉を覚えたのか、ともはねが首を傾げて質問する。
「ちーがーう!この子はケイタなの!第一!私たちの子供が、1年やそこらで、こんなに急激に成長するわけないでしょ!」
「啓…太…様?」
ポカーンと一同が口を開けて、しばらくのまま黙り込むが、すぐに大変な状況だと理解したのか。
「啓太様ーーーーーーーー!?」
と身を乗り出して、ようこの後ろに隠れている、幼い川平啓太に密集した。
「ウソ!ウソ!何で?何で?」
いまりとさよかが、啓太である幼い子供の頬をツンツンと突付く。
「どうして、こうなっちゃったんですか~?」
フラノが、啓太の手を優しくニギニギする。
「ちょ、ちょっと…本当に啓太様…!?」
せんだんは、緊張で縮こまっている、啓太の頭を撫でる。
「薫様との…ショタ本が出来る!」
「うん…なるほど…」
いぐさが、何かノートに書き込んでおり、てんそうが、その内容をスケッチブックに明確に描いている。
その中身とは…とても言えない状況の薫が、幼い啓太を…後はご想像にお任せしよう。
皆は皆で迫力はあるが、それ以上の威圧と覇を放っている二人がいた。
「(美味しそう…)」「(啓太様の小さいお姿…今からでも遅くない…貰う)」
たゆねと、ごきょうやである。
二人は黙ったまま、幼くなってしまった啓太を、まるで獣が餌を狙っている時の目をしていた。
「こ、こら!あんた達!あまりケイタを弄るんじゃないの!」
群がる犬神達を、払いのけるように、しっ!しっ!と手でジェスチャーをするようこ。
その隙をついてか、後ろで待機していたなでしこが、すかさず啓太である幼い子供を抱かかえる。
「啓太様、お姉ちゃんと一緒にお昼寝しましょうか?」
「……」
甘いなでしこの言葉に、恥ずかしがりながら、小さくコクンと頷く啓太。
「こら!デレデレしない!」
ようこは、ポコツン!と軽くケイタの頭を叩くと、それに驚いたのか、啓太は、口元を歪ませて、目元に涙を溜めていた。

「ひっぐ…」
「あっ…ご、ごめんね、つい、いつもの癖で…」
「ようこさん!駄目じゃないですか!あー、ほら、泣かないで」
なでしこは、泣きそうになっている啓太を、上手にあやして、我慢するように優しく声を掛ける。
その甲斐あってか、ギュッと、なでしこの服を掴んで、涙を堪える啓太。
「うん、いい子、いい子」
なでしこは、我慢したのを褒めると、啓太を強く抱きしめて、自然にと、応接間から出ようとしていた。
「ちょっと待ちなさい…」
「…はぁ、失敗ですか」
だが、ようこがそれを許さず、なでしこの策略はここで潰えた。
「ほら、貸しなさい!はーい、ケイタ~、怖いお姉ちゃん達はみーんな、私が追い払ったからね~」
ようこは、なでしこからケイタを奪うように取り返すと、微笑みを見せて、ケイタを抱っこする。
「あーん、ずるっいー!あたしも!」
「ともはねの体型じゃ、抱っこ出来ないでしょ」
ともはねは、お姉ちゃん気分を味わいたいのか、啓太を抱っこしたいと、ようこにせがむ。
しかし、ともはねの身長では、啓太と手を繋ぐくらいしか出来ないであろう。
「いいな~、フラノも抱っこしたいな~」
フラノが羨ましそうに指を咥えながら、自分も抱っこしたいと、ようこに訴えている。
「はぁ…あのね、今日はケイタを玩具にする為に、連れてきたんじゃないの!」
ヒョイッ!とフラノを回避すると、今日訪れた事情を、一同に話し始めるようこ。
「なるほど…では、啓太様は、薫様から借りた魔道具を使って、こうなったと…」
「ええ、そうよ…しかも、記憶も曖昧でね…ある程度の事は憶えてるんだけど、名前とそれが誰なのかは一致しないのよ…性格まで変わっちゃって…もう3週間もこのまま」
せんだんは、ようこの説明に納得して、頭の中で整理すると、ポケッとこっちを見ている啓太を見る。
「(啓太様のその瞳…今から私色に染めろと…そう仰るの!)」
「あ、でも、はけの事ははげ…って…せんだん?聞いてる?」
「あ、え、ええ!聞いてますわ!」
せんだんは、不覚にも、啓太の無垢な顔に見惚れてしまっていた。
「それでね、はけに聞いたんだけど…強力な呪いか何かで、いつ解けるか解らないって言うのよ…だから、管理者の薫なら、何か知ってるんじゃないかと思って来たんだけど…」
「その薫様は、仮名様とお仕事でいない…と」
ようことせんだんの会話を聞いていたなでしこが、空かさず薫の携帯に電話を掛けるが、携帯は圏外か電源を入れていないらしく、連絡が取れない。
「駄目ですね…繋がりません」
「そう…はぁ…どうしよう…」
ようこは、頼みの綱の薫がいないと知って、頭を抱えて悩んでいると、それを知ってか知らずか、啓太がモジモジしながら、黙っていた口を開いた。

「ねぇ…ようこお姉ちゃん…僕…もう帰りたい…」
「よ、ようこお姉ちゃん!?」
一同が驚愕し、またも身を乗り出して、ようこにグワッ!と喰い付いてくる。
「な、何よ…?」
「ねぇねぇ!啓太様!私達の事も、いまりお姉ちゃん、さよかお姉ちゃんって言ってみて!」
双子の姉妹がハモリながら、啓太にお姉ちゃんと呼んで欲しいと頼む。
「わ、私の事は、せんだんお姉さまで宜しくってよ!」
「あたしは、ともはねお姉ちゃんね!」
「てんそう…お姉さんでいいわ…」
次から次へと、啓太にお姉ちゃん、お姉さん、もしくはお姉さまと呼んで欲しいと、ここぞって集まってくる犬神達。
小さい啓太には、その圧倒的な女の恐怖は重く、またも泣き出してしまいそうであった。
「はいはい!皆退がって~、退がらないと、だいじゃえんするわよ」
しつこ過ぎる皆に痺れを切らしたのか、ようこの指の先に、ボッ!という音と共に、じゃえんが集まってくると、犬神達は、しゅん、と大人しくなって、ようこと啓太から離れていった。
「みんな、理解のある子で、私は嬉しいよ~…じゃあ、そんな皆にすごいもの見せてあげる」
そう言うとようこは、いきなりサマーセーターを上にずらすと、胸の下着のホックを外し始めた。
「よ、ようこ!な、何をはしたない事を!」
突然の奇行に驚く一同。
代表のせんだんは、デリカシーが無い!と、ようこに注意するが。
「だまってなさい…」
と睨みつけて、せんだんを一蹴した。
「はーい、ケイタ~、お待ちかねのおっぱいでちゅよ~」
下着のホックを外し終えた途端、耳を疑うようこの言葉と同時に、彼女の胸の先端にある母乳パットに目が行く一同。
その様子にフッと笑うと、ようこは見せ付ける様にして、貼っていた母乳パットを外した。
すると、啓太の目の前に、ぷるんっ!と弾力性のある胸と、その先端から滴っている母乳が曝け出される。
唖然とする犬神達…いぐさなんかは、両手で顔を覆って、指の隙間からそれを見ていた。
「ふふっ…おどろいた?」
「お、驚くも何も!ど、どうしたんですか!ようこさん!」
勝ち誇った顔をするようこに、なでしこが質問をすると、高圧的な態度になって、その質問に答え始める。
「実はねぇ…呪いにかかったのはケイタだけじゃないのよ、その場にいた私も、何だか知らないけど呪われちゃったみたいでね」
「呪いって…そんな!」
「妊娠もしてないのに、ぼにゅーが出ちゃうなんて、おかしいわよね?」
「おかしいとかそんな問題じゃ…!」
自分の身に何が起きてるのか分かっているの?、と疑問をぶつけたいなでしこであるが、それを遮ろうとしているのか、ようこの話は続く。

「最初は私だって大慌てよ、これからどうすればいいのか…ってね…でもね…こうやって…」
ようこは、片方の手で啓太の後頭部を優しく押すと、自らの乳房へと押し付けて、彼の口に、母乳が溢れ出している突起物を含ませた。
「んくっ…」
「ケイタに自分のぼにゅーを飲ませてあげられるのよ…私自身の身体は、このままでもいいかなって思うわけ」
慈母と悪魔の顔が混ざった表情で、啓太を見つめながら授乳するようこ。
その異様な光景に、薫の犬神達は退くどころか、じっくりと観察している。
せんだんは、可愛らしく母乳を飲んでいる啓太に、ゴクッと喉を鳴らし、なでしこは、啓太に授乳させる事が出来るようこを羨ましく見て、
ともはねは、母と子の様な二人の姿に感動し、いまり、さよか、フラノに関しては、いつの間にか、ようこの両隣に陣取り、啓太の頬を突付いていた。
「何か…エッチだけど…ほのぼのする」
と、後ろで見ていたてんそうがボソっと呟く。
「(ようこぉぉ…ボクの啓太様に何してるんだぁぁ…)」
「(け、啓太様が…ようこに汚されてしまう!)」
てんそうの更に後ろでは、ようこの傍若無人なケイタ独占に、憤りと怨念を放っているたゆね、ごきょうやの二人がいた。
「それにね…ケイタったら、お腹が一杯になるまで、どんどん吸っていくから、すっごく気持ちいいの」
ようこは、快感を独占している事を、誇らしげに伝える。
「…ようこお姉ちゃん…恥ずかしいよ…」
皆からの視線に耐えかねた啓太は、ちゅぱっという音と共に、ようこの乳房から口を放す。
吸っている途中であった為、ようこの母乳が、啓太の口の周りを白く塗っていた。
「なぁに言ってるの、いつもは、おっぱいおっぱい甘えてくる癖に」
「だ、だって…恥ずかしいんだもん…」
羞恥心に駆られた啓太は、またも泣きそうになって、ようこの腕から解放されようと、必死に抵抗するが、普段の啓太でも勝てない相手に、力で勝てるはずもない。
やがて、体力もそれ相応分しかない啓太は、疲れきって抵抗空しく、力尽きようとしていたのだが…。
「止めろ!嫌がってるだろ!」
「そうだ、可哀想だ」
ようこの腕を払いのけて、啓太を略奪する犬神。
啓太を奪ったのは誰だと思い、ようこがフッと顔を上げると、そこには、先ほどまで大人しくしていた二人の犬神、たゆね、ごきょうやがいた。
「ちょっと!私のケイタに何するの!」
「どうもしない!それより、啓太様が嫌がってるのに、何やってるんだ!」
小さくても、愛しの啓太の嫌がる顔が見たくないたゆねは、ようこが相手だとしても、怯えずに激昂した。
「何って!じゅにゅーでしょ!」
「バカ!赤ん坊じゃないんだから、授乳する必要なんてないだろ!」
「そうだな、見てくれはもう幼児なんだ…たゆねの方が正しい」
喧嘩している二人の間に入り、たゆねに味方するごきょうや。
だが、それが気に食わなかったのか、ようこは額に青筋を立てて、手に霊力を溜めていた…。
「ふーん、そう…そんなに死にたいんだ…」
「くっ!そ、そんな脅し…効かないからね!」
徹底的にようこに抗戦するたゆね。
その腕の中では、啓太が恐怖のあまりに震えていた。

2 ようこ、きらいっ!

「たゆね…ケイタを返しなさい…さもないと…」
「うっ…い、嫌だ!お前に啓太様を返したら!啓太様が可哀想だ!」
「た、たゆね…!」
たゆね、ごきょうやとも、怒り心頭のようこから一歩も退かず、懸命に啓太を守ろうと、彼女の脅しを耐えていた。
「そう、ならいいわ…しゅくちを使って啓太を奪ってから、あんた達を丸焼きにしてあげる…」
「ようこさん!やめて下さい!」
「うるさい!なでしこ…今の私はあんたでも止められないわよ…」
「ど、どういう意味ですか?」
口元をニヤッとして、自信ありげな表情で、なでしこを威嚇するようこ。
「言い忘れてたけど、呪いにはねぇ…何故か知らないけど、霊力を高めてくれるっていうサービスもついて来たのよ…この前ちょっとだけかるーく、じゃえんを使ったらね…お山が一つ、一瞬で消えたの」
「よ、ようこさん…じゃえんで、山一つって…そんなに…」
「ええ、綺麗さっぱりね…まぁ、どのくらいの強さか例えると…あの漬物石が30000あっても足りないわね」
「さ、30000でも足りない!?」
ようこのその言葉に、さすがのせんだんも冷や汗を覚える。
「設定に無理があるんじゃないでしょうか…ようこさん」
「いいの!こうでもしないとケイタ取り返せないじゃない!」
何か、適当に10倍界○拳でも使ったかのようになっているようこに、なでしこが冷静にツッこむ。
「じょ、冗談だよね…ようこ」
強気であったたゆねも、破滅的なようこの霊力に、先ほどの姿勢を崩し始めていた。
明らかに怯えている様子…ようこは更に悪ぶった顔を見せ付けると、ウソではない事を証明する。
「冗談かどうかは、あんたの後ろの犬神を見てみれば分かるんじゃないの?」
「えっ?…あっ!いまり!さよか!」
たゆねの目に映ったのは、床に伏して震えているいまりとさよかの姿であった。
その他にも、フラノ、てんそう、いぐさ、ともはねも、ようこからなるべく離れて、恐怖に引きつった顔になっていた。
「うっ…」
「ごきょうや!」
「わ、私なら…大丈夫だ…それより啓太様を…」
床に膝をついて、プレッシャーに苦しむごきょうやは、自分ではなく愛すべき啓太の身を案じている。
「ど、どうやら…冗談では…ないよう…ですわね」
「ええ~、これで分かってもらえたかしら?」
禍々しいプレッシャーに、せんだんの声も上ずっていて、なんとか立っているのが精一杯だった。
「ようこさん…」
「なでしこ…やっぱりあんたは平気なんだ」
「本当に止めて下さい…本気で怒りますよ…」
「いいんじゃない~、別に怒っても」
勝つ自信は充分にある…目に映るなでしこは、蟻よりも小さく思え、指先でプチン!と潰せそうにようこは感じた。

「さぁ、怒りなさいよ!」
ようこは、髪を掻き揚げて、なでしこを挑発する。
「ようこさん…!」
お腹に力の入ったなでしこの声が、応接間に響いて、ようこの霊力を拡散していく。
「このままでは…町一つ所じゃ…済みませんわ…!」
膨大な霊力の衝突が、起きた場合の事を想像するせんだん。
彼女の言うとおり、今の二人が戦闘を行えば、大惨事へと繋がる。
「へぇ~、やれば出来るじゃない…やらずのなでしこさん?」
「ようこさん…行きますよ…」
グッ!と身体全体に霊力を帯び、戦闘へと移行しようとする二人…もはや止めようが無いのかと、皆が絶望へと堕ちそうになっていたその時。
「ようこお姉ちゃん嫌い!」
「へ?け、ケイタ?」
たゆねの腕の中で、不機嫌そうな顔している啓太の一言で、シュゥゥ…と霊力が身体から抜けていくようこ。
それに伴い、冷静さを取り戻したなでしこも、いつも通りの彼女に戻っていた。
「け、啓太様…?」
「い、今、なんて言ったの?」
不安そうな顔で、啓太が今言った事が空耳だと思い込み、もう一度聞いてみるようこであったが、次の言葉は更に酷く。
「やだっ!ようこお姉ちゃんなんかどっか行っちゃえ!」
という子供である故の無慈悲な言葉であった。
「ど、どっかいっちゃえ…どっかいっちゃえ…?」
暫く、啓太の言葉を理解出来なかったようこ。
諦めが悪く、啓太から否定を受け入れない彼女は、何度も啓太の言葉を連呼すると、彼女の顔は悲しみに歪んで、今までに見せたことの無い泣き顔を曝した。
「ひっぐ…えぐっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーん!」
「うぐっ!な、何だよ!この泣き声は!」
物凄いようこの、泣き声の音量が、全員の脳に揺さぶりをかける。
「ケイタに、ケイタにきらわれたぁぁーーーーーー!」
「痛い!頭が痛いですわ!」
耳を抑えても、直接脳へと進入してくるようこの泣き声は、ケイタを含む11人全てに苦痛を与える。
「うえぇぇぇぇん!もういきていけないよぉぉぉーーー!」
もうようこは、何をやっているのか分かっていないだろう。
泣きながらゆっくりと歩き始めると、何を言っているのか分からない叫びを上げて、応接間を出て行こうと、廊下に続くドアへと向かって行った。
だが、そこがドアだと理解していないのか、豪勢に頭をぶつけて倒れると、しゅくちを使って何処かにいなくなってしまった。

「よ、ようこ…?」
啓太を抱かかえているたゆねが、ようこの名を呼んだが、彼女の姿は既にない。
あるのは、ようこの泣き声で破壊されたガラス窓やテーブルの残骸であった。
「た…助かりましたわ…」
ようこの重圧から逃れられ、へなへなと内股で座り込むせんだん。
なでしこも、相当の恐怖を感じていたのか、息を乱しながら、額の汗を拭っていた。
「皆さん、無事ですか?」
「う~ん、何とか…」
「私も~」
なでしこの問いに、いまり、さよかがフラフラになりながら答える。
「ともはねは?」
「だいじょうぶぅ~…」
余ほどの事だったため、まだ霊力の低いともはねは、目を回しながら壁にもたれかかっていた。
「しかし…啓太様があの時、ようこを嫌いって言ってなければ…私達は死んでいたな…」
「そうですね~、フラノもあの時は動けなかったですぅ…」
「死ぬかと…思った」
「ふぇぇ…薫様と啓太様のショタコンが…」
てんそう、いぐさは、バラバラになった、スケッチブックと紙切れを、せかせかと集めていた。
「…命があっただけでも良かったと思うんだ…」
ごきょうやは、お尻をパンパンと叩いて、埃を落とすと、たゆねに抱っこしてもらっている啓太に近づき、優しく頭を撫でる。
「啓太様…有難うございます」
「…えへっ」
まだ穢れを知らない(もう知ってしまっているのだが)啓太の笑顔が、ごきょうやの胸をドスン!と貫く。
「(か、可愛い!今すぐ食べたいっ!というか食べてください!と神の思し召しだぞ、これは!)」
ショタ気が、あるのかないのか知らないが、欲が抑えきれなくなっているごきょうやは、片手をワキワキさせながら、啓太を掴もうとしたのだが。
「こらっ!ごきょうや!」
たゆねに手を払われて、見事に阻止される。
「あっ…つい…」
ごきょうやは、手の甲の痛みにハッとすると、正気に戻り、啓太に申し訳無さそうにしている。
「ったく、油断も隙もないよ!」
と言いつつも、目の奥では啓太を獣の目で捉えて、ここぞと好機を待っているたゆね。
「なでしこ…お聞きしたい事があるの」
「何ですか…?せんだん」
まだ座り込んでいるせんだんは、真剣な眼差しで、なでしこを見ると、扇を開いて顔を半分隠した。

「あの時…貴方はようこに勝てました?」
「……いいえ」
率直に答えるなでしこに、やっぱり…という顔で納得するせんだん。
「そうでしょうね…見ていて分かりましたけど…あの時の貴方…本当は動けなかったんじゃなくて?」
「はい…その通りです…形だけは構えてましたが…その後はもう…」
なでしこの独白に、一同がざわつく。
ようこに恐れられている自分でさえも、今の彼女にとっては赤子同然であったと、皆に言っているようなものであった。
ようこの圧倒さを思い出し、シーンとする室内…誰もが重苦しく口を閉ざして、黙り込んでいる。
「ま、まぁ…過ぎたことを悩んでも仕方ないしさ…それよりも、今は啓太様をどうするかだよ」
と、たゆねが、重い空気を払うように、抱かかえている啓太の処遇を聞いた。
「そうですね…ようこさんが拒絶されたから…啓太様は一人ぼっちなんですよね」
「ん?そんなに悩む事でもないだろう…」
ごきょうやは、何か良い提案を思いついたのか、キリッとした顔で皆に考えを聞かせた。
「私達で預かればいいだけの話だろう?」
「あずかるって…啓太さまを!?」
ともはねが、ごきょうやの提案に驚く。
「そうだ、今の啓太様は純粋な子供だ…こんな子供を一人で放って置いたらどうなる?」
「誘拐…そして調教…最後には肉奴隷…男の子なのに女の子の服を着せられて…うふふふ」
「い、いぐさ…何言ってんだよ…」
「いぐさ…最近おかしくなってきた…」
眼鏡を光らせて、不敵な笑みを浮かべるいぐさに、たゆねは元より、てんそうも少し退く。
「ご、ごほん!そ、そこまではいかないが、ショタコンの魔の手による誘拐の危険性はある!そこで!啓太様は私が!」
「ごきょうやがショタコンだろ!」
ごきょうやの啓太強奪突進を、ヒョイッと回避するたゆね。
案の定、ごきょうやは、スイーっと応接間の床を、ボブスレーの様に滑っていった。
「ご、ごきょうや…」
「け、啓太さまー…」
壁に頭をぶつけて目を回しながら、気絶するごきょうやを見て、なでしこは、アーメンと祈りを捧げた。
「ごきょうやちゃんは駄目だとして、どうするんですか~?」
フラノが、リーダーであるせんだんに聞くと、彼女は。
「こういう場合は、白骨遊戯…むぐっ!」
「せんだん…それは禁忌だから無理です」
なでしこは、これ以上言わせないように、せんだんの口を思いっきり塞ぐ。
そのせいで、あろうことか、せんだんは気を失い倒れてしまった。
「せんだん…」
この時、本当はようこではなく、平然とした顔で仲間を殺れるなでしこが、一番怖いと皆は思った。

3 けものたちっ!


 結局、割り箸くじ引きで啓太を誰に預けるか決めた一同は、気絶しているせんだん、ごきょうやを抜いて、勝手に話を進めていた。
そして、見事に当たりクジを引いたのは、啓太をようこから守った、他でもないたゆねであった。
でも、当たって当然である、何故なら、当たりの棒に匂いをつけて、必ず引けるようにと、イカサマしていたからであった。
「じゃあ、ボクで決定だね!」
「えーっ!たゆね、ずる~い!」
いまりが不満そうに頬を膨らませる。
「何でずるいんだよ!くじ引きだから公平だろ!」
「だってだって!さっきも、たゆねが啓太様を抱っこしてたし~…」
さよかもいまりと同じく、不満タラタラであり、たゆねにイチャモンをつけてくる。
「(…あれ?このクジが当たりだった気が…たゆねにしてやられました?)」
イカサマをしたのに、ハズレになったなでしこが、誰にも悟られないように、黙ったまま片手で、持っていた割り箸をへし折った。
「う~、あたしも啓太さまと一緒が良かったのに~」
ともはねは、ハズレてしまい泣きそうな顔で、引いた割り箸をカミカミしている。
「せっかくのショタのモデルが…身体が…」
別の意味で残念だと、涙を流しているいぐさ。
「まぁ…まぁ…」
それを宥めるてんそう。
「あーあっ…フラノと一緒なら、夜のお勤めも充実しているのに~」
「充実させるなっ!」
何を垂らし込ませようとしているのか知らないが、フラノはハズレた割り箸を投げて、つまんなそうに愚痴を言う。
「たゆね~、本当は何かイカサマしたんじゃないの~?」
どうしても不服ないまりが、カマをかけるように、疑い深くたゆねに聞いた。
「な、何を!バカな事を!」
と分かりやすいご丁寧な返事を返してくれたたゆね。
「だってさ~、このクジ作ったのたゆねだし~」
「最初に引いたのも、たゆねだったし~」
双子の疑いの目が、たゆねに、じろ~っと向けられる。
「で、でも、ビンの中に割り箸入れてシャッフルしたのは、なでしこだろ!」
「そうですけど…私はハズレでしたよ?」
バッキボキに折れている割り箸を、たゆね達に見せるなでしこ。
その凄まじい折れ具合に、これ以上はなでしこのせいにしない方が良いな、と三人は思った。
「と、とにかく!ボクはイカサマなんてしてない!」
逃げるようにいまり、さよかから離れると、ちょこんとソファーに座っている、啓太の隣に座るたゆね。
「さぁ、啓太様…お部屋に行こう?」
たゆねは、啓太の手を取り、優しくエスコートする。
意外と面倒見の良い彼女には、啓太のお守りも適任であろう。

「ボクの事は、たゆねでいいからね」
「たゆね…?」
「なーんか、むかつく~」
「むかつく、むかつく~!」
やっぱり納得いかない、いまりとさよかは、ぶーぶーとブーイングをして、たゆねに抗議した。
「う、うるさいっ!いつまでもしつこいぞ!啓太様、こんなバカほっといて行こう!」
「あ…うん、じゃあね…いまりお姉ちゃん、さよかお姉ちゃん」
たゆねに連れられて、応接間を後にする啓太は、いまりとさよかに小さく手を振って、お別れの挨拶をした。
「聞いた?いまり」
「聞いた聞いた!さよか!」
「お姉ちゃんだってー!」
啓太に、お姉ちゃんと呼ばれたのがそんなに嬉しいのか、二人は手を合わせて、ぴょんぴょん跳ね飛びながら、応接間を出て行った。
「ぷにぷに啓太様と一緒に寝たかったです…」
「フラノ…今、犯罪的な事考えてたでしょ…」
フラノの心を読んでいたかのように、てんそうは、スケッチブックに啓太を襲っているフラノを描く。
「そんなそんな!フラノは啓太様を癒してあげたいだけです~」
「目が据わっていますね…」
なでしこが言うと、皆が「うん」と頷き、一同が溜息をつく。
「ショタ啓太様が拘束具で…薫様が鞭を打って…うふふふ」
「いぐさ…分かったから…もう行こう…」
「あ、待って、てんそうちゃん!」
いぐさは、完全に一人の世界に入って、啓太が虐められる姿を妄想しており、見かねたてんそうが、いぐさを引っ張って、応接間から出て行く。
そして、フラノも気絶したままのごきょうやを起こすと、肩を組んで、二人の後を追うように出て行った。
「みんな行っちゃったね」
「そうだね、それじゃあ、私達はせんだんを部屋まで送りましょう」
「うん」
なでしこは、気絶させたせんだんをヒョイッと担ぎ上げると、ともはねと手を繋いで、誰もいなくなる応接間を後にした。
彼女達は知らない…本当に危ないのは誰だったのかを…。

4 むきだしのどくがっ!

 たゆね自身にも、それを抑える事は出来なかった。
部屋の自分のベットの上で、ちょこんと座っている啓太に、性の衝動を感じてしまっている。
たゆねは、ドアを背にして立ち、後ろ手で鍵をカチャッと閉めると、口元に小さな笑みを作っていた。
「啓太様」
「なに?たゆねお姉ちゃん」
懐いてくれたのか、声を掛けても人見知りもせずに、たゆねに返事をする啓太。
自分の小さな笑みは大きくなり、目までもニヤついていることに、たゆねは気づいた。
「(啓太様…可愛すぎ…)」
何も知らず大人しくしている啓太に、たゆねの気持ちが昂ぶってくる。
「どうしたの?」
「ううん…何でもないよ…」
たゆねの様子に、啓太はクリっとした目を彼女に向け、疑問符を浮かべる。
「うっ…ダメだよ…啓太様…そんな顔で見ないで」
穢れさえも記憶からなくなってしまった啓太の視線は、ズブリ!とたゆねの胸に刺さる。
「我慢、今はまだ我慢…」
暗示のようにブツブツ言いながら、たゆねは啓太の隣に腰掛ける。
「わぁーい、たゆねお姉ちゃん」
と、たゆねが横に座った瞬間、啓太は甘えて抱きついた。
「!」
「たゆねお姉ちゃん…ようこお姉ちゃんよりふかふか~」
「!?」
啓太が露出しているお腹に、顔を当ててギュッと抱きついてくる。
「いい匂い…大好き…」
「(ぷちっ!)」
幼くても大好きな啓太は啓太。
彼の「大好き」と言う言葉に、半壊しかけから完全に理性がぶっ飛んだたゆねは、犯罪者の顔になっていた。
「(啓太様を…犯す!)」
ゆっくりと視線が移動して、抱きついて安らいでる啓太を見つめる。
「啓太様、ボクに抱きついていて気持ちいい?」
「うん!」
「そっか…なら、もっと気持ち良くしてあげるよ…」
そう言うとたゆねは、啓太の背中に腕を回すと後ろに、ぺたんと倒れ込んで、啓太を押し倒す形になる。
「ふぇ?」
「啓太様…今の啓太様は憶えていないかもしれないけど…ボク達…こうやって愛し合っていたんだよ」
じゅるり、と啓太の幼い頬肉を舐めて、自分と啓太が肉体関係を持っていたことを独白する。
だが、今の啓太にはよく意味が分からなく、頬に感じる熱い気持ち良さに、ボーっとしていた。
「た…ゆね…おねえ…ちゃん…?」
「安心して…今日はボクが啓太様をいっぱい犯してあげるからね…」
「おか…す?」
無防備にぽかーんと開いた口を、ちゅ~っと吸い込み、唇を執拗に舐め回す。
前の啓太に仕込まれたたゆねの舌技、キスは、今の啓太には刺激が強すぎ、もう何も喋らなくなってしまった。

「じゃあ、服を脱ごうね~」
たゆねは、啓太から一度離れると、パサッと自分の服と下着脱ぎ捨て、万歳状態で呆けている啓太に跨った。
彼女は、啓太のシャツに手を掛けると、スルッと一瞬で脱がして、小さな胸板に顔を埋める。
「んっ…啓太様の匂い…溶けちゃいそう…」
くんくんと匂いを嗅ぎつつ、胸から腹部…そして、段々と下腹部へ顔を移動させていくたゆね。
引き締まった雄の匂いではなく、柔い男の子の匂いに、女性器がある股の間がキュンと熱くなっていく。
「啓太様…いい匂い…凄く興奮する匂いだよ…」
「コーフンする…?」
「うん…もう我慢出来ない…ごめん」
たゆねの指が、啓太の腰周りに絡まっていき、半ズボンとパンツをゆっくりとじっくりと下ろしていく。
自らの手で露になる啓太の下半身に、鼓動が速くなるたゆね。
「ふふ~…啓太様のちっちゃな…ちっちゃな…おち…」
カチン…と凍ったように時間が止まる。
目の前にある反り勃ったモノが、まるで時間制御の役割を果たしているように。
「嘘…変わってない…」
小さな身体にアンバランスなモノが、啓太の股間にはついている。
それはまさしく、いつも自分が愛でていたものであり、可愛がられていたモノでもあった。
「ごくっ…」
たゆねは思わず唾を飲んで、いつも自分が啓太に虐げられている様子を思い浮かべる。
身体中に擦り付け、白い汚濁した液体を注がれ、啓太の物と成り下がった身体が燃える。
今度はボクが…ボクが匂いを付ける番だ…とたゆねはどす黒い感情を生み出した。
「啓太様…ペロペロするからね」
「えっ…ひゃっ!」
ペニスの根元をキュッと掴まれ、先端に感じる温かくぬめっとした何か。
啓太はこの身体では初めての未知の感覚を、全身に流れる電流と共に受けていた。
「んっ…れろっ…ちゅっ…」
「はぁ…はぁ…くぁぁ…んっ」
「ふふ…息を乱して…可愛い…」
か弱い小さな荒い息を吐き、たゆねの攻めに身を委ねる。
たゆねは笑みを浮かべ、横笛を吹くようにペニスの竿を唇で挟んで上下させる。
啓太のペニスに、ちゅる、ちゅる…とたゆねの唾液が竿に塗られていき、10回扱く間にはテロッとした輝きを放つようになっていた。
「啓太様…今度はお口の中でしてあげるね」
えせ慈母の顔を作ると、今度は亀頭を口膣内へと含み、そこだけを、ちゅぽちゅぽっと口淫をする。
口の中ではピクピクと脈打つペニスに、たゆねの舌が揺り篭のように添えられる。
そして、口膣内と舌の上で擦られ、啓太は小さな悲鳴を上げた。

「あっ…!ああぁっ!」
「…じゅる…じゅるる」
キューっと唇を窄めて、口膣内のペニスを圧縮し、強引に吸い上げるたゆね。
亀頭だけに集中する彼女の口の柔らかさ、温かさにねちっこさが、幼き啓太を破壊していく。
「い、いやっ…!」
「…んっぐ…女の子みたいですね…」
「ち、ちがう…僕、男の子だよ…うあぁあ!」
「じゃあ、男の子なら…これにも耐えられるよね?」
ちゅぽんっと啓太のペニスから口を放し、先端の鈴口を舌先で優しく穿り、彼の射精を促す。
いつもの啓太ならば、幾分かは耐えられるだろうが、快感すら忘れている身体には、そのおぞましい程の攻めに耐えられる筈もなく、啓太はガクガクと腰を震わせ始めた。
「ちゅる…何かでちゃうの…?」
「う、うん…」
「じゃあ、たっぷりボクにかけて下さいね…ちゅーっ!」
素直に答えたご褒美か、たゆねは亀頭の先に口付けをすると、激しく吸い上げた。
「あ…あぁぁ」
震えていた腰が砕け、嗚咽と共に顎を上げて歯を食いしばる。
神経が股間の先にだけ集中し、もはやそこ以外の身体の感覚は無くなっていた。
そして、またも女の子のような声で絶叫すると、その外見からは想像できない、熱く白い汚液をたゆねの舌上にぶち撒ける。
「あっ!…精液…いっぱい…んくぅ…んっ」
ピチャッ!ピチッ!と水を弾く音が、たゆねの柔肌に精液がぶつかる度に聞こえる。
あの時の啓太と何も変わっていない…野卑なる臭い、身を焦がすような熱さ、そして、彼の味…。
たゆねは、顔射をされてドロドロになった顔を両手で拭き、掌に集まった精液を口へと運ぶと、飲み込みはせずに、啓太に顔を近づけた。
「んっ…見て…啓太様ので…お口の中、白くなっちゃったよ」
「こ、これ…僕が出したの…」
「そうだよ…ほら、舌でボクの唾液と混ざって…あはっ…余計にネバネバしてきた…」
たゆねは魅せる様に、口膣内で啓太の精液を転がしては、少しずつ喉の奥へと飲み込んで、雄の味をテイスティングする。
彼女の淫行に、むわっとした自分の雄の臭いと、彼女の甘い匂いが混ざり合い、啓太の鼻をついた。
「こくっ…ふぁ…美味しかったよ…」
たゆねは、口膣内に粘りのある精液を残したまま、提供してくれた啓太に感謝を述べる。
だが、ぐったりとしている啓太には聞こえていないのか、息を絶え絶えしく吐いて、プルプル震えていた。

弱った啓太の姿は、ガシッ!とたゆねの心を鷲掴みにし、凶悪なまでの独占欲を生み出す。
たゆねは、それに忠実に従い、仰向けで果てている啓太を抱き寄せると、彼を壁に背をもたれさせる。
その後、彼女が対面するように啓太の腰に跨ると、女性器の陰唇に啓太のソレを這わせた。
「啓太様…まだ治まらないよね?」
膣口から流れ出る愛液で、亀頭から竿までを濡らし、満遍なくコーティングしていく。
啓太はその光景に見惚れて、時折、ペニスをピクピクさせては、擦り合わせてくる彼女の陰唇に、にゅるっと滑らせる。
「…んっ…たゆねお姉ちゃん…」
「…あっ…そう…すごい…いい感じ…」
受けばっかりだった啓太が、自らの意思でペニスを動かしている。
嬉しくなったたゆねは、惚悦とした顔で啓太に微笑みかけ、腰と連動して動いているペニスに優しく手を添えると、キューっと上に搾り上げた。
「啓太様…今度はボクを満足させて…」
「う、うん…」
今からやる事を、大体の事は分かっているのだろう。
啓太の視線は、ジッとたゆねの膣口に注がれている。
「挿入れるからね…」
たゆねは、握っていた啓太のペニスから、あてがっていた膣口を一旦を離すと、陰唇を指先で拡げて亀頭を挿入させ始める。
何度も味わった啓太のペニスであったが、やはり浅くて小さなたゆねの秘所は、ギチギチと挿入っていくペニスに悲鳴を上げた。
「太…いぃ…」
相変わらずの太さを保ちながら、どんどんと奥深く、膣壁を嬲りながら進入していく。
たゆねは目を瞑りながら唇を噛み締めると、子宮口にツンと亀頭が当たったのを感じる。
そして、目を開けて接合部を確認すると、ペニスを根元までズッポリと咥え込んで、ヒクヒクしている自分の秘所が映った。
「んんー…はぁ…全部挿入っちゃたね…えっ!?」
「あっ…」
とペニスを全部咥えこんだのも束の間。
啓太がガクガクと震えて、虚空を見つめている。
途端、たゆねの膣内に、びゅるる!びゅる!と熱い啓太の精液が注がれた。
「あ、そんな…ふぁぁ…挿入れただけで…射精しちゃうなんて…はぁ…ふぅ…」
膣内はおろか、子宮内にも流れ込む熱い汚液。
先ほどの陰唇での愛撫が強すぎたのか、ギュッ!と締まるたゆねの膣内との相乗により、啓太は我慢できず射精してしまった。
「あぁぁ…もう…啓太さまぁ…いきなりなんて…」
たゆねは、まだ膣内に放射されている中、お腹の熱さにうっとりしながら、啓太を甘く叱咤する。
「はぁ…はぁ…ご、ごめんなさい…」
「ダメ…許して欲しかったら、もっとボクを満足させるんだ」
首をカクンと落としている啓太の顎を手で上げると、たゆねは、彼の唇をチロチロと舐める。

「…んちゅ…ちゅるぅ…」
「んっ…お姉ちゃん…あっ」
小さく薄い唇ではあるが、それが逆に良く、たゆねは、口の端から歯茎、歯の一本一本を舐め…そして、覆うようにして口を塞ぐと、喉奥まで舌を挿入し、啓太の口膣を私物のように扱う。
「ぷはぁ…ふぅ、ふぅ…美味しい…」
「あぅ…」
存分に堪能してニコッとしたたゆねは、唇を離して、啓太を抱き寄せると、彼を腹上に乗せるように体位を変える。
その体勢に、ズブリと挿入されていたペニスは、更に奥まで咥え込まれて、啓太に快楽の苦痛を味合わせた。
「啓太様…動いて…」
「う、うん…」
ギュッ…たゆねの美しい健康的な足が、啓太の小さな腰に纏わりついて、逃がさないようガッチリと拘束する。
それが合図だと分かった啓太は、健気にたゆねを満足させようと、慣れない腰つきで、彼女の膣内を突いたのだが。
「え…う、嘘…?あっ!ああん!」
初心故に、啓太の腰の動かし方は不定期であり、ペニスは角度を変えながら、たゆねの膣壁をグリっと抉る。
予想外の行動に、啓太との激しい性交の経験あったたゆねでも、その虐めに近いペニスでの愛撫に、いつもの喘ぎ声を吐いていた。
「うぁ…あぁ…ふわぁぁ…!」
「たゆねお姉ちゃん、たゆねお姉ちゃん!」
記憶に無い彼女の膣内の狭さと熱さに、たゆねの名を呼ばずにはいられない啓太。
気持ち良さに、身が溶けそうな思いで、無我夢中で腰を振り続ける。
「…これ…これだよぉ…はぁぁ…これでこそ啓太さまだよぉ…」
口から舌をピンッ!と伸ばして蕩けそうになっているたゆね。
ペニスと膣が擦れる度に、先ほど膣内に染み込まされた啓太の精液が、愛液と共にたゆねの丸いお尻を流れ落ちていく。
「あぁ!おちんちんが、熱いよ、お姉ちゃん!」
「うん、ボクも!ボクもお腹が火傷しちゃうぅぅ!」
腰に力が入り、上体をそのままに保てなくなった啓太は、ぱたんっ!と、たゆねの大きな乳房の間に顔を落とす。
たゆねは、蕩けた顔でクスッと笑うと、啓太の背中抱きしめていた手を、自分の乳房に持ってくると、ぷにゅ~と真ん中に寄せて、彼の顔を圧縮する。
「うぷっ…うぅぅ」
「啓太様…そのまま…んっあっ!」
「あっ、ああぁ…また射精ちゃう…射精ちゃう!」
両頬に感じる柔らかいたゆねの乳房と、ペニスをギッチリと膣内に、啓太は背中から力が抜ける感覚に襲われる。
パチパチッ!と柔肉のぶつかりあいが、バチュン!バチュン!と大きくなり、啓太がいかに限界になっているのかを物語っていた。

「あぁああ…」
「んっ…んんっ…啓太さま、啓太さまのが、ゴリゴリってぇ!」
より一層激しく膣壁を嬲り、子宮口をヅンヅンと突き上げる。
「ボクを、ボクをこんなにしてぇ!ひぃあぁ!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!あぁっ!」
射精間近の啓太のペニスは、挿入した時よりも太くなっていた。
もう限界…とたゆねは、啓太の腰に絡ませていた足を、ギュゥゥと締める。
「あっ…!」
そのおかげで、望まないのにずっぽりと根元まで挿入する事になった啓太は、目を瞑ってガクン!と腰を落とす。
そして、3度目になる種子を、鈴口から噴射させて、たゆねの奥深くのめしべに種付けをした。
「ふわぁぁ…ああ…」
「奥で出てるぅ!すごい!すごいっ!壊れちゃうー!」
満タンになりそうな子宮に流れ込む種子に、感動と快楽を覚えながら、たゆねは絶叫する。
啓太は、満足そうに笑みを浮かべているたゆねを見ると、約束を果たせて安心したのか、そのまま彼女の胸の間で寝息を立て始めた。
「はぁ…あぁ…はぁ…良かったよ…啓太さまぁ…」
膣内で動き弾ける精液に、たゆねは悦びながら、自分の上で寝ている啓太の頭を撫でる。
「啓太様…これからも…ずっと一緒にいようね…ボクはどんな啓太様でもついて行くよ…」
それだけを言うと、啓太と自分の間に手を入れて、腹部を擦るたゆね。
小さく蹲って眠っている啓太を見つめる彼女の顔は、本当に慈母のようであった…。

4 まどうぐっ!

チュ、チュチュン、チチチと朝を告げる雀の鳴き声が、たゆねの部屋に響き渡る。
「う~ん…啓太様~」
昨日の情事で、まだ疲れが残っているのか、たゆねは、寝言で啓太の名を呼び、涎を垂らして眠っていた。
そのたゆねと一緒に寝ていた子供啓太の方はと言うと、既に目を覚ましており、たゆねのベットから身体を起こしていたのだが。
「あ…あああ!」
何故か自分の身体を触っては、絶望に打ちのめされた顔で、苦しみの声を上げていた。
「お、俺…な、何だ…ど、どういう…!」
どうやら自身の身体に変調をきたしており、言葉が途切れ途切れにしか出ない様子である。
啓太は、ゆっくりとベットから腰を上げると、まだ服を着ていない裸体で、たゆねの部屋に置いてある彼女の手鏡を手にとって、恐る恐る自分の顔を覗き込んでみた。
「ま、マジかよ…」
鏡に映って反射する自分の顔が目に飛び込んでくる。
しかし、それは自分が知っている自分の顔ではなかった。
茶髪で少し長めであった髪は、いつのまにか首まで伸びており、青黒く綺麗に光っている。
下に移って瞳…碧眼であった両の目は、黄金に近い目の色に変わっていて、その双眸に映る健康的だった肌は、真っ白と言っていいほど白く美しいものである。
そして更に下に移り、華奢ではあるが、しっくりとしている自分の裸体。
その姿は正に、自分の従兄弟であり、ここの主人でもある薫にそっくりであった。
「てか!俺、薫になってるじゃん!」
一人でツッコミを入れて、啓太ではなくなってしまった自分の身体に絶望を感じる啓太。
どったどたと朝からフルチンでたゆねの部屋中を走り回り、もはや精神に異常まで来たしそうである。
何も事情を知らない薫の犬神達が、これを見たらどうなるであろう。
しかし、神の悪戯とは無常なもので、その場にはたゆねという薫の犬神がいるではないか。
そして、走り回っている啓太の騒音に、目覚めさせないわけにはいかないのがお約束である。
「あぅぅ…うるさいなぁ…」
やはりと言うべきにたゆねが、啓太に別の意味で無理矢理起こされて、不機嫌そうに目を擦り、ベットから身体を起こした。
「た、たゆね…」
「ん~?啓太様…いくら元気だからって…朝から……え、か、薫…様?」
「お、おはよう…お、俺、啓太だよ」
「い、いやぁぁぁぁ~!」
真面目で優しい主人である薫が、目の前で啓太サイズの象さんをぶら下げて挨拶をすれば、こうもなろう。
彼女の悲鳴は屋敷中に広がり、薫の犬神達がたゆねの部屋に集う。
「どうしたんですの!たゆね…か、かかかか!薫様…!」
「いやっ…いやっ!」
「ち、違うんだ!これは、俺は啓太で!」
床に内股で座り込んで嫌がるたゆねと、その彼女の眼前に象さんを突きつけて、真っ青な顔になっている薫、基、啓太。
その異様な光景に、リーダーであるせんだんが、ドアの前で固まって石化したまま前に倒れ込む。

「か、薫様…まさかそんな趣味が…」
「み、見損ないました~…本当は啓太様より変態だったなんて~」
なでしこは両手で顔を覆いながら、フラノは軽蔑の眼差しを。
「うわ~、薫様ヘンタイ~…」
「ヘンタイ~…」
「い、いまり、さ、さよか…ち、違うんだよ…お、俺は啓太で…うわっ!」
何処から取り出したのか、いまりとさよかは大きな鋏を持って、近づく薫の姿の啓太を威嚇する。
「啓太さまがヘンタイなのは許せるけど…薫さまが…」
「と、ともはね~…」
ともはねは、しかめっ面で薫の姿の啓太から離れていく。
「…薫様…すいませんが、そのまま…」
「…冬コミ、冬コミ」
他の犬神達とは違い、象さんの部分を修正した絵を描き始めるてんそうと、同人誌の考案を思いついたいぐさ。
「最低です…薫様…」
もう顔を見せてくれないなでしこの冷たい言葉が、薫の姿である啓太の心に喰い込み、象さんまでもしょぼんとしてしまった。
「な、なでしこちゃん!お願いだよ!俺の話を…!」
と啓太が勢い余って振り返ると、萎えていてももの凄い象さんが、彼女達の視界にモロに入ってしまった。
「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!」
「う、うぎゃぁあああぁあ!」
見てはいけないものを見てしまった彼女達は、たゆね、なでしこ、せんだん、ごきょうや以外が6人分のフライパンを構えると、主人である薫の姿の啓太に一気に殴りかかった。
「お、俺って本当に総受けなのねーー!」
ボコスカボコボコ!と連続で滅多打ちにされる啓太。
その暴行が終ったのは、象さんのサイズで啓太と分かったごきょうやが止めに入ってから5分後の事であった。
その後、虫の息になっていた啓太から、魔道具の呪いのせいで、薫の姿になったと聞かされた犬神達は、本物の薫が帰ってくるまで、啓太を遊び道具としてひっちゃかめっちゃかにしていた。
啓太への虐めは1週間続いたらしく、その間、ごきょうや、たゆね、なでしこは、薫の姿であった彼に、とても冷たかったらしい。


啓太が薫の姿になっている間、それを利用してちょっとした悪戯をしていた少年が、川平の宗家へと訪れていた。
「おはようございます、榧様…仕事の件、無事に終えました」
「だ、誰じゃお前は!」
「はい、啓太ですが…どうかしましたか?」
「け、啓太様が…せ、正座している…」
「はけ…僕が正座しているのはおかしいかい?」
「…ワシはもう…死んでるのか…?」
啓太でなくなった啓太に絶望し、いきなり後ろに倒れて仰向けになる榧。
逸早く反応したはけは、大慌てであった。
「か、榧様!榧様ーーーーー!」
「(あれ…やりすぎちゃったかな?)」
と小さく笑みを浮かべて、ポケットから魔道具を取り出している啓太の姿があった。
しかし、それが本当に啓太なのかは不明で、それを証明するように宗家の門前には何故か、大泣きしているなでしこがいた。
「うえ~ん、もうなでしこでもなんでもいいわよ~、だから、ひっく…ぐすっ…ケイタ~、見捨てないでぇ…」
そのなでしこである犬神は、主人である薫ではなく、啓太の名を叫びながら一人空しく空へと猛っていた。

番外編おわり。

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最終更新:2006年10月16日 03:10